46 「冷たい質問、決意の言葉」
ロリエルは膝の上で拳を握りしめた。声が震えていた。恐れからではなく――驚きからだった。
「あなた……痛みを感じないの?」
彼女は静かに尋ねた。
「私が話したすべて……少しでも、同情の言葉とか……」
ナギはゆっくり彼女を見た。冷たく、感情の欠片もなく。顔の筋肉ひとつ動かさない。慈悲も、恐怖も、何も表れなかった。
「聞いたよ。」
彼の声は平坦で、ほとんど乾いていた。
「でも、そんなの関係ない。」
ロリエルはため息をつき、力なく頭を垂れた。彼女は少しでも温かくなる反応を期待していた。空虚にぶつかっただけだった。
「じゃあ……あなたにとっては、ただの……情報?」
彼女は苦しげに囁いた。
ナギはまばたきもせず、頷いた。
「情報が必要だ。もっと詳しく。」
彼の言葉が冷たく響く。
「誰が襲った? なぜ人間がお前の種族を滅ぼした? どんな対立があった? 動機は?」
ロリエルは一瞬、言葉を失った。誰も、こんな詳細を聞いてこなかった。人間たちはただ壊し、使い、奪うだけだった。
なのに今、酒場の冷たい男が質問を投げかけてくる。
「彼らは……」
彼女は言葉を選びながら話し始めた。
「王国の騎士だった。でも、ただの兵士じゃない……その指揮官が、私たちの種族を滅ぼそうとした。私たちを脅威だと考えていたから。」
ナギは腕を組み、わずかに身を乗り出した。視線がさらに鋭く、探るように彼女を貫いた。
「どんな脅威だ? 政治的なものか、魔法的なものか、個人的な恨みか?」
問い詰めるような口調だ。
「どうやってそうなった? 一つずつ、順を追って話せ。全部知りたい。」
ロリエルは背筋に冷たいものが走るのを感じた。心の奥で何かが揺らいだ。同情を期待していたのに、代わりに恐怖が芽生えた。
だが同時に、彼女は理解していた。彼に状況をわかってもらうためには。ひょっとしたら助けを得るためには。
すべてを最後まで話さなければならない。
「わかった……」
彼女は静かに言った。気力を振り絞って。
「全部、話すよ。」
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これからも、リアレルとナギの旅を描いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。




