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45 「エルフの少女が見た地獄」

ロリエルは長い間、黙っていた。

手に持ったスプーンはそのまま、動かなかった。

瞳に揺らぎが走った――恐れではなく、記憶の奥底から引きずり出した何かによるものだった。


「私が……あの檻にいた理由を知りたいの?」

彼女の声は低く、まるで廃教会に吹く風の断片のようだった。

「いいよ。聞いて。」


彼女は一瞬、目を閉じた。


「私たちは森の外れに住んでいた。

小さすぎて、すべてをはっきり覚えているわけじゃない。

でも、木が燃える匂い……あれは絶対に忘れられない。


夜、人間たちが来た。

笑いながら、叫びながら、家を焼いた。

母は私の耳を塞いでくれたけど……その後の叫び声。」


声が震えたが、ロリエルは自分を崩さなかった。

「彼女の体に剣が刺さるのを見た。

素早く終わらせることさえしなかった。」


ロリエルの指がスプーンを強く握り、わずかに震えた。


「父は広場で吊るされた。

息がある間、ずっと殴られ続けた。

叫べなくなって、ようやく放り出された。


知ってる? 一番汚いのはね、子どもたちにそれを見せたこと。

『覚えておけ、野蛮人』って、そう言ってた。」


ロリエルの瞳が光った。

涙ではなく――空虚さで。


「それから『売り物』が始まった。

私、幼かったけど、男たちの目はもう私を品物のように見ていた。


年上の子たちが連れていかれた。

戻ってきた子もいた――壊れた体で。

戻らなかった子も……いた。


そして私、彼らは『大事に』した。

『その顔は高く売れる』って。」


彼女は一瞬、言葉を止めた。

肩の震えだけが、彼女がまだ生きていること、石ではないことを示していた。


「私たち、彼らには生き物じゃなかった。

ただの肉。遊び道具。

人間って、そういうもの。」


最後の「人間」という言葉は、ねっとりとした憎しみに満ち、

まるで部屋の壁まで暗く染めるようだった。


ロリエルはナギを見上げた。

初めて、彼女の瞳はまるで底なしの深淵のようだった。


「それで、私は檻にたどり着いた。」


ロリエルは深く息を吸い込んだ。

まるで、腐った傷口の最後の包帯を剥がす決意をしたかのように。


「檻が最悪だったと思う? 違う。

それからが本当の地獄だった。


私が折れなかったと知ったとき――」

彼女の唇が皮肉な笑みを浮かべた。

そこに喜びはなかった。


「彼らにとって、それは……挑戦だった。」


彼女はスプーンを置き、ゆっくりと肩に触れた。

まるで、今もそこに痛みが残っているかのように。


「彼らは試した。

エルフはどれだけの痛みに耐えられるか?

どれだけの叫び声を上げられるか?


鞭で打ち、熱した鉄で焼いた……

でも、それは処刑のためじゃない。

見世物だった。


人々は輪になって集まり、まるで祭りみたいに。

拍手して、笑って、賭けまでしてた。」


ロリエルは歯を食いしばり、声が低くなった。


「それから、オークションがあった。

女も、子どもも……私たちが出された。


私より幼い女の子が、母を解放してと懇願するのを見た。

買った人間が何をしたと思う?

母と娘、両方を連れていった。

『どっちが先に壊れるか、楽しみだ』って。」


ロリエルは黙り、息が重くなった。

だが、瞳は冷たく凍ったままだった。


「時々、『使われた』者を連れ戻してきた。

私たちに見せつけるためだ。

エルフが人間の手にかかるとどうなるか――見せつけるため。


狂った者もいた。

黙って虚空を見つめる者もいた。

まるで魂がもう存在しないかのように。」


ロリエルの唇に震える笑みが浮かんだ――

狂気じみて、歪んだ笑み。


「私は商品だった。

私の命を値踏みする声が聞こえた。

『こいつは大金になる』

『いや、主人のために取っておこう。抵抗する奴が好きなんだ、あいつは』って。」


彼女はナギを見上げた。


「すぐには殺さなかった。

希望がゆっくり死んでいくのを見る方が、彼らには面白かったから。」


ロリエルは深く息を吸い込んだ。

まるで氷水に飛び込む準備をするかのように。


「彼らが一番愛したのは、特別な見世物だった。

ある男……高貴な、爵位を持つ人間が仕切っていた。」


彼女の声には嫌悪が滲んだ。


「私たちは生き物じゃなかった。

ただの玩具だった。


彼は客を集めた――貴族、商人、金持ちの貿易商。

そこにはワインと料理が並ぶ長いテーブルがあって、真ん中に……

まるで闘技場のような檻があった。」


彼女は視線を外し、シーツをぎゅっと握る指が神経質に震えた。


「一人ずつ、私たちを連れ出した。

客には事前に聞かれた。『この女に何をさせたい?』って。


そして、それぞれが勝手な望みを口にした。

骨を折れと命じる者。

慈悲を乞う姿を見たいと言う者。

床が血で染まるまで踊らせろと要求する者。」


ロリエルは黙り、唇が震えた。

それでも、彼女はほとんど囁くように続けた。


「その男……あの貴族は、顔を見るのが好きだった。

近くまで寄ってきて、香水とワインの匂いが漂う距離で、叫ぶ私たちの目を見つめた。

『これこそ芸術だ』って言った。

『魂を折るのは、肉体を殺すよりずっと洗練されてる』って。」


彼女は歯を食いしばり、息が乱れた。


「12歳くらいの女の子を、顎をつかんでこう言ったのを見た。

『エルフの誇り? 今からそれを削ぎ落としてやる』って。


そして命令を下すと、群衆が拍手した。

まるでサーカスでも見てるみたいに。」


ロリエルの瞳が光った――

そこには痛みと、狂気じみた冷たい憎しみが混ざっていた。


「彼らはそれを『遊び』と呼んだ。

私には、それが……人間の顔だった。」


彼女はナギを見上げた。


「だから、もしあなたがあいつらと同じだったら……迷わなかったよ。

たとえその後、死んでも。」


ロリエルは黙り、まるで言葉が喉を焼いたかのようだった。

部屋に静寂が満ちる。

薄いドアの向こうから、酒場の遠い喧騒――

笑い声とジョッキのぶつかる音――

知らぬ他人の暮らしが響くだけ。


彼女は震えていた。

だが、瞳にはまだ憎しみの炎が燃えていた。


ナギは向かいに座り、肘を膝に預けた。

顔に落ちる影が、表情を読み取れなくしていた。

筋肉ひとつ動かさない。

まるで、聞いた話に重みがないかのように。


ただ、唇がわずかに動いた。


「続けろ。」

この章で描かれた恐怖と憎しみ――

あなたは感じましたか?


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