第九話 被虐地獄
朝一家の食卓にて
「ハジメちゃん食欲ないの?」
「えっ?お母さん、そうみたいです。私は早めに家っ・・『を出たいところですが朝食はちゃんと取っておきます。』。」
「ハジメちゃん最近何か悩んでな~い?ママに全部話してごらん、ね~え~♡」
「大丈夫ですって私一人でも大丈夫ですから。
「なあに?男の子?」
「かっ母さんには関係ないであります。」
「そうは見えませんよ。さあすべて話していただきましょうか?」
ああっ母さんが真面目モードに入ってしまいました。なんてごまかせばいいのでしょうか?ついでに読者の皆さんにお話ししますと私が普段から敬語を使っているのは今みたいな真面目な時のかあさんを見てあこがれたからであります。
「お母さんも知ってますよね。私がみんなから頼みごとをされていることをであります。」
「それで何を頼まれたのでありますか?ハジメちゃんお母さんに話すでありますよ。」
「え~とですね。」
(シラコさん私どうすればいいですか?)
『テキトーにはぐらかしとけ。けどよーダメならボクチャンが母さん君の頭をハッキングして記憶を吹き飛ばしておくぜ。』
私が焦っていると父が割り込んできて
「イチさん、子供は迷いながら育っていくんですよ。幼いうちからネットやゲームにうつつを抜かしている人たちと比べたらハジメは本当にしっかり育ってます。ハジメは思いっきり今悩んで将来は面白い人間になるはずです。ただ人に頼ることが苦手なだけです。だからハジメ無理に話すことはないぞ。父さんも母さんもいつでもハジメの味方だ。」
「ヒトさん今日はあなたの勝ちよ。」
驚きました。いつも母さんの尻に引かれている父さんがあんなにまともなことを言えるだなんて。(この時代に正社員って時点で父が優秀であることにハジメは気づいていない)
カラミティー中学校にて放課後
『ハジメ君悪いことは言わない、昼寝しときな。けどよー驚きだぜ。あんなに寝るのが好きだったハジメ君が寝ることを避けようとするとわね。』
(感じてしまうんですよ。これまで殺してきた人たちのことを。目を閉じるとみんなの姿を、耳をふさぐとみんなのうめき声をです。寝ることはもっと怖いのであります。寝ていると全身でみんなのことを感じてしまうからです。)
『忘れるんだそんなこと。なんだかんだ感じているのはハジメ君自身だからな。けどよー今辛い思いをしている人は世の中にはゴロゴロいるんだぜ。それに今このつらい経験は将来のハジメ君のためになるんだぜ。ところでよーボクチャンはあと一週間ほどしたらハジメ君の元を去るってことは分かるよな?けどよー跡継ぎは考えたか?』
まったく、シラコさんは私の心には関心がないのですね。だけど仕方がありませんよね、シラコは人間ではないのですから。それでも私はあと次の候補は考えてありました。
(名前が分からないのですが特徴ぐらいならわかるのですが。)
『いいぜイメージを送ってくれ・・・(XIRACO-シラコはハジメの想像したものを確認)おーこりゃいい素材だ。実在すればな。他に情報はないか?』
(私があった時彼女はデッドエンド高校の制服を着ていました。)
『デッドエンド高校か。他の情報は?』
(確か・・・)
そうでした今日はカヲル君と会う約束をしていました。
「あっカヲル君こっちであります。」
「あーハジメちゃん今日もお世話になるよ。」
『好きにやっててくれ。ボクチャンは引っ込んで肉体のメンテやってるから。』
「今日は純粋にハジメちゃんに会いたかっただけだよ。」
「それは・・・とてもうれしいであります。」
「ところでハジメちゃん最近疲れてない?クマ出てるし、何か困ってることあったらなんでも相談してよ。ボクはハジメちゃんの彼氏だよ。義務だよ。」
ここは本当に戦いで心身が疲れているといいたいところですが本当のことは隠しておきます。
「ただ疲れているだけです。またひざの上で眠ってもいいですか?」
私にとって今最も安心できる場所はここだけのようです。カヲル君の心臓の音を聞いていれば嫌なことはすべて忘れることができるからであります。私は彼のひざの上で目を閉じました。
ハジメ・・・君は「いい人」だよ・・・上っ面はね・・・君は他人のためではなく自分の恐怖心を隠すためだけに人のいうことを忠実に聞いてきた・・・知りもしない他人の命を奪ってまで・・・だって君は頼まれたことだけをやって助けを求めないいじめられっ子とかは見捨ててきた・・・いまさら被害者面なんかするな・・・
『よけろ!』
ヒュンッ!
