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魔王討伐の後始末 次の魔王は誰?  作者: らのあお
ユーロ=ルーシー内戦
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シャルージェとニコラスの戦い

 シャルージェとニコラスの戦い


 議会の混乱を脇目も降らず彼はただシャルージェの目の前まで歩いた。


 「今更何のつもり、ニコラス」


 「君の夢を砕きに来た」


 彼は振り返り、未だ状況を飲み込めていない党員を前に演説を始めた。


 「紹介に預かりました。私が魔王ニコラス・ロマリク、皆様が定義する所の反革命勢力の親玉で御座います」


 農村上がりの党員はニコラスを強く睨むが、その反面知識人層の党員は彼に対して強く興味を抱いた。何故なら彼の立ち姿があまりにも凛々しかったのである。


 「まず私はある二つの点において、赤軍である党員の方々と同意であります。それが平和主義と民主主義という点です」


 疑惑の目がニコラスを見る。何故なら彼の父はあの征服者カノンノフであり、平和主義や民主主義とは程遠い人間であったからだ。


 「ですから私はこの内戦をいち早く終わらせたいと考えていますし、魔王討伐の後始末が終わり次第、議会の設置とそして私自身の退位もここにて約する事も考えているのです」


 彼の発言に党大会が揺れる。何故なら二撃革命論者の視点に立てば、彼のこの提案を飲めばそれで目的が達せられるのだから。

 そして一番動揺していたのはシャルージェであり、彼女は黙っている事ができなかった。


 「信じられる訳ないでしょう。えぇ、そもそもです。貴方は魔王討伐の後始末が終わり次第と言いました。しかし魔王討伐の後始末とは具体的に何なのです?そしてそれが守られる保障がどこにありましょうか?」


 シャルージェとニコラスは政治家としてここで対峙した。互いが互いを欲していて、それを叶える為には互いに互いを屈服させなくてはならないと思っている。


 「では具体的に提示しましょう、魔王討伐の後始末とは三つの徹底的な改革であります。まず一つ目、内戦の、貴方達が定義する所の革命の平和的な終結に御座います」


 人々から疑惑の声、夢物語だと叫ぶ人。しかしニコラスはそんな声気にも留めなかった。


 「そして二つ目、維持不可能となったユーロ諸国の独立」


 空気が変わった。何故ならあのカノンノフの息子がカノンノフのしてきた全てを否定しようと言うのだから。


 「最後に三つ目、貴族制度の解体です」


 「信じられるものですか!!」


 議会の声をシャルージェが代弁する。だってこれは自分たちが革命で求める最終目的であったのだから。それを敵側から良しと言うなんてあり得ない話だ。


 「信じる信じられないの話ではない。これはこの大地に住む全ての人間の為の最善の選択だ」


 「最善の選択?笑わせるな!それは貴方の視点ではないか、魔王ニコラス」


 ニコラスは大きく息を吸って答えた。


 「その言葉も貴方の視点だ、シャルージェ書記長。私は先ほどの演説、国家的組織の指導的中核を成すユーロ=ルーシー・インターナショナル労働者党と聞いて腹を抱えて笑いたくなったよ。それはこの党内の穏健派の皆様も思っただろう。だってそれは神を否定して神に成り代わろうという傲慢さの表れだ。もっと簡単に言ってやろうか、血統なき王政でしかない。結局は弱者は弱者のまま封殺されるだけだ」


 シャルージェはその台詞を鼻で笑った。


 「それでも書記長への道は誰にも開かれている。私はこの男と違って確かに皆様のうちの一人でしたよ、しかも女です。なのに私は書記長の地位に就きました。弱者が弱者のまま?それなら私はどうなんですか?」


 「シャルージェ書記長、貴方とて理解しているはずだ。真の弱者とは野心も無ければ能力も無い、日銭を稼いでその日その日を繋ぐ様な人だ。貴方の様な人では無い」


 シャルージェが反論しようとした時、カーメネフが割って入った。


 「弱者を尊ぶその心意気!まさしく分配という言葉に相応しい。私は、私達はこの男に賭けたい!革命の終わらせるのは魔王自身だと!」


 「それに皆様、一度口を閉じて庁舎の外に耳をお傾け下さい!」


 市中からはこの様な声が聞こえる。

 魔王ニコラス万歳と。

 彼はこの政府庁舎に入る前、民衆にパンを配っていたのである。


 「皆様、一度立ち返って私たちの本質を見初めてください。私の本質とはパンを、食を奪われてはならなぬという言葉で御座いませんか。しかし魔王、いえ市民ニコラスはどうでしょう。彼は飢える人にパンを配った。富める彼は自らの富を貧しい彼らに分け与えたのです!私達の思想の体現ではありませんか。私達が彼を認めずして、民衆が我らをどうして認めましょう!」


 カーメネフは火を付けた。もう党大会は乱れて鎮まらない。


 「惑わされないでください!ここで我らが王政を前に妥協を行ったならば、次訪れるのは資本家の世界だ!その後の真の分配は何百年後になるのか、それをわかない訳では無いでしょう!?」


 シャルージェはそれを鎮めようと試みたが、台風の中で叫ぶ様なものである何の意味もなかった。


 「無駄だよ、シャルージェ。もうなる様にしかならないさ」


 数時間ほど熱い議論が党大会で行われた。それは個人間で、あるいは派閥間で行われ全体で行われる事はなかった。だからニコラスのシャルージェの戦いの勝敗は投票で決着する事になる。


 「では投票と致しましょう、同志イヴァン・コリョロフ。この男の、ニコラスの提案に乗るのか、乗らないのか」


 急遽議題はニコラスの提案についてと変わった。

 そして数分後、投票が行われ、その後に開票される。結果は以下の通りである。


 総投票 321票

 賛成票 168票

 反対票 142票

 棄権 11票


 棄権者が反対票に入れていたのであればシャルージェは勝利していたのかもしれない。しかし、確かにニコラスはシャルージェに勝利した。

 内戦が、革命が終結したのである。


次の話やったら内戦編は終わりです

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