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1111話 変態のカス

 俺はサーニャちゃんと熱烈なキスをした。

 しかし、その光景をエレナたち『三日月の舞』に見られてしまう。

 海に入っている俺たちに対し、エレナたちは砂浜にいる。


(くっ……。面倒事を回避するなら、無視するのも手だが……)


 その場合、エレナたちからの忠義度は間違いなく下がってしまうだろう。

 勝ち気で匂いフェチを持つ火魔法使いエレナ。

 ゆるふわ系かつ小悪魔系でもある雷魔法使いルリイ。

 オレっ娘で被虐趣味に目覚めつつある土魔法使いテナ。


 それぞれ、先日のラッキースケベや温泉旅館の無料券とかで地味に仲を深めてきた美少女である。

 そんな彼女たちとの関係がこじれてしまったら、俺のモチベーションが下がってしまう。


「これは違うんです、エレナさん。誤解なんですよ」


 俺は観念して、こちらから話しかけることにした。

 浜辺へ向かいながら、誤解であることを説明する。

 すると――


「言い訳無用よ! この破廉恥男!!」


「ふふふー。落ち着きなって、エレナちゃんー。今さらだよー」


「そうっすよ! タカシっちさんが変態なのは、分かっていたことっす!」


 エレナ、ルリイ、テナが口々に言う。

 一見すると、エレナが最も厳しい追及をしているように聞こえるが……。

 よく聞くと、ルリイやテナから俺への評価も大概である。

 それほど長い付き合いではないのに、若い子に手を出してもおかしくないと思われているようだ。

 まぁ、実際にその通りなので否定はできないが……。


 ある意味では、俺への評価が最も高いのはエレナだと言えなくもない。

 俺がサーニャちゃんにキスしているのを見て、呆れるでもなくスルーするでもなく、怒って注意してくるわけだからな。


「お久しぶりですね、皆さん。まさか、こんなところで会うなんて……。奇遇ですね」


 俺はキス事件のことをさらっと流しつつ、挨拶をする。

 俺としては、しっかりと弁明しておきたい。

 しかし、あまり流暢に言い訳をしてしまうと、また怒られてしまいかねない。

 ここは慎重に空気を読んでいこう。


「ふふふー。本当に偶然だよねー。わたしもびっくりしたよー」


「そうっすか? オレっちは、ひょっとしたらタケシっちさんもいるんじゃないかって思っていたっすけどね」


「確かにね。それは私も思っていたわ」


「ええー!? どうしてー?」


 驚きの声を上げるルリイ。

 俺に対する接し方が最も温和なのが彼女なのだが、一方で俺の行動予測に関しては精度がイマイチらしい。


(女心ってのは……分からないものだな。俺には『加護付与』スキルがあるから助かっているが……)


 チートスキル『加護付与』。

 忠義度が一定以上に達した者へ、加護を付与するスキルである。

 その副次的な恩恵として、各人から俺に対する忠義度を測ることができる。

 それによると、エレナ、ルリイ、テナの3人の忠義度は、現時点だと同程度である。


(俺にこのスキルがなければ……小悪魔系のルリイにドはまりしていただろうな。怖い怖い……)


 いや、別にルリイだって悪意があって俺を誘惑しているわけではない。

 むしろ、天然でやっている可能性が高い。

 だからこそ、余計にタチが悪いとも言えるが……。


 ともかく、俺にスキルがなくてDTを卒業していなかった場合、ルリイを好きになっていた可能性が高いだろう。

 そして、振られるのだ……『タケシさんのことは嫌いじゃないよ? でも、ごめんなさい……。わたしはもっと強い人が好きなの……!』と……。

 うむ、容易に想像できるな。


「タケシは変態のカスよ!? こいつのことだから……水着姿の女の子を見るために浜辺に来るに決まっているじゃない!!」


「ま、まぁカスとまでは言わないっすけど、タケシっちさんならやりそうっす」


「ふふふー。ひどい言い草だけどー。実際に海水浴をしていて、女の子にキスをしていたもんねー……」


 エレナとテナの言葉を受け、ルリイがそう言う。

 ほ、本当に3人の忠義度はいっしょぐらいなんだよな?

 ……うん、間違いない。

 3人とも、同じぐらいの忠義度になっている。

 俺のことを『変態のカス』呼ばわりするエレナだが、実際に忠義度は30を超えているのだから恐ろしい。


「にゃにゃ! それ以上、お客様のことを悪く言わないでほしいのですにゃ!!」


 言われ放題な俺。

 そのフォローをしてくれたのは、サーニャちゃんだった。


「確かにね。だらしないところもあるけど、私の大切なダーリンなんだけど?」


「に、兄さんは、わたしたちのことも大切にしてくれています! 好き放題に言わないでください!!」


 モニカとニムも加勢してくれる。

 場に一触即発の雰囲気が漂い始めた。


「Cランク冒険者にケンカを売るなんて、いい度胸ね!」


「にゃにゃっ! そ、そんなことでにゃぁは引かないのですにゃ! 本当のことを言ったまでですにゃ!!」


「そこまで言うなら分かったわ! ここは1つ……ビーチバレー対決で決着をつけましょう!!」


「いいですにゃ! 望むところですにゃ!! ちょうど3対3にゃ!!」


 ヒートアップしていくエレナとサーニャちゃん。

 そして、なぜか巻き込まれる形となったルリイ、テナ、モニカ、ニムの4人。


(……これって、止めるべきなのかな)


 俺は彼女たちを眺めつつ、そんなことを思ったのだった。

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