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白恋鬼譚  作者: 丹下 博観(風光明媚)
異世界にて鬼に出逢うこと
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森塚 縁



『えにしちゃんて、かわってるね』



 小さいころから縁は『変わった子』と呼ばれていた。幼かった縁は自分のどこが変わっているのか分からなかった。



『縁ちゃんは変わってるよね』



 小学校に上がり、初めて喋ったクラスの女の子にも変わっていると言われ、縁はどこが変わっているのか、その時に聞いてみた。


 すると女の子は変な顔をした。



『そういう所が変わってるんだよ』



 これは同い年の子達だけではなく、大人にも言われることがあった。



『森塚さんは変わっているね』



 中学一年の担任の先生が縁に言った。


 縁は、よく言われますが自分ではどこが変わっているのかよく分からない。と先生に告げる。


 そして担任の先生は昔、同じことを尋ねた女の子と同じ顔をした。しかし、担任だった先生は難しい顔をしながらも答えてくれた。



『なんて言えばいいのかな。君は、今日、入学式を迎えるにあたって一番乗りでこの教室に来たよね?』


『そうですね』


『それで君のクラスの担任になる俺とは、当たり前の話、初対面だよな』


『どこかで会った覚えはないですね』


『そんな君は初対面であり、クラス担任の俺が君に対して席替えはどうするべきか意見を聞いて、君はなんて答えた』



 担任の先生の意図は読めなかったが、縁は正直に答えた。



『ほとんどの子は小学校からの繰り上げの子達ばかりだけど他の小学校の子達もいるから席替えは、ひと月待ってその後クジ引きでもして決めればいいと言いました』


『その理由は?』


『クラスの交流は、ひと月あればみんな慣れるけどその間に派閥みたいなのも出来るし、イジメにあう子とかも出始めるから自分達で好き勝手決めさせるんじゃなくてクジ引きで問答無用で決めた方が後腐れが無くてすむと。後は目の悪いとかっていう理由がない限り席の交換を禁止してしまえば完璧』



 縁のセリフに、担任の先生はどこか感心した風情で頷いた。



『そういったことって、すぐには答えられないもなんだけどね、緊張して。普通の子は、君の立場になった時、後腐れのないことを言ってすぐに立ち去るのが多いんだ。特に知り合いもいない、こんな時は』


『…………』



 担任の先生は少し困った顔をした。



『新しい環境に入って、新しい人間関係が始まる日に君は少しも、物怖じしてない。どこか堂々としているようにも感じる』



 そういう所が、君の変わっているところだと、俺は思うよ。



 そう言った担任の先生の言葉が、縁にはよく、理解することが出来なかった。


 確かに、縁も人とのズレを感じる時はあったが、それはそこまで気にする程の差ではないだろうと縁は考えていた。


 人が十人集まれば十通りの考え方が生まれるのは必然。酷い亀裂が生まれない限り、無理して矯正する必要性はないことだと。


 担任の先生が言いたかったことはそういうことでは無かったのだが、縁にはそれが分からない。そういった所が人との思考がズレている。



「普通に考えつくことを普通に答えることが、そんなに変わったことなのだろうか?」



 あれから数年たった今でも、縁には分からない。









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