第五話 リア充を粉砕せよ
「レイって高校どこ行く~?」
「私はデッドエンド高校かな。アスカは?」
「私はバーニングメシアがいいけど今の成績じゃデッドエンドね。」
「オレもデッドエンドかな。」
「アンタには聞いてないって、そもそもいつもハジメの宿題丸写しのあんたはそこすら怪しいでしょ。」
「それにしてもハジメはやっぱりバーニングメシア高校行っちゃうのかな?」
「あいつこの前デッドエンドがいいとか言ってたぜ。」
「マジ?あの子そこに恋人でもいるの~?それともまた誰かに頼みごとでもされたのかしら?そこだけが弱点なのよね~あの子。勉強できるし体力あるしカワイイし、しかもあのスタイルうらやましい~」
「あれはやせすぎじゃない?体育着、着ると上半身の骨の位置わかっちゃうし。」
「オレも前から思ってたけどさ~あいつが遺骨っぽいよね。」
「キャハハハハハハ。」
昼休みのカラミティー中学校にて私は廊下で立ち寝をしていました。何なんですかこの私を馬鹿にした話は。エーと昼休みは後何分ありましたっけ?
『あと四分だぜ。不快だったか?けどよー夢じゃないぜ。ハジメ君って単語を周りから拾ったから神経とかから他の音を遮断して聞かせてやったんだぜ。まあ次からは気をつけてやるぜ。』
(私はまだ何も言ってませんよ。)
『ワリワリ深く入りすぎてたぜ。(思考回路?の奥)けどよー所詮は他人の評価だぜ気にするな。ハジメ君は呪いだのネットの書き込みだのに(実はこの二つ対象を傷つける原理は似ている、攻撃する側は対称に攻撃の存在を知ってもらいたいのだ)流されるほど馬鹿じゃないと思うけどな。ところでハジメ君、ハジメ君ってカワイイ。』
(っ!?・・・いきなりなんですか?)
『カワイーカワイーカワイー。』
(ちょっちょっちょ・・・そのシラコさんにもカワイーとか言う感覚・・・えっと・・・あるんですか?)
『ないよ。(厳密に言えばウソ、XIRACO-シラコには松果体が存在しないが以前取り付いたヒトの記憶を引き継いでいるため感情が存在する)そこは謝るよ。けどよーカワイーの一言でコーフンしちゃうのはハジメ君の弱点だな。その調子だと軽いノリの男に口説かれて涙流す日も遠くはないぜ。自分のみは自分で守れ。ハジメ君はヤればできる子なんだぜ。』
(・・・シラコさん下ネタはもっとオブラートに包んでくれませんか?)
『え?ボクチャンは男でも女でもないんだぜ。けどよーっておっと右向け右。』
私はシラコに体をコントロールされて右に九十度回転させました。するとそこには教室に戻ろうとする次通覇的カヲル先輩がいました。しかもこっちに気づいてくれたのであります。
「やあ、ハジメちゃん。」
「あえっと次通覇的先輩。」
「オレのことはカヲル君でいいから。」
「はいっ」
うれしいことがあったせいか午後の授業はもスラスラと終わり放課後も他人に自分がやった宿題を写させる程度で済みました。家に帰ろうとして途中交差点で立ち寝をしているとシラコに起こされました。
『出たぜ。左にいる白いワンピース着た女だ。』
(えっわかりました。どこでしかけますか?男の人と手をつないでいますが。)
『カップルか。ハジメ君は知らないんだっけ男ってやつを。』
(こう見えても以前彼氏いたのですが。)
『そんな記憶ボクチャンが知る限りはなかったぜ。けどよー話は聞かせてもらうぜ。おっと歩き出した。また尾行するぞ。顔じゃなくて足をみな。』(人の顔を見ながら尾行をするのは素人、間違ってもアンパンかじりながら尾行はしないように)
私はターゲットを尾行しつつシラコに彼氏との思い出を語りました。
(あれは私がまだ中学一年のころの話です。一学期の終わりに告白されて夏休みに初デートに行ったのであります。ところがその前日に陸上部のマラソン大会助っ人をやってクタクタになっていたせいか映画館と喫茶店で爆睡していたら逃げられました。)
『それで母を除く他人との粘液接触がなかったってわけね。』
(うっ)
『まあ作ろうが作るまいがハジメ君の自由だぜ。けどよーボクチャンがいる限りはセックスはさせないぜ。ボクチャンには中絶や殺菌をする力がある。けどよー肉体の負担で仕事の支障を出してもらっては困るぜ。それと理想の相手と理想の時間を過ごそううだなんて思うなよ。人生に後悔はつき物だからな。悔しかったら「次」に生かせ。』
(・・・いろいろご忠告ありがとうございました。ところでシラコさんはどうしてそんな恋愛論を持っているのですか?ウケリーって繁殖したりするんですか?)
