第六話 学校(2)
俺が下駄箱で靴を履き替えているとそこに奴が現れた。
「はぁ〜ぃ皆さん。お・は・よ〜。」
でた。前口だ。
「奈緒ちゃんおはよ!あっ里美ちゃんおはよ!おぉ〜満ちゃんも!」
あの朝から異常にテンションが高いのが前口颯馬だ。家は金持ち。容姿は微妙。性格は無類の女好き。身長は低い。
そして何故か前口の周りには女がいる。
あいつがモテる理由がわからない。前口は身長のことに触れるとどこにいても察知して、攻撃してくるらしい。
先輩がやられたという噂まである。
事実関係は定かではないが・・・。
俺は前口に見つからないようにこっそりと下駄箱を抜けようとしたところで。
「あっこれはこれは冴島くん。おはよう。」
げ。見つかった。俺は一秒でも早くその場を離れたかったが遅かったみたいだ。
「確か冴島くんは葛城さんと仲が良かったんだよね。」
「あぁそうだけど。」
「葛城さんのことは聞いてるよ・・・」
と前口が悲しげな顔をした。
確かに前口は軽くて女好きだけどこの気持ちは本物なんだろうと思った。
「ごめん。なんかしんみりさせちゃったね。アハハハッ」
「で、なんか用事?」
「あっそうそう!こーれ!」
と一枚のピンクのレースがついたハンカチを差し出した。
「何これ?」
俺はまったく見覚えがなかった。そのとき横で浮いていたカナがそのハンカチを見て言った。
「あっコレって私の!」
「えっ?今葛城さんの声が!」
あたりをみまわす前口。
「確かに聞こえたんだけど・・・気のせいだよな。そうだよな。そんなわけないもんな。アハハハ。」
俺は少し慌てたが、とりあえずそのハンカチについて聞いてみることにした。
「そのハンカチが葛城の?」
「あぁこれはね〜・・・」
俺はそのとき前口の溢れんばかりの笑顔と体から出ているピンクいオーラに引いていた。
「これはね!去年の夏!僕がたまたま道を歩いていたときだよ。向こうから歩いてきたのは、まるで天国から僕を迎えに来たかと錯覚するくらい真っ白なワンピースに身を包んだ美人なお姉様!俺はそのお姉様に早速声をかけたんだ。」
「それが葛城?」
「違う違う。僕がそのお姉様とお話していたんだが残念なことに僕と話が合わなくて。去り際にお姉様が僕を押していったんだ。そしたら道端のドブに足が入ってしまい、急いで抜いてる上から盆栽が降って来て頭に直撃。倒れた俺の手を二、三人小学生が自転車でひいていって、そのあと来た猫に顔を引っ掛かれたときにたまたま葛城さんが通ったんだ!」
「うん。で?」
「そのときに、大丈夫ですか?って一枚ハンカチを出してくれたんだ〜」
とにやける前口。
「いやぁ話はわかったけどなんか・・・」