表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/135

エクストラ章:雨の中の告白 — 忘れられない5分

曇り空。

空気は雨の匂いを帯びていた。


ナギは手に花の袋を握っていた。

最後の小銭で買った、控えめな花束。

胸の奥で、心臓が破れそうなくらいに打っている。


「よし……今日、言うんだ。言うだけ……」


ゆっくり歩く。

一歩一歩、足が重い。


遠くに見えたのは――見慣れた姿。

ミズキだ。

笑っている。

その笑顔の光に、胸がぎゅっとなる。


でも隣にいるのはレタ――幼馴染のあの友達――

二人は抱き合っていた。


ナギは立ち止まった。

息もできないくらいに。

胸が締め付けられ、目に熱がこみ上げる。


「来たのに……彼女は……あの人と……」


ナギは花を強く握りしめた。

細かい雨が手に落ち、痛みの冷たさと混ざる。


一歩、前に出る。

けれど、声が裏切るように震えた。


「ミズキ……」


彼女が振り向く。

目に驚きと、少しの喜びが光った。


「ナギ! 花……持ってるの?」


ナギは息を吐き、喉の詰まりを飲み込む。

無理やり笑おうとする。


「俺……言いたかったんだ……」


でも言葉は出ない。

目に飛び込む、再びリョウタと抱き合う二人の姿。


涙が目を覆う。

胸が引き裂かれるように痛い。

言葉は間に合わない。


「俺……いい……」

そう呟き、花を下ろす。

手は震え、息が詰まる。


ミズキが近づく。

ナギの混乱を見て、優しく声をかける。


「ナギ……どうしたの?」


でもナギは首を振るだけ。

何も言えず、そのまま去った。

次の一歩を見逃さないために。

ブックマークして、物語を追いかけろ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