『ボクチャンが知る限りじゃボクチャンを含めたウケリーは世代という概念は存在しないぜ。けどよーどうやら死は存在するらしいぜ。ボクチャンとハジメ君でもうげんに二人殺してるしね。そう考えると生殖可能ってすばらしい進化だな。』
(・・・?)
『ボクチャンにもよくわからないけどどうやらウケリーは事故や飢餓に襲われない限りは死なないものと考えられる。けどよー一回死んだらそれっきりだぜ。一方で生殖可能なハジメ君たちはボクチャンたちより死ぬ可能性が高い一方次々と新しい世代を残して種が滅ぶリスクを低くすることができるってわけだ。』
(長生きしているとそんなことが分かるってわけですか?)
『こいつはあくまでも仮説だぜ。ボクチャンに今の自我ってやつが宿ったのは人間時間で言う半年前ほどだ。よってそれ以前の自分が何をやっていたかなんてわからないわけだ。』(われわれ人間たちだって赤ん坊のときの自分の生きた証拠は写真か周りの人間の証言ぐらい、最後の最後に信用できるのは我思うがゆえに我あり?)
(それならどうやって自らの不老不死を証明したんですか?)
『テロメア(生物〔特に真核生物〕の染色体の中にあるDNA配列のひとつ、とりま遺伝子の寿命だと思っといて〕ってやつからさ。ボクチャンやつは何回細胞分裂をしても減らないのにヒトのやつは減ってくからな。』
(テロメアって何ですか?)
『おっとストップだ。これはラブホか?』
(ピザ屋ですが何か?中に席はないからすぐに出てくると思います。)
ターゲットと彼氏はピザ屋から出るとそのままマンションに入っていったのでした。私は少しはなれたところで目を望遠モード(XIRACO-シラコがハジメの目のタンパク質をいじって視力を上げたってこと、ついでにいざ近くでトラブルが起きたときのために片目だけを望遠モードにしてある)にしてターゲットの入ったマンションを特定しました。
『今日は帰っていいぜ。そろそろケーサツとやらがうるさくなる時間だろ。』
(大丈夫なんですか?)
『ハジメ君も見上げたもんだぜ。けどよー大丈夫だ。ここが男の家なら説得でもしてターゲットの居場所でも聴き出せばいいからな。お疲れ様ハジメ君。』
次の日の夜私はこっそり家を抜け出して例のマンションの部屋を訪ねました。出てきたのは男の方でした。私は男の頭とリンクして(「話す」よりも直接脳の中に「見せる」ほうが説明が早いから、一方XIRACO-シラコは男が協力をしなかった際には痛点等を刺激して拷問をする予定であった)事情を伝え協力してもらいました。男は女が神社に来るように連絡を取ってくれました。
「あの、愛雨エイオさんもう一度だけ柿喰ケイコさんに会っておかなくていいのでありますか?」
「ハジメさん気にしないでください。僕は中途半端にもう一度会って別れるのが辛くなるよりはここできっぱりと決意をしたいんです。」
「ありがとうございます。あなたの決意を無駄にはしません。」
こうして私は明日の午後三時からターゲット柿喰ケイコと決闘をすることになりました。
つづく 明日は決戦