俺が俺であった頃
右手にエコバッグ、左手にスマホ。肩から鞄をかけて寒さ対策も万全‥‥ぽっかぽかに全身が火照ったままの俺は今日、本屋まで少し遠出をしていた。
遡ること三日前、その日は俺がこっそり愛読している♡少女漫画♡の新作が出ためでたい日だったのだが、生憎の地方在住の身の為に泣く泣く、こうして数日遅れかつ生活圏から離れた本屋までわざわざ足を運んでいたという顛末である。
「ほぅ‥‥‥♡」
甘い吐息が喉から零れ落ちる。
いつのまにやら俺の左手はスマホではなく、若い女子に人気のカフェ、ズデバの新作お芋フラペチーノが握られていた。いつの間に!まあ、それは些細なことで。
ずゾゾッ‥‥ずゾゾッ‥‥と成人男性には決して許されない汚らしい音を放ちつつ、五感を総動員してお芋のクリーミーな味を楽しむ。今年の新作もおいしい〜!これには俺のハートもメロメロ。補足情報として、俺はお芋が大の好物である。コソリ。いつか石油王のヒモになっておいし〜いお芋をたくさん貪り食うのが俺の夢なんだ!
いい歳した成人男性が一人でにキャッキャと楽しんでいたからだろうか。バチでも当たったのか、周りが一際騒がしくなる。何事かと不安に思うも、皆俺を遠巻きにして、なにか化け物でも見たかのように怯えた顔を_____ドガガッガーッ!!
轟音。衝撃。暗転。後、違和感。
頭が軽い、ような気がする。何だか右頬が冷たくて、あれ、左手にギュッと握りしめてたお芋フラペチーノが地面に落ちて、無惨な姿になっている‥‥‥。食べ物をお粗末にするなんて大罪なのに、まさかの自分が犯した現実を受け入れられず、しばし唖然とする。そ、そんな‥‥‥まだ全然、飲めてなかったんだぞ。ほら、お芋の濃厚な味がするクリームだって、まだタップリ‥‥!
あれ?何か、クリームに赤色が混じってる。あれ?あか色なんて入ってたっけ‥‥。あれ。もしかして皮まで余さず入れてるタイプだったって、コト‥‥?あれ。ズダバさんやるゥ〜。あれ。僕は信じてましたよ!あれ。あれ。あれ。
これ、なん‥で、地面が縦に見えて‥‥だろ‥、な‥‥で‥‥‥‥‥‥。
『 ピロロロリン☆ 転生権限を得ました:女神の間にお連れいたします☆ 』