シラコは私の運転を奪うと私をカヲル君のひざの上から転がりおろされてしまいました。
(何をするでありますか!私の大切な時間をであります!)
『それは前を見てから行ってくれ。今ここは戦場だぜ。』
私が顔を上げるとそこにはカンガルー型キウズア・サイットがいました。サイットはカンガルーらしい姿をしていましたが皮膚は灰色では虫類のようにザラザラしていて腹からもうひとつの小さな上半身がはまっていました。
「これはカヲル君なのでありますか?」
『今はハジメ君の好きなカヲル君ではない。キウズアだ。ボクチャンたちがたおすべき存在だぜ。』
(ウソですよね?ウソですよね?)
『ウソじゃねえ。現実だぜ。』
「ハジメちゃん・・・ボクはね・・・ボクはね。」
「その声はやっぱりカヲっガフッ!」
バシッ!ガッシャーン!!
サイットことカヲル君は私に顔面パンチをはなってきました。私は近くにあった机を倒しながらその場から転がっていきました。私は立てひざ状態で体勢を立て直すと今の状況を整理しました。まず鼻の中が塩素臭いと思ったら鼻血が出ていました。周りにはあまり人はいないようです。この場で変身しても問題はなさそうであります。そして敵は・・・大好きなカヲル君・・・痛っ!
バキッ!
『バカっ立ち止まるな!つらい気持ちはわかる。けどよー変身だ!攻撃だ!』
私は考え事をしている間に蹴られてしまいました。どうしてしまったのでしょうか?私は・・・私はなぜ今ここにいるのでしょうか?・・・そうです。きっと今私はカヲル君に殴られるためにここにいるんですよね。
「シラコさん、今変身する必要はありません、これは彼氏彼女の大切なスキンシップなのであります。」
ああ、私は何を言っているのでしょうか?でも仕方ないですよね。これまで私は多くの他人を殺したり見捨てたりしてきました。だから私がカヲル君に撲殺されても何も言えませんよね。
『ハジメ君何を言っている!?目を覚ませ!変身だ!!』
バシッ!ドカッ!
私はカヲル君のパンチを連続で浴びることになりました。でも、私はぜんぜん悪い気がしませんでした。(今回は「痛み」を表現するため火花は出さないでください)私は今幸せであります。地面にたたきつけられるたびに再び立ち上がります。
『ふざけるなっ!ハジメ君・・・戦士を何だと思っているんだ!』
「私は・・・私は消えるべき人間なのであります。カヲル君こそ生き残るべきなのであります。そんな素敵なカヲル君に殴られて私は・・・私は幸せなのであります。」
『ハジメ君・・・もう一度考えろ。今もしハジメ君が死んだらどうなるか考えてみろ。カヲル君の命はどこかの馬の骨に生命力を吸い尽されるんだぜ。その馬の骨は今度は誰に手を出すかわからないんだぜ。』
「拳を浴びたいであります。」
『何でハジメ君の父さんや母さんやカヲル君はハジメ君のことが好きだったと思うか?』
「殴られたいであります。」
『ボクチャンの質問に答えろっ!ハジメ君、今のハジメ君のことをみんなを愛してくれるのか?そんな無気力で暗いハジメ君のことをみんなは愛してくれるのか?おいどうなんだっ!!』
「・・・どうすればみんな私のことを好きと言ってくれますか?」
『なすことをなせ。それ以上は何も言わないぜ。』
「エアァァァ!!」
私は私のことを殴りに来たサイットに馬蹴りをしました。敵は近くにあったいすや机を跳ね飛ばした後に壁に激突しました。
『よしっその調子だ。広いところに出るぜ。教室から出るぞ!』
私は闘います。そう心に決めました。
アアアァァ!
私は気合を入れてから返信しました。それから鼻血を拭こうと二の腕で顔をこすりました。あれっ?これは自分の肌の感触?
つづく ハジメ最後の戦いがいま始まる