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白恋鬼譚  作者: 丹下 博観(風光明媚)
異世界にて鬼に出逢うこと
36/71

間幕

本日連続投稿です。

一つ前からご覧ください。



2/2




 目が覚めて、慣れた天井を見たわたくしはあれはすべて夢だったのだと思った。


 わたくしは心の底から安堵した。


 そうよ。奉華の姫が生贄なんて……そんなのあるわけがないわ。あれはすべて悪い夢。お父様やあの方が、他の皆がわたくしを国の為に殺そうだなんて………。


 それにしても本当に恐ろしい夢だった。

 そう思いながらわたくしはゆっくりと起き上がろうとして自身に感じる違和感に気付いた。


 全身がだるい。それに寒気も感じるし、頭も重くてボウッとする。



 嫌ぁね、風病でも召してしまったのかしら?



 側使いの女房に声を掛けようとするが、喉の奥に痰が絡まってしまっているみたい。ゴホッゴホッと咳が出てしまう。

 でも、女房達はわたくしが起きたことに気付いたみたい。早く来なさいよこの役立たず!



「姫様? ……お目覚めになられましたか!? 姫様!!」



 部屋の外に控えている女房達がわたくしの部屋に押し寄せてくる。な、なによ……何をそんなに慌てているのよ? …………まあ、仕方がないかしら。主たるわたくしが病に掛かったのだから。高貴なわたくしを案じるのは彼女達からすれば当然のことよね。


 嗚呼、でも五月蝿くて仕方がないわ。わたくしは病人ですのよ、もっと静かに行動出来ないのかしら? 嘆かわしいたらありゃしない!


 女房達の無作法を嘆いていたらお父様が足音を鳴らしながらわたくしの部屋の中に入って来られた。



「姫! 私の可愛い稲良!! 良かった……目覚めてくれたか!!」



 お父様はわたくしの顔を見て周りの目も気にせずおいおい泣き出してしまった。どうなされたの? お父様。


 何時もとどこか様子が違う父に、わたくしの胸の内にくらい種が出来た。



 そしてわたくしはフッと気付いた。己の姿の、その様を。



「いっ、いっっっやあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



 喉に絡まった痰ごと吐き出すようにわたくしは絶叫する。


 ゴホッゴホッ咳が止まらなくなって苦しくなるがそんなこと今のわたくしには些末なこと。


 わたくしの身には、悪夢で見たのと同じ奉華の姫の衣装を身に纏っていた。

 所々泥に汚れ、自分の髪や肌から土と汗の臭いが立ち上っているのがわかる。


 お父様は「すまない、すまなかった! 稲良、お前を守れなかった私を許してくれ!!」とひたすらわたくしに向かって謝っている。



 あれは、夢ではなかったの?

 わたくしが奉華の姫に選ばれたことも?

 わたくしが惑いの森の主の贄にされたことも?




 お父様に─────あの方に、見捨てられたことも、すべて?




「………なぃ、わ」




 許さない許さない許さない!


 お父様も今上帝もみんなみんな大嫌い!


 よくもわたくしを裏切ったわね! 大っ嫌い大っ嫌い!! 裏切り者裏切り者裏切り者裏切り者裏切り者裏切り者裏切り者裏切り者裏切り者!!!



 ────神薙さまの裏切り者!!!



 パキッン


 胸の内に宿った昏い種が、音を立ててはじけた。



(どうして? わたくしがこのような目にあうの?)

『お前は悪くないのになぁ』


(神薙さま、神薙さま! どうしてわたくしを贄なぞになさったのですか!! わたくしは……これほど貴方様をお慕い申し上げていますのに……)

『酷い男だなぁ。お前が、これほど望んでいるのに……』


(お父様もお父様よ! わたくしが可愛いと言いながらも、あっさり見捨てるだなんて!!)

『お前の父は、結局のところお前を娘ではなく道具としか見ていなかったのだろうなぁ……』


(わたくしとは比べるのもおこがましい賤女共が、何故、神薙さまに目を掛けられているの!!)

『お前の方が高貴で美しく、教養に富んでいるのになぁ……?』



 昏い種から出てきた者は、わたくしの叫びに応えてくれる。わたくしの耳に、心地よい言葉で寄り添ってくれる………。



(嗚呼、憎い!)

『お前の慕う、あの男が』


(恨めしい……!)

『お前を贄とすると決めた国が』


(妬ましい!)

『惚れた男に寄り添っている女が』


(怨めしいっ!)

『喰らおうとした、あの鬼が』


(疎ましい!)

『お前を軽んじる娘が』


(嘆かわしぃい!)

『道具として利用した父親が』



 ─────なにもかもがぁ、っ!!






 (『 ユ ル セ ナ イ 』)






●○●○●○●○






 バッと上に掛けていた打掛を蹴飛ばすように縁は飛び起きた。


 ドクン、ドクンと大きな音を立てて心臓が脈打っているのがわかる。


 外を見ればまだ陽が上がりきらず、微かに夜の帳が残っている。

 しかし縁は再び寝る気持ちになれず、気持ちを落ち着けようと大きく息を吐いた。



「………大丈夫、か? うなされていたが……」



 額に冷たく長い指が触れる。

 燈也のひんやりとした掌が縁の熱を徐々に冷やしていく───。


「……………………」


「………」



 心地よい指の冷たさに落ち着いた縁は髪を手で梳いてもう一度、大きく息を吐いた。






 とりあえず礼は言うけど、どーして此処にいるのか聞いてもいいかな?



 言い訳だけは聞くよ? 燈也…………。














嫌な夢を見て飛び起きたら側に燈也が居たことに一瞬心臓が止まりかけた縁さん。


部屋と窓に鍵を付けることを穂稀と相談してください(笑)



稲良姫のもとに現れた謎の声。


大祭最終日に何かが起こる。

次回、ごうご期待!!!




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