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白恋鬼譚  作者: 丹下 博観(風光明媚)
異世界にて鬼に出逢うこと
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朝の出来事



 ピッ、ピピッ! ピピッピ!!


 鳴り響く目覚まし時計の音に森塚 縁はゆっくりと目覚めた。まだ夢うつつ状態だが、縁はベッドから起き上がり、支度をし始めた。


 支度をしながら思う。六月になってからずっと縁は同じ夢を見るようになった。


 雨が降る中、命に関わるほどの怪我を負った縁を抱きしめ、必見に話し掛けてくる男の腕の中で息絶える夢。



「変な夢」



 奇妙だと思いつつ、縁は同じ夢を見続けることに対してあまり気にしていなかった。確かに気持ちの良い夢ではないが、だからといって所詮は夢。理屈も何もないものに気を揉んでも仕方がないだろう。


 そう思っていた縁は夢のことを誰にも話はしなかった。



「あら、おはよう、縁」


「おはよう、母さん」



 身仕度を終えた縁はロビーで朝食の用意をしていた母親に挨拶を返す。

 父親と六歳上の兄はすでに家を出て行っていなかった。



「起きるのが遅いわよ縁。学校間に合うの?」


「大丈夫大丈夫。モーマンタイ」



 チラリと時計を見るともう良い時間だった。

 朝食を食べつつ、縁は思った。走りゃあ間に合う。食い気よりも眠気だ。私は寝たい。


 そう思いながらもしっかりと朝食を食べきった縁はカバンを持ってすぐさま玄関に行くと母が話し掛けてきた。



「あら、今日の占いだと縁は気をつけなくちゃいけないわね」



 テレビには『この一週間、一白水星の人は予想外のトラブルに巻き込まれるでしょう。そんなあなたのラッキーアイテムはズバリ、お饅頭! 今日から一週間はお饅頭を食べましょう!!』



 どこの和菓子メーカーの回し者だ。


 縁は軽く息を吐くと、行ってきます。と言って家を出て行った。



 それが、彼女の姿が確認された最後の瞬間だった。



 縁は近道をしようと近所にある神社の中を走っていた。子どもの頃はよく遊んでいた神社だが最近は祭りでもない限りめったに近付かなくなっていたので、時間が無いながらも縁は懐かしさから周りを見渡していた。


 もう少しで出口というところで縁は足を止めた。鎮守の森から誰かの声が聞こえてきたからだ。鎮守の森は宮司も儀式以外では立ち入ることが出来ない神聖な場所とされている。そんなところから声が聞こえたてきたので、縁は気になってしまった。



(無視をするのも気持ち悪いな。神社の関係者の人にでも話しておくか)



 この時点で縁は学校に間に合うことを諦めた。人助けの様なものだ。少しぐらい遅れても構いやしないだろ。


 そして、宮司や巫女さんでも探そうと踵を返した縁の耳に女の悲鳴の様なものが聞こえた。



「!?」



 瞬間的に走り出した縁は迷うことなく鎮守の森に足を踏み入れた。









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