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XIRACO-シラコ  作者: 素巴(もとどもえ)キリマ
13/21

EP11 英雄のいない一週間

 とあるよく晴れた土曜日の朝の皆頃市内の駅にて

 小柄で赤毛の少女一カズハジメは人間であふれかえった電車から降りようと外に向かう。だが、忙しき大人たちの作る肉の壁はそれを許さなかった。

 「出ます。私出ますから~」

 やがてチャイムが鳴り電車のドアが閉まりそうになる。だがハジメは人間に挟まれて出れない。そんな彼女の姿を見つめる緑色の髪と目を持つ肩幅の広いネーチャンがいた。ハジメの姿を見たネーチャンは一種の衝動に駆られた。こいつカワイイ。手を握りたい。出ますっていってたから大丈夫だよな。その時ネーチャンは自らの欲望に素直に体を動かした。そうハジメの手を握って電車内から外に引っ張り出したのだ。

 「大丈夫か?」

 「え~とその~ありが・・・とうご・・・ざいました。助かったであります。」

 ハジメは顔を赤らめながら深くお辞儀をすると手を振りほどいてから駅の出口を目指して走っていった。背の高いネーチャンを自らの母の姿に重ねたことをハジメは恥じたのである。一方ネーチャンは満足そうな顔をしていた。

 「こういうのも悪くない。柔らかい手だったな。」

 ハジメがXIRACO-シラコと出会う三ヶ月前の出来事だった。


四ヵ月後一カズ家にて

 「ねえヒトさん私たちのハジメちゃんはどこにいったのでありますか?」

 「心配は要らないですよ。イチさんハジメはきっと生きていますって。」

 「そうですよね。そうですよね。すぐにハジメちゃんのことを抱きしめたいわ。」

 「僕だってそうさ。待ってるよハジメ。」

 「今私たちが落ち込んでいても仕方ないでありますよね。警察の人たちもがんばって捜してくれていますし。ハジメちゃんの彼氏さんの家の人たちも私たちと同じように苦しんでいることには変わりないですよね。」

 「そうですよ。たとえ消えたとしてもハジメの残したものは僕たちの中にも残ってるはずさ。僕たち以外にもハジメに出会った人たち全員に残っているはずだよ。」

 『母さん、父さん・・・ありがとう』

 「?」

 「?」

 「そうね、私たちが一生懸命今やるべきことをやることがあの子のためよね。」

 「じゃあ、明日から仕事に行きますか。」

 「あなた、明日はお葬式ですよ。」

 「おっと。」


 一方そのころ

 オレの名前は対馬井ツバイトワコだ。曲がったことの嫌いな十七歳だ。オレの夢は世の中を見だす「悪」を滅ぼすことだ。例を挙げるとブラック企業の責任者や生活保護受給者たち(そりゃ不正受給者は許せないけどもらっている人の半分以上は障碍者の様な人たちだから優しい目で見てあげてね)だ。オレはそいつらを裁いてやりてえんだ。だがその前に裁かなきゃいけない奴らがいる。誰かと聞かれたらクソババアとクソオヤジと答える。あいつらは互いに配偶者を持ちながら浮気してやがったんだ。それを知ってからオレは奴らの言うことを聞かなくなた。軽蔑してやったんだ。

 そしたら何だ?あいつらオレにペコペコしやがって。それでオレが「許しますお父様お母さま。」なんていうと思ったのか?オレは許さねえぞ!殺す!ブッコロス!・・・でもケーサツニつかまりたくねえから事故に見せかけて撲殺してやることにしたぜ。そのためにも今日もオレは体を鍛える。

朝の筋トレを終えるとオレは朝食をとってから家を出る。

 「おいクソババア。ドアの鍵を閉めろ。」

 本当は一日中体を鍛えていたいところだが学校の出席日数が足りなくなって卒業できなくなったらたまったもんじゃねえ。

 何?オレの親に対する態度はおかしいか?あのクソババアには当然の報いだぜ。オレは今日もデッドエンド高校に行くためにいつもの駅に向かう

 オー今日も混んでやがるな。そーいえばあの子に会ったのもこの駅だったな。土曜の補修の時だっけ?あの子カワイかったな。赤毛で小さくてやせっぽっちな。制服はカラミティーのやつだったからオレの後輩かな。

