70 「街の喧騒と潜む影！英雄への第一歩」
太陽の光が目を刺した。
訓練場の重い門が開く。
訓練生たちは一瞬、動きを止めた。
初日のような迷いはもうない。
目の前に都市が広がる。
朝の雨で濡れた石畳がきらめく。
焼き肉と焼きたてパンの匂いが漂う。
商人たちが声を張り上げ、客を呼ぶ。
「…うわっ！」
桜が胸に手を当て、息を吐いた。
「本物の中世都市だ！」
「本物の市場！」
ユウジの目がキラキラ輝く。
「よし、酒場を探しに行くぞ！ 誰か一緒に行くか？！」
「その金袋、1日で使い切るなよ。」
ミズキが髪を直しながら呟く。
「いや、1時間で、かな。」
「ハッ！ 何！？」
ユウジがムッとした。
「俺には支出の戦略があるんだから！」
「戦略？」
桜が吹き出した。
「ビール3杯買って満足するだけだろ。」
リョウタは黙って歩く。
だが、目は鋭い。
市民、露店、喧騒の通りをじっと見つめる。
金袋を、まるで武器のように握りしめる。
「金か… この世界じゃ、そいつがものを言う。
でも、隊長が言ってた。
資源がすべてじゃない。
大事なのは、諦めないこと。チャンスを逃さないことだ。」
ナギは門の前で最後まで立ち尽くした。
都市の空気を吸い込む。
まるで初めて自由の味を感じたかのように。
だが、胸には空虚が広がる。
彼はゆっくりと皆を追いかける。
まるで周囲すべてが現実離れしているかのように。
「よお、ナギ！」
五十が手を振って叫んだ。
「何ボーッとしてんだ？ 早く来いよ！」
ナギはハッとして、
渋々皆に追いついた。
群衆は騒ぎ、笑い、呼びかける。
すべてが、まるで普通のようだ。
ほぼ、普通。
だが、一瞬だけ、
路地に暗い影がちらついた気がした。
ただの通行人にしては、動きがなさすぎる。
あまりにも、じっと見つめている。
ナギは瞬きした。
影は消えていた。
桜
桜は真っ先に飾り物の露店に飛びついた。
目が輝く。まるで祭りの子どものようだ。
「うわぁ、手作りだ！」
小さな石がついたブレスレットを手に取り、興奮して叫ぶ。
「いくら？」
彼女は女商人に尋ねた。
「銀貨2枚だよ。」
桜が固まる。
「…え、えっと… 値引きとか…？ 私、新人なんで…」
女商人は笑うだけ。
後ろで、街の誰かが囁いた。
「観光客か…」
ユウジ
その頃、ユウジはすでに酒場を見つけていた。
「これだ！」
彼は勢いよく中へ飛び込む。
1分後、テーブルに座る。
目の前には、泡立つ巨大なエールのジョッキ。
「もう一つの世界の本物のビール！ 新しい人生のレベルアップに乾杯！」
豪快に一口飲む。
即座にむせる。
「苦っ！ なんだこれ！？」
隣の騎士が背中をバシンと叩く。
「まだ若いな！ 慣れるさ！」
酒場全体が笑い声で揺れた。
五十嵐 勇斗
五十嵐 勇斗は武器の露店で足を止めた。
視線がショーケースに突き刺さる。
そこには、質素だが手入れされた剣が並ぶ。
「本物の鉄…」
彼は囁いた。
「訓練用の木剣じゃない。戦うための剣だ。」
手を伸ばす。
だが、すぐに引っ込める。
「いや…まだ早い。」
その瞬間、年老いた商人が口を開いた。
「その目は知ってるよ。私も子供の頃、剣をそうやって見た。焦るな。時が来る。」
ユウトは頷き、拳を握りしめた。
ミズキ
ミズキは服屋に入り、鏡の前で立ち尽くした。
「え…これ、ほんとに着るの？」
軽い革の装備を訝しげに見つめる。
「コスプレみたいじゃん…」
店員の女性が微笑む。
「若いお嬢さん、これを着れば素敵よ。」
ミズキの顔が赤くなる。
視線を上げると、
二人の騎士の若者がこちらを見ていた。
「……素敵、ね…」
彼女は呟き、顔をさらに赤らめた。
リョウタ
リョウタは酒場にも市場にも行かなかった。
書店の前に立ち止まる。
そこでは老いた魔法使いが巻物を売っていた。
「これは…知識？」
リョウタが尋ねる。
「その通り。」
魔法使いが鋭い目で彼を見つめる。
「だが、知識には常に代償がある。金で済むこともあれば…それ以上のことも。」
リョウタは金袋を握りしめ、静かに答えた。
「準備はできてる。」
ナギ
ナギは目的もなく街を歩いた。
金袋はチリンチリンと鳴る。
だが、彼は一度も開けなかった。
市場の喧騒、仲間たちの笑い声。
すべてが遠く感じる。
そして、突然――
また感じた。
路地の影。
今度はすぐ消えなかった。
じっと動かず、まるで待っているかのようだ。
ナギが一歩踏み出す。
「ナギ！」
サクラが手を振って叫んだ。
「こっち来て！ このペンダント見てよ！」
ナギが振り返る。
「街の輝きに隠れる闇！
仲間たちの笑顔と謎の影――次は何が待つ？
今すぐ読み進めて、運命の第一歩を踏み出せ！」
