81 エクストラ — 「友として」
時々、考えるんだ。
「人のそばにいる」って、本当はどういう意味なんだろうって。
ナギはいつも窓際の一番後ろに座っていた。
遠くを見てるような顔。
疲れきったような目。
先生は、まるで彼がいないみたいに授業を続ける。
クラスメイトも同じ。
誰も彼に声をかけない。
……でも、なぜか俺だけは気になって仕方なかった。
手を伸ばしたくなる。理由なんてないのに。
ある日、ナギは財布を忘れて昼飯が食えなかった。
「別に腹なんか減ってない」って顔をしてたけど、
見てればすぐわかる。嘘だって。
俺は食券を差し出した。
「……ほら、使えよ」
ナギはしばらく固まってた。
それから、ゆっくり手を伸ばして、
小さな声で言った。
「……ありがとう。必ず返す」
次の日。
本当に返してきた。
くしゃくしゃの千円札と、ジャラジャラした小銭で。
一円も間違えずに。
その瞬間、俺は気づいたんだ。
――ナギは、約束を守る人間だって。
それから、俺たちはよく一緒に帰るようになった。
言葉なんてなくても並んで歩く時もあれば、
くだらない話――マンガとか、ゲームとか、テストのこととか――で盛り上がる時もあった。
たまにナギが真面目な話をしだすこともある。
そのたびに思うんだ。
――この人、世界の見方が他の誰とも違うって。
周りは笑ってた。
「地味だ」とか「灰色」だとか。
でも俺にはそう見えなかった。
むしろ……夜みたいに深い。
そう感じた。
これから何があるのかは、わからない。
でも一つだけはっきりしてる。
たとえクラス全員が背を向けても、俺は背を向けない。
だってナギは――友達だから。
それだけで十分。
俺は、隣を歩ける。
年月が流れた。
俺たちは高校を卒業して、大学に進んだ。
それでも、帰り道は変わらない。
並んで歩く。
昔と同じように。
……思うんだ。
友情って、結局それがすべてなんじゃないかって。
いい友達を見つけること。
今の時代、それがどれだけ貴重で、どれだけ難しいか。
ナギと出会えたことは、俺にとって――宝物だ。
次の一歩を見逃さないために。
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