67 くそくらえ、世界
ナギは膝をついた。
頬を涙が伝う。
言葉は出てこない。
剣は手に握られたまま、まるでその瞬間の重さを理解するように震えた。
ラグノルドはそばに腰を下ろした。
その目は冷たいが、残酷ではない。
彼はナギの肩にそっと手を置いた。
「なあ、ナギ…」
静かに、ほとんど囁くように。
「金や資源、師匠がいる奴がいる…」
「それが全てじゃない。」
「大事なのは、絶対に諦めないことだ。」
「絶対にな。」
ナギは目を上げた。
息が乱れる。
言葉が途切れた。
「お前には分からない…」
嗄れた声で呟く。
「俺はずっと…何者でもなかった。」
「持ってたのは空腹、汗まみれの仕事、爪の間の汚れ…」
「そして、修理もできない壊れた電話だけだ。」
ラグノルドは小さく微笑んだ。
「それで?」
静かに尋ねる。
「それがお前を壊したと思うか?」
ナギは息を吐いた。
「いや…」
「それは…俺を強くした…」
「その通りだ。」
ラグノルドは頷いた。
「俺もただの平民だった。何者でもなかった。」
「剣も、金も、なおさらだ。だが、俺は生き延びた。」
「今ここで、国の騎士団長として立っている。」
「俺にできたんだ。お前にもできる。」
ナギは剣を強く握りしめた。
指の関節が白くなるほど。
周囲の闇のエネルギーが再び蠢き始めた。
だが、今度は――制御されている。
「俺は…」
ナギの言葉が喉に詰まる。
「俺は…」
もう一度、息を吸い込む。
「もう誰も…資源があったからってだけで俺より上に立たせない!」
「少なくとも、やってみる!」
ラグノルドは静かに頷いた。
「その通りだ。」
低い声で告げる。
「絶対に諦めるな、ナギ。絶対に。」
突然、背後で鈍い音が響いた。
地下室の扉が小さく軋む。
ナギは振り返った。
闇のエネルギーが、心の揺れを映すように震えた。
影の中に人影が立っていた。
ナギは悟った。
これは終わりじゃない。
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