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1113話 砂浜で生き埋めにされる

 オルフェスの浜辺にて、ビーチバレーボール大会が開かれようとしている。

 チーム分けは『エレナ&ルリイ&テナ』vs『サーニャ&モニカ&ニム』。

 Cランクパーティ『三日月の舞』の連携力が勝つのか、あるいはサーニャちゃんのやる気が勝るか。

 全員が水着姿だし、いろいろな意味で見どころのある試合になる。

 ……と思ったのだが、彼女たちはなぜか俺を拘束するために動き出した。


「で、そっちのチビっ子。作戦ってのは、どういうものなのよ?」


「なっ……! ち、チビっ子!? だ、誰がですか!?」


 エレナの言葉を受け、ニムが憤慨する。

 確かに、ニムはやや小柄な方だが……。


「ふふふー。ごめんね、妹ちゃん。エレナちゃんはこれが平常運転だからー……。それで、どんな作戦を考えたのー?」


「えっとですね……。兄さんには申し訳ない作戦なのですけど……」


「いや、いいんだ。気にしないでくれ」


 俺は笑顔で答えた。

 愛する妻が俺を拘束するための作戦を考えている。

 普通に考えれば、少しばかり悲しい場面だ。


 しかし、考え方を変えてみよう。

 拘束されちゃってもいいさと考えるんだ。

 夜のプレイでも、ニムはそっち方面の趣味があるしな。

 むしろラッキーぐらいの気持ちでいるべきだ。

 そんな俺の態度を見て、ニムはホッとしたような表情を浮かべた。


「で、では……この砂浜に寝転んでください!」


「分かった。……こんな感じでいいかな?」


「はい。そのまま動かないでくださいね……!」


 俺は言われるままに砂浜に仰向けで横たわる。

 そして――ドサドサッ!

 俺の上に、大量の砂がかけらされた。


「なるほどっす! 砂の力を利用するということっすか!!」


「そ、その通りです。いくら兄さんの力が強くても、砂をかけられたら身動きが取れなくなるはずです!!」


「偉大なる大地のパワーを利用するその発想……! 土魔法使いの端くれとして、感服するっす!!」


「えへへ。それほどでもないですよぉ~」


 2人で盛り上がるテナとニム。

 同じ土魔法使いとして、通じるものがあったのだろうか。

 一方の俺は、やや困惑している。


「おいおい、ガチの拘束じゃないか。いくらなんでもこれはマズイだろう」


「ふんっ! あんたが変態だからでしょうが! 観念しなさい!!」


 エレナは鼻息荒く言い放つ。

 ニムとテナと共に、彼女も俺に対して砂をかけ始める。


「まぁまぁ。勝負の間だけだからさ。諦めなよ」


 モニカが穏やかな口調で言う。

 彼女も砂かけ作業に参戦した。

 砂浜で大の字になった俺の上に、4人がかりで砂がドンドン盛られていく。


(まだ動けるが……これ以上盛られたら、簡単には動けなくなるな……)


 魔力や闘気を全開にしていいのであれば、多少の砂ごときで動けなくなる俺ではない。

 だが、今の俺は『Dランク冒険者タケシ』である。

 Dランクでも不自然ではない程度に力を抑えるなら、そろそろ動けなくなってくる砂の量だ。


「本当に後で解放してくれるんだよな? 約束してくれよ?」


「ふんっ! それはどうかしらね! 変態のカスは、このままここで埋まっていればいいんじゃない?」


「はぁっ!?」


 エレナの物言いに、思わず声を上げる俺。

 今ならまだ、『Dランク冒険者タケシ』としての力でも砂から脱出が可能だ。

 変な展開になる前に、ここらで一度抜け出させてもらうか……。

 俺がそんなことを考え、左右の腕を動かした瞬間だった。


「にゃにゃっ!?」


「ひゃんっ!?」


 むにゅっ!!

 動かした左右の手が、何かにぶつかった。

 それは、とても柔らかいもので……。


「こ、これは一体……? まるでマシュマロのような感触だが……」


 むにゅっ!

 むにゅむにゅっ!!

 俺は砂に埋まっているため、顔や視線も動かしづらくなっている。

 自分の手が何に触れているのか、分からなかった。


「んにゃああああっ!!」


「ちょ……ちょっとー……! どこを揉んでいるのー……!」


 左右から悲鳴が上がり、同時にペシッと頭を叩かれた。

 それは、サーニャちゃんとルリイからの突然の暴力だった。


(そ、そんなバカな……。エレナはともかく、俺に対して好意的に接してくれていたこの2人まで……?)


 予想外の事態に混乱する俺。

 2人から暴力を受けたことに、抗議の声を上げよう。


「あの……さっちゃんさんとルリイさん? なぜ俺の頭を――」


「にゃーっ! お客様は、黙って埋まっているといいのですにゃ!!」


「ふふふー。そうだねー。さすがに、ちょっと反省してほしいかもー」


「あ、はい……」


 サーニャちゃんとルリイに叱られる。

 何が何だか分からない。

 だが、この2人が怒っているのだから、相当なことを俺はしてしまったようだ。


(大人しく生き埋めになっておくか……)


 俺はそう思い、口をつぐむ。

 そして程なくして、俺は頭部を除いて完全に砂の中に埋められてしまったのだった。

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