第六話 愛の起こす悲劇
午後二時四十五分徒主句宇県皆頃市の林(林と森の違いは前者は人工物、後者は天然物)に囲まれた寺院に来ていました。理由は人を捕食する(正しくは生命力を吸い上げる)化け物キウズアを倒しに行くためであります。本当の集合時間は三時ちょうどでありましたがいくら私が他人からいろいろと仕事を頼まれて忙しい人間であると言えども時間をキッチリと守るのは私の誠意なのであります。予定よりも十五分早く約束の場所についた(詳しい話は第五話で)私は神社のお堂の前に来てから周りを見回しました。
『おいターゲットがいたぜ。』
シラコに知らされた私はターゲットを発見しました。ターゲットは上下白い服を着てスマホをいじっていました。十五分も前からくるはずのない彼氏を待つだなんてなんてけなげな女でしょうか。きっと彼氏さんも幸せだったに違いありません。しかし、そんなことは言ってはいられません。私は仕方なくターゲットの目の前に来ました。すると彼女はスマホを地面に落として表情を変えました。
「お前の狙うものは私の命か、それとも私の愛か?」
「何もあなたから奪いたくありません。でも・・・アアアァァァ!!」
私は手を挙げて変身(詳しい描写は第四話で)してから土煙を軽く上げました。気がついたらターゲットも変身していました。見た目は翅のない二足歩行のカブトムシの様なキウズア・タナーカはマイクとラジカセによる共鳴音の様な鳴き声で私を威嚇してきました。私と敵は互いに構えると(詳しい描写は第四話で)三時の方向に進みながら距離を縮めていったのであります。(上から見ると二人は半円を描きながら近づき合っているように見える)
キィィィィンキュインキュイン・・・ドッ!エアァァァァ!
敵との距離を十分に縮めた私は跳び蹴りをしたもののこれは力の差で弾かれて三mほど先に着地することになりました。すると今度は敵が私に向かって突進してきました。(タナーカのパワーと重量感をアピールするために画面を軽く揺らしつつ土煙大盛り)そこで私は文房具のコンパスのような動きで足掛けをしてタナーカを地面にたたきつけました。さらに勢いをつけてからジャンプをしてローリングカカト落としをしたもののこれもあまり効いていなかったようであります。
『ハジメ君無闇に接近したら危ないぜ。やつの下半身と重力を利用して攻めろ。』
私は上半身で攻撃を受け流し足で敵の足を引っ掛けて地面にはいつくばせる戦法で戦いを有利に進めました。こう何度も地面に手をつくこことなると敵も頭にきたのでしょうか。ご自慢の角を振り回しながら叫びだしました。敵がこう怒り狂って冷静さを失うと戦闘中にはありがたいものです。ところが・・・
キュインキュインキュイン!!キィィィィィィィィン!!バチバチバチ!!
『マズイ!ビームだぜ。よけろ!』
タナーカは角にエネルギーをため私のことをにらんできました。私は右に走るふりをしてからその場で踏ん張って上に上に飛び上がりました。次の瞬間タナーカのビームが発射されてこれは私の背後にあったほこらに命中してほこらが内部から爆発して周りがとても煙くなってしまいました。(特撮好きにはたまらない描写だ、ところで作者にバチは当たらないのだろうか)どうやらタナーカのビームは私のビーム(これはタイラー光線を指している、このタイラー光線は読者諸君にわかりやすいようにつけた名前であってハジメは「ビーム」としか認識していない、ついでに語源はハジメが貧乳であり平らであるところから、さらに付け足すと企画段階ではアンチファンデルワール光線にするつもりであった)と同じ効果を持っていたようでありました。煙が晴れるとタナーカは次のビームを放とうと構えていました。
(今度はどっちによけますか?)
『前に進め急げ!射定距離に入ってから発射を妨害だ!』
私はシラコに言われるがままにタナーカに向かって走るとレトート(タイラー光線同様こちらも同社諸君用)を腹に当てました。痛点を刺激されビームは失敗したもののタナーカは足掛けを警戒してどっしりと構えていました。
キュインキュイン!エアァァァ!パシィィ!
私は敵の頭上にダイビングジャンプをすると足で角を挟んで地面にたたきつけました。(アホウドリインターセプター)さらに薄い煙を立てつつ回転しながら地面に着地すると仰向けになった敵にカカト落しをしようとしましたら角で押し返されて空中に投げ出されたのであります。空中にて
(これはなんてパワーでありますか。)
『とりあえず背中を丸めつつ足を伸ばすんだ。』
(それからどうするのでありますか?)
『木にぶつかったら今度は全身を伸ばせ!微調整はボクチャンに任せろ!』
バシッ!
