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第17章「結末の交差道」

 秋時も、いつもながら凄まじいその力を感じていた。

 ……相変わらず、すごいとしか言葉が出てこないな。

 自分たちの生徒会長が強いということは知っていても、その本当の力はあまり目の当たりにしない。だからこそ、この力には圧倒される。

 ……それと、怖いな。

 それはこの力が、ではない。これ程の力を持つことが、だ。あの会長はどれだけのものを背負っているのか、と秋時は思う。

 ……だからこそ、信頼も尊敬もするんだがな。

「終わったか」

 と、鶫が呟いた。それとほぼ同時に、千鶴の攻撃は終わる。そして、暗闇が晴れていく。

「うわ……」

 誰がそう呟いたのか、とにかく校庭は惨状だった。しかし……

「相手の死体がない……?」

 鶫が疑問を口にする。その場で皆が、同じ疑問を持っていた。

「十和か九恩が再生して、真八の死体を回収したってことか?それにしても再生が早すぎる」

 秋時の意見に、答えを出したのは千鶴だった。

「いや、逃げられた」

「「逃げられた!?」」

「ああ、おそらく知覚不能領域を広げたのは、地下に逃げるためだ。地下ならば私の攻撃は届かん。地下も探れなくはないが、そちらに意識を集中しなくてはならんからな。してやられた」

「今から追っても無理なのか?」

「いや、相手が引くのなら深追いは禁物だよ。鶫」

 鶫は、大人しく千鶴の言葉に従った。次の行動として、校庭の処理のために連絡を始める。

「さて、招かれざる客は去ったし、少し話をしようか」

 と、千鶴が水月の方に振り返る。

「ふむ、『情報屋』では呼びづらいな。名前を教えてもらってもいいかな?」

「……み、水月。鷲津 水月です」

 水月の震える声に、千鶴がうむ、と頷く。

「水月くん。断言しておこう、私たちは君と争う気はない」

「いや、この惨状の前では脅しじゃないのか?それは」

「そうならないために話をしようとしているのだが、分かって貰えるかね?」

 水月はコクコクと頷く。大人しそうでこいつもなかなか大物だな、と秋時は思う。

「さて。我々が水月くんを追っていたのは、今回の戦闘にも関係がある」

「……ど、どういうことです?」

「先ほど見た通りだ。学園に危険な奴らが来ているのでね。『情報屋』をやっているとなると、狙われる可能性があった。なので、一刻も早く接触する必要があったのだよ」

「……き、危険な人たちが、き、来ているなら『統治機関』に相談すれば……」

 ……いきなりその核心を突いてくるか。

「キミはなかなかに賢いね。そこまで考えてくれるのは嬉しいが、これ以上の話は明日にしよう。今日はもう遅い」

「……分かりました」

 すると、そこで鶫がこちらに振り返る。連絡が終わったようだ。

「千鶴。処理の方、手続きは済んだ。が、明日までにどうかするのは無理だ」

「流石に調子に乗り過ぎたか……まあいい。反省は後でする」

「……あ、あの」

 歩き出そうとして、秋時は水月に声をかけられた。

「どうした?」

 秋時は振り返って水月を見た。すると……

「……え、いや、あの」

 ……どうしてそんなに怖がる。

 と、自分が睨んでいるような顔になっていることに気が付いた。

「ああ、悪いな。俺の目つきが悪いのはいつもの事で、別に怒っちゃいない。落ち着いて話せ」

「……は、はい。ひ、一つ教えてください。秋時さんは、複数の銃を使っていましたよね?」

「ああ、あれか」

「……特殊な武器は、能力に依存しているから、多くは持てないはずですけど……」

「ああ、こいつが『アルテミス』。二つ目のこっちが『ルナ』だ」

 実際に二つの銃を手元に出して見せる。

「……女神の名前ですねっ!月の女神……同一視ですか!?」

「俺の台詞を取らないでくれるか」

「ご、ごめんなさいっ!」

「いや、怒っちゃいない。そんな大げさに謝るな。まあ、そういうことだ。アルテミスとルナは月の女神として同じものとして扱われた。だから、この二丁の銃は両方加護を受けている」

 ……調子狂うな。

 しかし、頭の回転と知識は本物だな。分析もできるように仕込まれているのか。

「……な、納得しました。ありがとうございます」

「いや、気が済んだならなによりだ」

 秋時はそう言って頭を掻きながらも、銃を虚空にしまった。

「さて、話は終わったかね」

「ああ。まあ、助けてもらった礼って所だ」

 秋時は肩をすくめて少しおどけてみせた。

「一応聞いておくが、そんな簡単に話してしまっていいのかね?」

 千鶴の真剣な顔での追及に、秋時も真面目に答える。

「こいつらは情報の価値を知っている。言いふらせば価値はなくなる。口の堅さに関しては信用できると踏んでるが、甘いと思うか?」

「ふむ。私は別に、秋時の考えに口は出さんよ。聞いてみただけだ」

 ……つくづくアンタは下の人間に厳しいな。千鶴様。

「では送っていこう。流石にもう危険はないとは思うがね」

「……はい」

 そして、皆が歩き出す。だが、そこで千鶴が立ち止って空を仰いだ。

「どうした?千鶴?」

 鶫は忘れものか?と聞いたが、千鶴はいや、と答え、

「あの人形どもが余りに弱かったことを思い出してね。おそらく、あの不死性というものを確保するのにはあのくらいの弱体化が必要だったのだろうが……」

「そうか?あれでも十分強かったと思うが。ちゃんと不死だっただろ?」

 ……結局、倒すことは出来なかったしな。

「ふむ。だからこそ一人の後輩を思い出すのだよ」

 その言葉に、鶫も同じ人物を思いついたようだった。

「あの例外中の例外か」

「そう、翼くんの事をね」

 そして、千鶴は楽しそうにニヤリと笑った。

「彼は覚悟を決められただろうか――」

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