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辺境伯の初恋

 辺境伯の初恋


 音楽が始まったので二人は一旦解散とし、コネ作りの為のダンスをする。若い女達はニコラスを囲い囲むが、貴族の女として熟練した人達はその光景を馬鹿だと侮蔑する。彼女らはニコラスという王子が如何に軽薄なのか知っているのである。何故ならニコラス王子は誰とでも踊るが、誰も彼の心を射止める事はできなかったのだから。


 「ニコラス王子、宜しければ私と踊っていただけませんか」


 若い乙女の集団をかき分けて、騎士を思わせるような栗毛の青年がニコラスの前に跪いた。


 「構わないけれど…君はどっちを踊るんだ?」


 青年はニコラスの手を取るや否や、彼の肩甲骨のあたりに手を回した。感触によって役割を理解したニコラスはすぐに背筋を伸ばし、青年の腕を掴んだ。


 「やはり貴方にはこちらの方が似合っている」


 青年はニコラスの身体をコマのように回し、ニコラスもニコラスでコマとして遠心力と重心を完璧に制御して美しく舞った。そして最後に身体を後ろに反ってオーバースウェイをする。


 「まぁ、生憎振り回されるのは慣れているからね、だけど…」


 今度はニコラスが青年の肩甲骨に手を回し、自身の手を青年に掴ませた。


 「君のは少し振り回し過ぎる。それでは嬢様方が大変だろう」


 ニコラスは自分がやられたように青年を振り回した。それでいて青年が転びかけると転ばないようにしっかりと支えた。


 「ガッチリとしているけれど、最近大きくなったろ。自分の力を把握しきれていない」


 「最近初陣だったんですよ」


 「それはご苦労だったな」


 オーバースウェイの中、青年はニコラスに抱かれて自分の頬が赤くなってる事に気付いた。


 「良い踊りだった。きっと君は上手くなるよ」


 「有難うございます、ニコラス王子」


 互いに礼をしてダンスを終わらせる。


 「ニコラス王子、私とも踊って頂けませんか?」


 「構わないよ」


 その後ニコラスは数人の女と踊った。だが内心、先ほどの青年と踊って振り回されてた時が一番面白かったなと思っていた。

 しばらくして大扉から一団が入ってくる。

 そして一団を確認した王子や大公爵達はそそくさと一団の中心にいる人物に向かって跪いた。


 「顔を上げて」


 一団の長、翡翠のドレスで着飾ったカテリーナ・イエラヴナは短くそう言った。そしてカテリーナはしゃがみ、アレクサンドルの耳元で囁いた。


 「サーシャ、ごめんね。でも愛してるから」


 「突然なんですか?母上」


 静かな会話の後、カテリーナはニコラスと目を合わせて確認をする。


 「母上、私は母上に問わねばならぬ事があります」


 ニコラスが立ち上がり、大仰に手を振りながら演説をするように語り始めた。


 「そしてそれは皆様方にも話しておかねばならないかもしれません」


 貴族達の目はニコラスに集中する。彼もそれを感じ取ったのか、ゆっくりと懐から手帳を取り出し、全員に見えるように掲げた。


 「母上、これは貴方とラスアジィンニコフとの交換日記、我が父魔王カノンノフに対する不義理の記録になります。これにお間違いありませんね?」


 「間違いないわ」


 あっさりと認めた王妃の態度に貴族連中、引いては王妃の子であるアレクサンドルですら顔を顰めた。


 「では1845年の7月4日から12月18日の記録、つまりアレクサンドルが我が父カノンノフの子ではなくラスアジィンニコフの子であるという記載も真実であるという事でお間違いありませんね?」


 音楽すらも止まり宴は完全に停止する。まるで裁判所のような静けさとなった。

 ふと、アレクサンドルは隣でヨセフの顔を見た。跪いたままの男の顔は眠ったように目を瞑っており、目の前の異常事態に対して何の疑問にも思っていなかった。


 「ヨセフ…お前」


 「どうしたんです?アレクサンドル」


 アレクサンドルは主犯であるニコラスよりも共犯のヨセフを恨んだ。何故なら自分とニコラスがカテリーナの子であるように、ヨセフが魔王カノンノフの子供である事を知っていたからだ。


 「…間違いないわ。その記録は正しい」


 会場が響めく。されど誰も言葉を発さなかった。何故なら記録の正しさが表す事象は一つしかなかったのだから。


 「その言葉、継承法に従いアレクサンドル・"カテリノヴナ"・ラスアジィンニコフの王位継承権について、幾つか宮廷裁判所にて確認せればならない点が発生する、それを分かっていてのお言葉でしょうか?」


 ニコラスは敢えて父称を強調した。それは貴族達にカノンノフの息子ではないとわからせる為であったし、自分の兄の為でもあった。


 「私は王妃として自らの罪に向き合おうとしている。故に今の私に嘘はない」


 毅然とした態度で罪を認める態度に会場の時間が止まった。ただ呼吸と心臓の音だけ鳴っている。

 ニコラスは猫の血を持ってして耳に全神経を注いだ。そして呼吸と心臓が重なる時、彼は時を進める。


 「では後ほど、貴方の罪とアレクサンドル王家継承権につきましては宮廷裁判所においてはっきりと付けさせてさせていただきます。そうでなければ、父上が浮かばれません」


 沈黙の中で考えていた人達に答えを提示してこの問題の悪役と結論をやんわりと決定付ける。

 宴は静まり返り、もう誰も楽しむ気分ではなかった。よってその後は流れの解散になった。

 そして二週間後に宮廷裁判が開かれる事になる。

クソキモい奴大好きで絶対に入れるようにしてて、今作はなんかアレクサンドルに集中し過ぎてるので解決としてちょっとキモい奴増えるかもです

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