私は近くにあった木に足からぶつかり地面にしゃがみこんだようなポーズをとると足から内臓に伝わる衝撃に耐えつつ思いっきり体を伸ばして飛び出しました。(七行前からここまでは二秒間の出来事)
『よしっ!あごを引いて体を丸めろ!合図を出したらキックだ!キーック!!』
「エアァァァァ!!」
ドスッ!!ガシィィィ!!
果たして右足キックはタナーカの腹に命中しました。とこがタナーカは私の足をワキワキした力強い節足動物の腕でキャッチしてそのまま私を地面に叩き付けようとしました。重力と遠心力を頭に受けたら生きて帰れないと思った私は今度は右足でキックをしました。
バキッ!キエェェェ!!
私のキックはタナーカの顔に命中して火花を散らしました。タナーカが右足を解放したため私は半作用(物体に一方向から力を加えると反対方向にも加えた分の力が働く、読者諸君も気を付けよう)で後ろに投げ出されました。私は着地と同時にレトートを撃ちダメ押しをしたのであります。敵はうずくまりだして戦意喪失していました。こうなったらチャンスであります。私は体中の生命エネルギーを腕に集めます。・・・あと三秒でタイラー光線を発射できます・・・発射!!
「待ってくれ!」
「えっ?・・・おっとロック。」
何を間違えたのかターゲットの彼氏・エイオさんがタナーカの前に来ていました。私はビームが出ないように腕にロック(意識的に)をかけておきました。本当は発射を中断した方が良かったのかもしれませんがもったいなかったのでホールド状態にしておきました。
「エイオさん、やっぱり決断できませんでしたか?」
「だめだ~やっぱり俺はケイコのことが好きだった。ケイコもうやめようよ。」
「エイオさん・・・ありがとう。」
化け物の姿になってもケイコさんのことを識別できるのはすごいことであります。きっとこのカップルは本物に違いありません。しかし、私には務めがあります。そう簡単に獲物を逃すわけにはいかないのであります。
「えーとごめんなさいエイオさん。どいてくれませんか?」
「頼む!!ケイコの命だけは・・・頼むっ!!」
「エイオさん私のために・・・私はもっと二人で過ごした時間を大切にすべきだった。」
「どいてください・・・撃てません。」
『ハジメ君これはハジメ君を惑わすための罠だ。』
(でも二人は愛し合っているのですよ。)
『だからそうやってハジメ君の良心とやらを刺激しているのさ。けどよー今ハジメ君が正しい決断をしなかったらもっと大勢の人が死ぬんだぜ。それに今の体勢きついだろ?』
(それでも私はこの人たちが悪い人には見えません。)
『ハジメくんは尊い命を守るための魔法少女だろ?撃つんだ。ターゲットだけ狙えばいい。』
(できません。二人を巻き込むことになります。)
『だったらボクチャンが撃っちゃうからね。』
「待ってください!・・・二人とも避けてくださいっ!!」
ビィィィィ(タイラー光線には音がない、これはあくまでもイメージ)・・・チュドーン!
XIRACO-シラコは私の体の運転を奪うと腕のロックを解除してタイラー光線を撃ちました。光線はエイオさんの背中に命中してしまいました。エイオさんの背中から火花が散ると最後の時を迎えました。
「ケイコ・・・オレどうなっちゃうの?」
ドガガガガガ!!
エイオさんは爆発してバラバラになってしまいました。(火薬を詰めた人形場爆発するようなイメージで、作者も内臓や目玉が飛び散るところは見たくない)タナーカは爆発に巻き込まれて吹き飛ばされていきました。かわいそうに思ったのですが私にはどうすることもできませんでした。タナーカは爆風が体に答えていたのか彼氏を失った悲しみに浸っているのかよくわかりませんでしたが地面に手をついて大人しくしていました。
『あいつを哀れに思うのなら彼氏の元に送ってやりな。』
私はタナーカとの距離を詰めるとタイラー光線を撃ちました。
ビィィィィ・・・チュドーン!
「エイオ・・・ずっとずっと好きだよ・・・ずっと。」
ドガガガガガ!!
こうしてタナーカは殲滅されました。私はこれまで感じたことのない強い自己嫌悪感を持ちつつタナーカの爆発した位置に倒れこみながら変身を解きました。
(私は・・・)
『ハジメ君は正しいことをした。多くの命を救った。そうだよね?』
(えっえぇそうですよね。)
『大丈夫だ二人は行方不明。神社で謎の爆発、世間に残るのはそれだけさ。』
つづく ハジメの罪悪感は消えない
二代目 戦士対馬井トワコ
身長177㎝体重77㎏ 座右の銘「オレは強いオレは強いオレは強い」