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第08章「交差の予感」

水月(みつき)

「なんでしょう、小春さん?」

「今回の仕事なんだが……お前だけに任せていいか?」

 いつも『情報屋』としてパートナーをやっている水月としては、突然の仕事だった。二人で仕事をしないということも含めて、突然小春から伝えられ、少し驚いた。

 ……しかし、前からこういう事は何度かありましたし、別に問題はありません。

「小春さんは来ないんですか?」

 だが、水月は聞き返してしまった。問題があったわけではないが、いつもと様子の違う小春の事が何か心配だった。

「あ、ああ。ちょっと別に調べる必要があることがあるんでな」

 ……やはり変です。

 こういう時ほど、小春は淡々と連絡だけをする。

 ……そもそも、小春さんがこちらに問いかけをすること自体、普通じゃありません。

 道具でも使うように命令するのが、いつもの仕事であるはずだと水月は思う。

「小春さん。今回の仕事、何かあるんですか?」

 その言葉が来るのを待っていたような、あるいは恐れていたような、どちらとも取れる表情をして、小春は息を吐いた。

「水月に隠し事は出来ないな」

 小春は苦笑するが、水月は真剣な眼差しで答えた。

「つまらない隠し事なんて、やめてください。私には……小春さんしかいないんですから」

「そうだな。今回の仕事は、罠かも知れない。だが、それほど危険はないだろう。せいぜいこちらから何か探りにくる……という所か。念のため、俺は仕事は終わるまで身を隠しておく」

「はい」

 ……小春さんは『情報屋』としての情報の全てを持っています。

 小春が隠れるのは当然である。その上で、水月は一人で仕事を達成しなければならない。

「もし、危険なことがあったとしても、俺はお前を信じている。が、無理はするな。お前が逃げれば、追える奴はいないだろう」

「では、行ってきます」

「ああ、無事に戻ってこい。それが最優先だ」

「はい、そう言ってもらえて、私は幸せです」

 そう言い残すと、水月はその場から姿を消した。

「やれやれ、罠に飛び込むとか言っておいて、結局水月を飛び込ませるだけ……か」

 小春は、自嘲の笑いを浮かべた。


                    ●          ●


 翼は飛鳥と、千鶴に指示された場所に向かっていた。今回は『情報屋』に依頼をする人と実際に調査をする必要がある対象が、両者とも生徒会の協力者で、調査対象の方に向かう指示だ。

 依頼した情報を得るためには調査対象への接触が不可欠なので、その場に居れば確実に『情報屋』に会えるだろう、という作戦である。

「しかし、直接会わなければ、得られない情報ってなんだ?」

「あら、ちゃんと把握してないの?」

「生憎と、さっき知らされたばかりなんでな」

 横目で疑いの視線を向けられた翼は、慌てて釈明した。

「今回は、発火能力者に低温の炎が使えるか、という調査よ」

「なんだそれ?」

「名目としては、調理用途に使用出来るかの調査」

「なるほど」

 ……って調査が成功したら、先輩はどうするつもりなんだ?

 翼は内心で思いつつ、そんな話をしているうちに指定されていた校舎裏に辿り着いた。調査対象の子を見つけると、見える位置で待機し、飛鳥が小声で話の続きを始めた。

「能力の上限の調査、となると流石に無理があるけど、下限となれば話は別。しかも、人前では滅多に披露しないから、情報を手に入れるには直接聞くしかないわ」

「なんで上限だと駄目なんだ?」

「例えば、射程上限を調べてもらって、その外から攻撃を加えたらどうなるかしら?」

「あー……」

「後は……今回は温度だから、最大温度で溶かせるものより高い温度でなければ溶かせない金属を用意して、それで武装すればあの人は……」

「分かった。俺が悪かった」

 意地の悪い説明を続けようとする飛鳥を、翼は止めた。

「いえいえ。分かって頂ければ結構よ」

 翼が降参したのを見て、飛鳥はにこりと微笑む。その様子を見て、翼はため息を吐いた。

 ……ますます先輩に似ている――いや、あの人はもっとタチが悪いか。

 その時だった。それは予想とは違う形で、唐突にやって来た。

「え……!?」

 果たして、二人のどちらが声を上げたのか。それが分からなくなるほどの事が起きた。

 突然、空中から人間が現れていた。

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