83 ここから本当の異世界が始まる
太陽が首都の上に昇り始めた。
通りは金色の光に浴していた。
誰かにとっては、ただの日常。
だが、召喚された者たちには――試練の始まりだ。
城の門前には、数十人の武装した騎士たちが待ち構えていた。
その中心に、ラグノルドが立っていた。
まるで岩のような存在感。
彼の鎧はキラキラと輝き、背中の剣は空気さえ切り裂けそうだった。
「さあ、こい。」
ラグノルドが短く言い放つ。
若者たちを鋭い目で見据えた。
少年たちはチラチラと視線を交わす。
手が震えるのを隠す者もいた。
無理に笑顔を張り付けて、勇敢ぶる者も。
少女たちは装備をチェック。
ポーションの入ったバッグを点検する。
空気はピリピリしていた。
でも、どこか興奮が漂っていた。
ラグノルドの重い視線が全員を貫く。
「今日、お前たちはダンジョンに足を踏み入れる。」
「そこにふかふかのベッドはない。」
「ヒントをくれる教師もいない。」
「あるのは、お前たちの選択――」
「そして、ミスの代償だけだ。」
彼の言葉は、冷たい金属の響きだった。
「だが、怖がるな。」
「あのダンジョンは初心者の第一歩のために作られた。
そこにいるモンスターは、たいして強くない。
連携して、指示を聞けば、生きて帰れる。」
ラグノルドは一瞬、言葉を切った。
そして、こう付け加えた。
「だが、ヒーロー気取りで突っ走ったら……そこに永遠に残ることになるぞ。」
その言葉の後に、静寂が広がった。
まるで全員の心に突き刺さるようだった。
「今日、俺が直接率いる。」
ラグノルドが続ける。
「よく見て、覚えろ。学べ。
いつか、俺はお前たちの隣にはいないんだからな。」
彼のそばで、騎士たちが補給用の箱を開けた。
ポーション、地図、松明。
グループの者たちは互いに顔を見合わせた。
これが、真実の瞬間だ。
皆の胸の奥で、何かが燃え上がった。
彼らは本当に、引き返せない道に踏み出すのだ。
そんな確信が、心を満たした。
この物語を「少しでも面白い」と思ったら、
どうかブックマークしてください。
一つのブックマークは、
作者にとって大きな灯りになります。




