エクストラ章:ナギの心を繋ぐ絆――ユージの差し伸べた手
授業が終わって、二人は外に出た。
ナギは黙って、視線をどこかに逸らす。
ユージはすぐに気づいた。なんか変だな、と。
「で? また何があった?」
ユージが軽く訊ねる。
「…お前の知ったことか。」
ナギがピシャリと言う。
でも、声が少し震えた。
ユージは目を細める。
「毎回それ言うよな。でも、俺、結局知っちゃうぜ?」
ナギは言葉に詰まる。
ポケットは空っぽ。
家に帰っても、金なんてない。
何か言おうとしたけど、言葉が喉に引っかかった。
ユージは黙って財布を取り出す。
数枚の紙幣をナギに差し出す。
「ほら。取れよ。グダグダ言うな。」
「…返すからな。」
「わかってるよ。」
ユージがニヤッと笑う。
「ま、返さなくても俺、困らねえけどな。」
ナギは一瞬、固まる。
こんなの初めてじゃない。
でも、毎回、心がギュッと締め付けられる。
こいつ…なんで必要か、なんて訊かない。
ただ、信じてくれるんだ…。
「ユージ。」
ナギが小さくつぶやく。
「ん? なんだよ?」
「バカだな、お前。」
「ハッ! 今さら気づいたか?」
二人は同時に笑い出す。
まるでさっきの重い空気が、消えてなくなったみたいに。
ナギは思う。
誰かにとっては、こんなの些細なことかもしれない。
でも、こういう小さな瞬間にこそ、本物がある。
質問もせず、ただ手を差し伸べてくれる友達——それがユージだ。