 そんなのが人の波に飲まれて困っていたから助けずにいられないぜ。オレは手を伸ばして助けてやったんだぜ。オレはあの子みたいな柔らかい手が好きなんだぜ。もう一回あの子の手を握ってみたいな。

 『その子はもうこの世の中にいないんだな。けどよーそのこの意志はまだ生きているんだぜ。』

 「誰だ?」

 ガヤガヤガヤガヤ

 今誰かがオレに話しかけた。だが回りの人間はみんな電車になだれ込んでいく。そもそも、オレとあの子との関係(あくまでも妄想です)を知っているやつなんているわけがない・・・って考え事をしている間に電車が出てったじゃねーか。今日は遅刻か。まいっかもともとオレ成績悪いし。

 オレは次の電車に乗ってやった。どうせ走っても一時間目には間に合わねえからゆっくり歩いてやるか。

 ガタンガタン

 『さっきはすまなかったな。ボクチャンはXIRACO-シラコだ。よろしくな。』

 「誰・・・!?」

 おかしい。何かおかしい。頭の中から変な声が聞こえてきたし唇がしびれて動かねえし。病気か?オレにはまだやることがあるのに。

 『心配するな。ボクチャンがトワコ君の脳にアクセスしてるだけだ。けどよー自由意志は残しているんだぜ。ってわけでボクチャンと話したいときは心の中で念じてくれ。』

 (てめえ何者だ?タラコ。)

 『XIRACO-シラコ!ボクチャンは人間の知らない異相空間に暮らすウクリーって生き物だカクカクシカジカ(細かいところはハジメ編を読んでね)・・・ってわけでトワコ君には戦士フーワカになって例のボクチャン以外のウクリーに取り付かれた化け物キウズアを倒してほしいというわけだ。』

 (このオレに特撮変身ヒーローのように戦えと?)

 『フツーのヒトは嫌だというと思うぜ。けどよートワコ君は拒めないはずだぜ。トワコ君は今力が欲しいはずだ。リョーシンとやらを殺すためのな。それにトワコ君のことを指名(別に「任命」されたわけではないからまだトワコには断る権利があるはず)したのは「あの子」だぜ。名前はカズハジメっていうんだ。』

 (なるほど断れないな。ところでそのハジメちゃんって子についてもっと知りたいぜ。あーもう降りようと思ってたとこ通り過ぎちゃったから話し続けてくれ。)

 『テレビやアニメのヒーローと違ってトワコ君には学校に行ってもらいたいね。あまり周りの人間に目立った行動をとってもらいたくはない。けどよーハジメ君はとにかく一生懸命戦ってくれた。時には自分の正義を疑ったりもしたがハジメ君は英雄だったな。』

 (なるほどな。で、どうやってハジメちゃんは死んだんだ?)

 『カラミティー中学校ってところで敵と相打ちした。』

 (まさかこの前のカラミティー中学校爆発事件っとテメーの仕業か?随分と世間に目立ってるじゃねえか。行方不明者二名だぜ。)(ハジメとカヲルのこと)

 『あれは六割方ハジメ君のミスだ。けどよーボクチャンの存在やハジメ君の活躍は世間には知られていない。なぜなら敵は木っ端みじん、ハジメ君はボクチャンが分解して土にしてやった。』(無闇に人間を分愛するとアンモニア等臭い物質が発生してしまう、さらに石油成分由来の衣類を分解しても臭い物質が発生してしまう、おそらくXIRACO-シラコはその辺の物質の管理に苦労したはずである)

 (だいたいのことは分かったぜ。で、キウズアってどこにいるんだ?早速殺したい。)

『随分と気が早いもんだなトワコ君は。けどよーいいぜ、首を右に回せ、そこにいる赤ブチ眼鏡の男がそれだ。こいつを追いかければそのうちにウクリーが防衛目的でこの男をキウズアにする。今なら引き返せるよ。どうする?』

 (やってやる、ぶっ殺す。レクチャーだ。)

 『よし次の駅から出発したらボクチャンは威嚇フェロモンを放出する。(原料はトワコの肉体のタンパク質から)すると男はトワコ君から逃げようとする。そしたらトワコ君は男を追いかけて人気のない場所に追いつめる。後は襲ってオシマイ。』

 (ああ、それだけで十分だぜ。)

 オレは行動を起こした。


 つづく 果たしてトワコはいかなる戦い方をするのか?

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