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【EXTRA】殺したのは俺…それでも立つ日

騎士の家は、夕暮れの薄暗さの中で静まり返っていた。


少し開いた扉の向こうから、かすかな嗚咽が聞こえる。


玄関には、亡くなった騎士の母と彼の恋人が立っていた。


二人とも膝をつき、肩を震わせて泣いている。


恋人はまだショックから立ち直れていなかった。


あの日の出来事が心に空白を残す――

殺した犯人の顔すら思い出せない。


ラグノルドと騎士団、そしてナギがゆっくり近づく。


「参った……哀悼の意を伝えに来た」

ラグノルドは平らな声で、しかし重みを込めて言った。


母親は頭を上げる。

皺を伝う涙。


「なぜ……なぜこんなに残酷に……」

声は震え、絶望に揺れていた。


「息子は正直で……正義感のある子だった……」

「こんな目に遭うなんて、ふさわしくないのに……!」


ナギは隣に立ち、胸がぎゅっと締め付けられる。


女性の一言一言、嗚咽の一つひとつが、胸にナイフを突き刺すようだった。


――彼はいい人だった……

俺は……殺した……

なんで……?


ナギは視線をそらせない。


騎士の恋人は階段に腰を下ろす。

肩を震わせ、目は虚ろだった。


「彼は……一番正直で、一番強かった……」

震える声で、かすかに囁く。


「どうして……どうしてこんなことに……!」


ナギは拳を握る。

手の中の後悔は、かつて自分が使ったあの石のように重い。


――もし、戻せるなら……

思いはもがくが、どうにもならない。


ラグノルドがナギの肩に手を置く。

彼の心の葛藤を感じ取りながらも、隣に立つ者が殺人者だとは気づいていない。


「時には……こんな現実も見なければならん」

静かに、でも力強く。


「だが、お前の力は……

時に、崩れゆく世界の中でも、隣に立ち続けることにある」


ナギは頷き、母と恋人を見つめる。


理解した――

本当の罪は、手で行ったことだけではない。

心の奥に残るもの――

消せない痛み、それが罪なのだ、と。

次の一歩を見逃さないために。

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