65 「聖王国の闇の鼓動」
金属の鈍い音が静寂を切り裂いた。
暗闇の中で剣が交錯した。
火花が一瞬閃き、冷たい空気に溶けた。
地下室は一撃ごとに重く響いた。
まるで壁自体が戦いの証人になったかのよう。
ナギは汗だくで後ずさった。
手は震え、息は乱れた。
でも、目は燃えていた。
倒れることを許さなかった。
目の前にはラグノルド隊長。
動かぬ山のように立っていた。
彼の剣は完璧だった。鋭く、無慈悲。
まるで相手が生徒ではなく敵そのものであるかのように。
「遅すぎる!」
ラグノルドが一撃を弾きながら唸った。
「その振り方は子供のものだ。」
「剣の一撃は相手を懇願させるんじゃない。処刑するんだ!」
剣が再びぶつかり合った。
金属音が耳をつんざいた。
まるでハンマーが鉄床を叩くように。
ナギは歯を食いしばった。
猛然と前に飛び出した。
鈍い衝撃音。
ナギの剣が手から弾け飛び、壁にガシャンと叩きつけられた。
ラグノルドは微動だにしなかった。
その視線は重く、胸を押し潰す重石のようだった。
「見ろよ。」
彼は低く呟いた。
「お前はまるで自分の剣を恐れているみたいに戦う。」
「そんな戦い方じゃダメだ。」
ナギはよろめきながら剣を拾い上げた。
指はしびれて震えていた。
「俺…! 俺、頑張ってるんだ!」
掠れた声で叫んだ。
「頑張ってる?」
ラグノルドは首を傾け、声に嘲笑が滲んだ。
「戦場で『頑張った』なんて誰も気にしない。」
「そこで大事なのは二つだけだ。殺すか、殺されるか。それだけだ。」
ラグノルドが一歩踏み出した。
ナギは本能的に後ずさった。
まるで追い詰められた獣のようだった。
「お前は守ろうとしてる。閉じこもって、避けてばかりだ。」
ラグノルドはナギの胸を指で突いた。
「だが、守るだけで戦争は勝てない。」
「敵は必ず隙を見つける。必ずだ。」
ナギは黙り込んだ。
胸の奥で、何か頑固なものが燃え始めた。
「なら、なんで…」
彼は顔を上げ、剣の柄を強く握った。
「なんで俺にそんなこと言うんだ?」
「なんで俺を、まるで殺し屋にでもするみたいに鍛えるんだ?」
一瞬、ラグノルドの目に影がよぎった。
厳しい表情が、わずかに揺らいだ。
「それはな、いつかお前に選択の余地がなくなる日が来るからだ、ガキ。」
彼は静かに、ほとんど囁くように言った。
「その日、またお前が怯んだら、誰も救えない。」
「自分も。戦う理由である誰かも。」
沈黙が二人を包んだ。
ナギの荒い息遣いだけが響く。
手の中で震える剣の微かな金属音。
それが地下室の闇を切り裂いた。
ラグノルドは再び一撃を弾き返した。
ナギの剣を押し退け、一歩踏み込む。
その言葉はナギの顔に叩きつけるようだった。
「お前自身を見ろ…そしてリョウタを。」
「あいつの剣さばきは、まるで金属がその呼吸に合わせて動いてるようだ。」
「だがお前は? 骨を投げられた腹ペコの犬みたいに振り回すだけだ。」
ナギの胸の中で、何かがぷつんと切れた。
唇が歪み、手が震える。
「いつもアイツか…」
彼は吐き出すように呟いた。
声はすでに怒りで震えていた。
「いつも、クソくらえ、アイツばっかりだ!!!」
ナギの目が血走った。
次の瞬間、暗いエネルギーが体から溢れ出す。
まるで憎しみそのものが噴き出したかのよう。
地下室の空気が震えた。
ナギは一気に飛び出した。
剣を振り下ろす。
一撃。
また一撃。
どれも前より強烈だった。
金属が鳴り響く。
叫び声で壁が震えた。
「全部持ってるヤツが一番になるなんて簡単だろ!!!」
ナギは歯を食いしばり、叫ぶ。
ラグノルドの守りを何度も叩いた。
「時間!」
「資源!」
「指導者!」
――また一撃。
「俺はネズミみてえに生きてきた!」
――一撃。
「明日まで生きるためにクズみたいなもん食ってたんだ!!!」
剣が空気を切り裂く。
ラグノルドの鋼とぶつかり、火花が散った。
それでも、隊長は岩の壁のように立ち尽くしていた。
だが、その目に光ったものがある。
嘲笑でも、軽蔑でもない。
――敬意の輝きだった。
ナギの剣が再び打ち下ろされる。
地下室に轟音が響いた。
まるで壁が闇の力に耐えきれなかったかのよう。
ラグノルドはその一撃を防いだ。
その瞬間、唇がわずかに震える。
ナギが聞き逃しそうなほど小さな声で呟いた。
「これが…お前の本当の力か。」
その刹那。
地下室の重厚な扉が――ガシャンと開いた。
そこに一つの人影が立っていた。
その目は細められる。
ナギの周囲で膨れ上がる黒いエネルギーを見た瞬間。
それが彼の体を包み込んでいた。
「これは…何をしたんだ?」
冷たい声が響いた。
おおお、みんな!
この戦いの熱、感じたか!?
ナギの怒りと剣の火花、ドキドキしただろ?
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ラグノルドのあの言葉、ズシンときた?
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