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62 闇の覚醒:ナギの反逆

アリーナは静寂に飲み込まれた。

ナギの訓練剣が地面に落ちる。

キンッと甲高い音が響いた。


「拾え。」


ラグノルドの声は鋭い。

まるで戦場を切り裂く命令だ。


「一人の生徒に勝ったくらいで、訓練サボっていいなんて思うなよ。」

彼の言葉が空気を震わせる。

「忘れな。ここに英雄なんかいねえ。」


「いるのは兵士だけだ。」

「規律ってやつは、みんなくそくらえ平等なんだよ!」


その言葉が学生たちの耳にガツンと響く。

何人かは目を伏せた。

誰かはゴクッと唾を飲む。


ナギはギリッと歯を食いしばる。

ゆっくりと剣を拾い上げる。


数十の視線が彼に突き刺さる。

まるで矢のように鋭く。


心臓がバクバクと脈打つ。

胸を突き破りそうな勢いだ。


(ちくしょう…この剣、そもそもどうやって持つんだよ!)


隊長が一歩前に出る。

その姿は山のようだ。

鍛え上げられた筋肉が、経験と力を物語る。


「準備はいいか?」


隊長の声は冷たい。

一切の同情を拒むように響く。


ナギはニヤリと笑みを浮かべようとする。

「まぁ…今日、ぶっ飛ばされるのはどっちかな?」


「ハッ、生意気な口だな。」

隊長がニヤリと笑う。

「同じ新人と勝負して勝ったくらいでいい気になるなよ、ガキ。」


「その根性、どこまで持つか見てやるよ。」


隊長が先に動く。

素早く、機械のように正確な上からの一撃。


ナギは剣を振り上げる。

金属音がアリーナに響き渡る。


その衝撃で腕がガクガクと震えた。

「うっ!」


ナギは歯を食いしばる。

なんとか踏みとどまる。


「ふん、酔っ払いにしては反応悪くねえな。」

ラグノルドが嘲るように笑った。

「だが、反応だけで勝負は勝てねえぞ!」


二撃目。

三撃目。


ナギは剣で受け止める。

だが、足は地面を滑り、今にも倒れそうだった。


観客たちは息をのんだ。

リョウタでさえ目を大きく見開く。

ついさっき敗北の屈辱を味わった彼女も、驚きを隠せない。


(こいつ、戦い方なんて知らねえ…なのに、持ちこたえてる。)

(意地だけで!)


「意地っ張りか?」


ラグノルドが一歩下がる。

ナギに一瞬の息継ぎを許した。


「いいぜ。」

「そのバカみたいな意地、汗と血で叩き潰してやる。」


隊長が再び突進する。


ナギは膝からガクッと崩れ落ちる。

肺が燃えるように息を荒々しく吸う。


剣が手のひらから滑り落ちた。

キンッと音を立てて、アリーナの地面に落ちる。


ラグノルド隊長は剣を下げる。

だが、鞘に収める気配はない。


その冷たく厳しい目がナギを見据える。


「立て。」


その声は鋼のハンマーのようだ。


「一人のスパーリング相手に勝ったくらいで、自分が特別だと思うか?」


ナギは顔を上げる。

その視線は震えていた。


「間違いだ。」


隊長が一歩近づく。

言葉が重く響く。


「ここに幻想の居場所はねえ。」

「規律――それが戦士を作るんだ。」


「もしそれを受け入れられないなら…」

「英雄の仲間に入る資格はねえ。」


ラグノルドは鋭く顎を振る。

脇でまだ息を整えるリョウタを示した。


「そいつを見ろ。お前の手本だ。」


その言葉は刃よりも深い。

ナギの胸を突き刺した。


ナギの心臓が締め付けられる。

まるで鉄の万力に握られたようだ。


内側で何かがバキッと折れた。

かつて地球で浴せられた言葉が蘇る。


「なぜお前はあいつのようになれない?」


教師、隣人、人生そのものからの言葉。

そして今…まただ。


「リョウタ…」


ナギの唇が震える。

「いつも…あいつか。」


万力がガシャンと弾けた。

胸の奥から黒い重い何かが迸る。


アリーナの空気が揺らめく。

熱気のように、粘つく闇に沈んだ。


ナギから影が溢れ出す。

痛み、嫉妬、怒りが形を成したようだ。


髪がわずかに浮き上がる。

瞳が暗い紫の光で燃えた。


「…!」


ラグノルドの笑みが消える。

重い気配が胸を圧迫した。


「暗黒のエネルギー…?」


リョウタは顔を青ざめさせる。

後ずさり、凍りつくような恐怖を感じる。


ナギは膝をついたまま顔を上げる。

痛みと狂気で歪んだ表情。


「もう…いい。」


彼の声はうなり声のようだ。


「もう誰の影にも…立たねえ。」

「もう誰の影にも…立たねえ。」


ナギの闇が目覚めた!


この戦いはどうなる?


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