35 「闇の刃が目覚める――ナギの真実」
アカデミーの中庭は、剣と剣がぶつかる音、エネルギーの軽いヒュッという音、そして戦士たちの重い息づかいで満たされていた。
ナギとユウジは互いに向かい合い、相手の一挙手一投足を注意深く見つめている。
「なんでそんなに距離を置いてるんだ、ナギ?」
ユウジは剣をブロックしながら言った。
「もうずっと思ってたんだ…二年生の頃からだ。
もう三年経つのに、お前は相変わらず閉ざされたままだ。」
ナギはすぐに答えず、ユウジを鋭く押しのけ、攻撃に転じた。
その剣は恐ろしいほど正確に空気を切り裂く。
ユウジは防御に回る。
二人の剣が鋭い金属音を立ててぶつかる。
「それって重要か?」
ナギは冷たく言った。
視線を逸らさず、すべての動きが計算されている。
「俺が言い訳する必要があると思うか?」
「ただ理解しようとしてるんだ!」
ユウジは後ろに一歩下がり、まだ剣を握ったままだった。
「聞けよ、俺たちはみんなこの…狂った世界にいるんだ。それは理解できる。
でもお前の態度…笑い方、判断、そしてそのオーラ…怖いんだ。」
ナギはゆっくりと手を上げた。
彼の剣の周りで、暗いエネルギーがかすかに震え、微かな光を放っている。
— この力は…俺の一部だ、
低く、ほとんど感情を込めずに言った。
— 遊びのために使っているわけじゃない。
あとのことは、雑音だ。
— 雑音か…
ユウジは眉をひそめ、少し息を整えながら言った。
— そうかもしれない。でも俺には見える。
お前の沈黙の奥に、何かが隠れている。
お前自身もまだ理解していない何かが。
ナギは再び構えを取り、目は冷たく、それでいて集中していた。
— なら、よく見ていろ、
ほとんど囁くように言った。
— あとは…お前への授業だ。
その瞬間、彼は前に踏み出した。
剣を包む闇が、不吉な光を帯びて揺らめく。
ユウジは身を引き締め、迎撃の構えを取る。
だが、これは単なるスパーリングではないことを悟った。
— 性格、力、意志…
全てを試す試練だ。
「待て、ナギ!
キャプテンが言っただろ、この力は使うなって、
あれは“虚無”に似てるって…
お前、自分でもそう言ったじゃないか!」
— ユウジは攻撃をかわしながら叫んだ。
「うん、でも破壊力は抑えてある。
多分、大丈夫だろう」
— ナギは冷静に答えた。
ミズキは横で身をかがめ、目を大きく見開きながら見守る。
緊張で息を止めるように、ナギとユウジの戦いを見つめていた。
— 見て…
— ただ戦っているだけじゃない…観察して、分析している。
彼女は息をこらして囁いた。
隣に立つリョウタは腕を組み、軽く笑った。
— ハッ…そうだな。
すごく変わってる。
ナギがこんな風になるなんて思わなかった。
地上ではいつも静かだったのに、ここでは…
冷たい計算と、どこか危険なものの香りが混ざっている。
— 危険な…?
— その暗い力のこと?
ミズキは眉をひそめて問いかけた。
— そうだ、
— ただの力じゃない。
見ろよ、制御の仕方を。
すべての動きが計算されている。
ユウジの攻撃も、わざと受け流してる。試してるんだ。
リョウタは頷きながら答えた。
ミズキは首をかしげ、ナギの剣の周りで閃く暗い光をじっと見つめた。
— 彼、何か抱えてるわね、リョウタ…
— 私たちを信じていない…
いや、この世界自体を信じていないみたい。
彼女は小声で言った。
リョウタは軽く笑みを浮かべ、頭をわずかに振った。
— そうだな、同意するよ。
— だけど、訓練でこんな態度なら、本番の戦いになったらどうなるか…
想像できるか?
二人の視線が一瞬交わる。
すぐに再び戦士たちに向けられた。
剣がぶつかり、闇と光が絡み合う。
打撃のたびに胸に響き、これが単なる訓練以上の何かを予告しているかのようだった。
ミズキは拳を握り、心臓の高鳴りを感じる。
— 私たち、まだ学ぶことが山ほどある…
そして理解しなきゃ。
リョウタは頷き、目を輝かせた。
— その通りだ。
だが今日…今日だけは、観察し、恐れを知る日だ。
この恐怖を乗り越えられる者だけが、本当の戦場で立ち向かえる。
ナギはぎゅっと体を引き締め、目は冷たく光った。
すると、動きが一気に鋭くなり、まるで暗闇そのものに溶け込んだかのようだった。
ユウジは必死に斬撃を防ごうとした。
だが、増していく力の感覚は、ほとんど手に取るように分かった。
— どうしたんだ?
— ユウジは刃を握りしめ、息を切らしながら呟いた。
ナギがまた防御を切り裂く。
— ただ試してるだけ…
— ナギは静かに、目を逸らさず答えた。
その瞬間、息を呑む出来事が起こった。
ナギの素早い突きがユウジの防御を突き破る。
その威力と精度は圧倒的だった。
ユウジはバランスを崩し、二人とも地面に倒れ込む。
ナギはその上に立ち、まるで虚無そのものが人の形を取ったかのように聳え立つ。
冷たく、揺るぎなく、力と静けさを同時に湛えている。
呼吸も動きもない。
ただ絶対的な集中と、次の一手への準備だけ。
息を切らすユウジは顔を上げた。
ナギの目にあるのは、少しの攻撃性もない。
ただ冷静な観察、分析、そして圧倒的な決意の感覚だけ。
— …お前、本当に俺が思ってたより強いな、
— ユウジは力なく言った。立ち上がろうとしながら。
— 自分でも何が起こってるのか分からない…
それが一番怖いんだ、ユウジ…
— ナギは友達の目をまっすぐ見つめながら言った。
ユウジは剣を握りしめ、なんとか平静を保とうとした。
だが、ナギから放たれる力と内なる動揺の奇妙な混ざり合いに目を離せなかった。
— 一番怖いのはな…
— ナギは深く息を吐きながら続けた。
— 俺…母さんも兄貴も恋しくない。
俺…俺は、何も感じないんだ。
その瞬間、世界全体が止まったかのようだった。
地面の影も、吐く息も、すべてが鋭く感じられる。
ユウジは、ナギの言葉に込められた正直さと、予想外の痛みに圧倒され、言葉を失った。
ナギはユウジを見下ろした後、ゆっくりと後退した。
まるで影が、宮廷の広場の陽光に溶けていくかのようだった。
— 今日はこれで終わりだ
— と、彼は小さく、ほとんど自分に向けるように呟き、返事を待たずに背を向けた。
周りの生徒たちは互いに目を合わせた。
スパーリングの勝者はその日の残り時間、自由というルールは明確だった。
しかし、ナギの目には勝利ではなく、もっと深い何かが宿っており、
見ている者の血を凍らせるかのようだった。
彼が歩き去ると、軽い静寂の余韻と、
この訓練がより危険な何かへの前奏に過ぎないという感覚が残った。
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