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1166話 集結していくミリオンズ

「わわっ! これが隠密小型船ですか!」


「見事なものですわね……。ラスターレイン伯爵領でも船はたくさん見てきましたが、これほど精巧なものは見たことがございません」


 サリエとリーゼロッテが驚きの声を上げる。

 彼女たちは、俺が転移魔法陣を活用してラーグからオルフェスまで連れてきたところだ。

 その反応を見て分かる通り、隠密小型船は無事に完成している。


「ふふん。中もいい感じよ。少し狭いけどね……」


「マリアが案内してあげるっ! サリエお姉ちゃん、リーゼお姉ちゃん、こっちだよー!」


 ユナとマリアが、サリエとリーゼロッテに対して若干の先輩風を吹かせている。

 実際、ユナとマリアの方が1日だけここに早く来ている。

 相談の末、そのような順番で転移させていくことになったからだ。


(俺のMPや魔力では、1日に転移させる人数は2人ぐらいまでが無難だからな……)


 無理をすればもう少し大人数でもいける。

 だが、その反動は計算できないところがあった。


 魔法のない現代日本で例えるなら、重い荷物を遠くまで運ぶようなものだろうか?

 1日だけなら、限界まで重い荷物を体力の限り運ぶのもアリだろう。

 だが、それを何度か繰り返す上、その後に重要な仕事が控えているのならば話は別だ。

 ほどほどの重さと余裕のある距離に抑えておいた方がいい。

 無理をした結果が筋肉痛程度ならまだマシだが、ギックリ腰とかになったら最悪だからな。


「こっちは居住スペースになっているのですね?」


「この狭い空間にベッドが3つもあるとは……。凄い工夫ですわね……」


 サリエとリーゼロッテは、船内を見て回っている。

 繰り返すが、隠密小型船は狭い。

 ある程度の長旅になるので極狭というほどではないが、基本は10人前後が生活する最低限の広さしかない。


 俺とレインが空間魔法を使える分、生活物資や道具などを収納するスペースが節約できるのは大きいが……。

 それでも、全てを空間魔法に入れておくわけにはいかない。

 俺やレインがもし一行からはぐれた場合に、残されたメンバーに一切の物資が残らないリスクがあるからだ。


 そのため、一定量の物資は普通に積み込んでいる。

 後は、ミティが持っているアイテムバッグくらいかな。

 さほどの容量はないが、いざというときの非常物資は十分に入る。


(モニカとニムは、最初からオルフェスに待機中……。第一陣はユナとマリアで、第二陣はサリエとリーゼロッテ。これでミリオンズの7人がオルフェスに集結したことになる。順調だな)


 俺は状況を整理する。

 まだラーグに残っているのは4人だけ。

 ミティ、アイリス、蓮華、レインだ。

 この4人を最後の方まで残しているのには、もちろん理由がある。


 第一夫人のミティは、俺の妻たちの中でもやや知名度が高い。

 第二夫人のアイリスも俺の妻としてそこそこ有名な上、治療回りで顔を知っている者も多めだ。

 そして、彼女たちは俺との間に子どもを生んでいる。

 これからの長旅に向けて子どもとしばしの別れとなってしまうので、その点で配慮した感じだ。


 蓮華は俺の妻ではない。

 だが、彼女は珍しいエルフであり、しかもヤマト連邦の出身である。

 あの珍しい和服姿や言葉遣いを通して、オルフェスの住民に素性がバレるリスクがあった。


 レインも俺の妻ではない。

 平民だし、オルフェスの住民に騒がれるリスクは限りなく低い。

 だが、彼女は俺を除いて唯一の空間魔法の使い手だ。

 ハプニングが生じた際、俺と彼女は別の位置にいた方が都合がいい。


 そのような事情もあり、『ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテ』を先にオルフェスに移動させ、『ミティ、アイリス、蓮華、レイン』を後で移動させることになったわけだ。

 繰り返しになるが、これでヤマト連邦に向けてミリオンズの半数以上が集結したことになる。


「えへへっ! マリアはここのベッドにするつもりなの!!」


「ふふん。なら、私はこっちね!」


 マリアとユナは、既にベッドを選び始めている。

 各々がベッドに腰かけながらくつろいでいた。


「こらこら、ベッドの配置は全員が揃ってからにしようぜ」


 俺は2人を注意する。

 ミティやアイリスたちは優しいが、その優しさに甘えて無理をさせるわけにもいかない。

 なにせ、ここオルフェスからヤマト連邦までは長旅になるんだ。


 ゴードン、ムウ、メルルたちによって造られた隠密小型船の機能は万全で、沈没の心配はしていない。

 俺やレインの空間魔法により、物資が尽きるリスクもほぼない。

 だが、狭い船内で慣れない船旅をするわけだからな。

 各人に無理をさせないよう、細心の注意を払う必要がある。

 俺はそんなことを考えつつ、引き続きオルフェスで目立たないように待機するのだった。

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