侵略者の核 一話 死んでもいい100人のクズ
ある日、地球に異星人がやってきた。
地球は映画よろしく異星人によって侵略されるものと思っていた。
しかし、不思議なことに我々人類は生かされている。
彼等は不老不死、我々を簡単に殺し滅ぼす事ができる。
それなのに、なぜか生かされている。
「貴女方はなぜ我々を殺さない?」
彼等がやって来た日、俺の前に現れたのは異星人の王妹エルヴィーナスだった。
それ以来なぜか彼女は俺の傍にストーキングしている。
「なぜ殺すなど野蛮なことをいうの?」
不死である彼女達には、そもそも死がわからないのだ。
彼等が見た人間はすぐに争う下等な生物なのだという。
死なない彼女達は争いすら達観したのだろう。
「いや、価値観が違うのは想像がつく。要するに食べるのに困らないから戦いはおきないんだろう?」
ならなぜ彼らには王があり、戦兵があるのかわからない。
「私たちは必ずしも戦わないわけではない。だけど人間が食べ物と領地を奪い合うように、私達は領地を奪い合う。死なないから場所がないの」
「つまり地球を住みかにしにきたと?」
「そう」
「不死のくせになんで人口を増やしたんだ?」
「増やしたんじゃなく機械ライラの暴走。今はもう卵切れで停止している」
「生まれも機械化、さすがは高等族といったとこか。だがその機械を暴走させた不死者達は製造ボタンを押した可能性もある」
「押したから作動して故障した。それは95パーセントありえる」
「で、地球はごらんの通りにたくさんの人間が生まれ老いては死を繰り返しているが」
「私たちはなぜ死ねないか、なぜお前達が死ぬかを見にきた」
「ついでに領地も取りにきたのか」
「お前は私の婚約者、兄上がそうきめた」
「……マジで!?」
「というか名前なんていう?」
「知らないで来てたのかよ」
「うん、私好みの青髪だから置物にするといいっていわれた」
「なにをいってるんだ俺は黒髪だぞ?」
「でも青も混じってる」
「ああ異星人だから色の関知も高等レベルってことか」
「艦へいこう兄上が待ってる」
「うおわあああ!」
●●
「よくぞ参ったエウキ=スライ」
「兄王ルイシス」
「……こんにちは?」
薄い茶の長い髪をした男だ。
「今は夕方、故にコンバンワが正しいのではないか?」
「ああ、はい」
なんでこっちの常識を三日で理解しているんだ。
「ワタシはこの地球を気に入ったんだ」
「はあ、つまり滅ぼす?」
「なにをいうのかね、滅ぼすなんて野蛮な真似をしたら地球が穢れてしまう」
「ああ、はい」
「さっそくで悪いが、刑務所とやらにいる罪人達は全て消してきた」
「……マジで?」
「ああ、はじめから誰の記憶にも存在しない者になったので経歴を調べても無意味だ」
神様助けてくれえええ!と叫びたいが、我慢した。
「とりあえず君にクズという奴を100人見つけてもらいたい」
「なんでいきなりそうなったんすか」
「サンプルだね。私たちは個人からくる感情や善悪もなければ固定概念の柵もない」
「つまり誰が地球に要らないクズかわからないから地球人のパンピーである俺に?」
「そうなる」
「俺がクズしゃない保証は?」
「君は現状なにもしていないからね。それに君は……まあいいや」
「なにが?」
「無理なら私が適当に探すさ」
「……俺はこれからどうなるんです?」
「私が学校に一緒に通って監視する」
とりまクズを身近な学校から100人見つける事になった。