表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/135

33 「魔王復活の時――世界の命運は?」

「おい、ナギ!」


横から陽気な声が響いた。

ユウジが軽く肩を小突く。


「なんだよ、そんな難しい顔して。

怖いのか? 俺も正直、ちょっと怖ぇけどな。」


ナギはゆっくりと首を向け、彼と視線を交わす。


「別に……ただ、自分のことを考えてただけだ。」


視線は他の者たちの頭上、遠くを見つめていた。


「こら、集中しろよ。」


中央寄りに座っていたハルが小声でたしなめる。

「王子の話はまだ終わってないぞ。」


再び場内に静寂が戻った。

扉のそばに立つ衛兵の足音だけが、低く響いている。


長い王国地図の載った机の前に立つレオンが顔を上げ、集まった者たちに向かって続けた。


「獣人たち……彼らは確かに我々の脅威だ。

村を焼き、町を襲う。

だが――」


一瞬、言葉を選ぶように沈黙し、


「その背後には……魔族がいる。」


「……魔族?」


召喚された誰かが大きな声で聞き返す。

場内にざわめきが走った。


「まるでアニメみたいだな……魔王ってやつか?」


恐怖と好奇心が入り混じった声が、あちこちから上がった。


ナギは口をほとんど動かさずにつぶやいた。


「……やっぱりな」


その瞳は冷たく光っていた。

あまりにも聞き覚えのある展開。

まるで漫画の中の話だ。


魔王を倒した英雄が、仲間が――

勝利のあとに裏切られ、処刑される。

あの時、ページ越しに見た結末が、頭から離れない。


レオンは背筋を伸ばし、低く重い声で言った。


「……そうだ。魔族だ」


魔族――

人間への憎しみを、何百年も燃やし続けてきた存在。


「魔王は……闇そのもののような古き存在だ。

かつて世界から人間を消し去ろうとした」


彼は地図の端に指を置く。

山々と深い森の向こう側。

人の領域から遠く離れた場所。


「血と犠牲を払って、俺たちは奴らを押しとどめてきた。

だが……二十年前、結界は弱まった」


低い声が、石造りの広間に響く。


「獣人どもが押し寄せたのも、その時だ。

魔王は復活し、怪物と魂を売った者たちを率いている」


――不穏な予感が、胸の奥でざわめいた。


会場に、抑えたため息が漏れた。

誰かが飲み込み、誰かは拳を握りしめた。


「獣人たちは――彼らの味方だ。

彼らはただの最初の攻撃。

俺たちの軍を引きつけるための囮だ。

本当の闇が、今まさに俺たちに襲いかかろうとしている」


レオンは集まった者たちを鋭く見渡し、続けた。


「もし準備ができていなければ――

この戦争は、人類にとって最後の戦いになる」


「まるでアニメみたいだな……」


後ろの方から、低くつぶやく声が聞こえた。


「アニメみたいじゃない。

前に召喚された連中の記録も読んだ。

それは現実だ。

そして今、君たちはその戦争の一部なんだ」


ナギはその言葉を聞いて、また視線をそらした。


魔王、獣人の同盟者……

綺麗に聞こえるけど、これはただの物語の一つだ。

勝者に都合のいい真実だけを語る話だと、彼は知っていた。


レオンは一歩前に出て、集まった者たちを見渡した。

静かに、しかしその言葉は一人一人の心に深く刻まれるように話した。


「魔族はまだ直接、手を下せない…自分たちの手では。」


「えっ?」

誰かが疑わしそうに声を上げた。


「そうだ。」

レオンは頷いた。

「彼らは千年続くバリアに阻まれている。」


「バリア?」

多くが困惑したように見つめ合った。


「説明しよう。」

レオンはゆっくり話を続けた。


「約千年前、この世界は今とは違っていた。

その頃、人間の統一帝国――エルドラニスが存在していた。

北の氷から南の海まで広がり、すべての民族を一つの旗のもとにまとめていた。


しかし、地平線の向こう、今ではほとんど誰も語ろうとしない土地から、

あの魔族の軍勢がやってきたのだ。」


レオンは地図に触れ、山脈の向こうにある暗くて無人の地域を指さした。


「当時の人間軍を率いていたのは伝説の英雄だった。

彼もまた、君たちと同じように地球から召喚された者だ。

名前はアラスレイン・ヴァルダリオン。

しかし、彼はただの英雄ではなかった。

歴史上唯一、召喚者としての真の力を解き放ち、王たちさえ震え上がらせる存在となったのだ。」


部屋の空気は静まり返り、まるでその話を吸い込むかのようだった。


「血の星の峰で決戦が繰り広げられた。

そこは嵐と炎の中、我々の軍と同盟軍が魔族とその怪物たちの軍勢と戦った場所だ。

昼も夜も剣の打撃が大地を震わせ、空は魔法の炎で燃え上がった。」


レオンの声はゆっくりとなり、まるで自分の目で見たかのようだった。


「そこでアラスレインは歴史上最強の魔王と一騎打ちをした。

彼らの一撃は山を砕き、戦いの叫びは雷鳴に勝ると言われている。

そしてアラスレインは勝利したが…致命傷を負った。」


レオンは一瞬沈黙し、視線を落とした。

その後、再び重く決然とした表情で集まった者たちを見渡した。


「世界がまだ危機にあることを知り、

彼は残りの命を使って『永遠の結界』を築いた。

それは人間の土地と魔族の領域を隔てる魔法の壁だ。

そして、そのために…聖なる剣で自らの心臓を貫き、

生きた呪文の錨となったのだ。」


召喚された者たちの中には、思わず胸に手を当てる者もいた。


「彼の犠牲があの戦争に終止符を打った。

しかし、あの時築かれた結界は魔族が直接越えることを禁じている。

だが…彼らには代わりに汚れ仕事をする味方がいる。

それが獣人の一部だ。

そして、結界は年月と共に弱まっているのだ。」


レオンの言葉が終わると、部屋には松明のパチパチとした音だけが響く静寂が漂った。


「……くそ……」

後ろの席から誰かがつぶやき、その小さな囁きはすぐに群衆の間で広がった。


「すげえ話だな……」

ユウジが口笛を吹きながら、ナギの肘を軽く突いた。

「もしこれが本当なら、あのアラスレインってやつはとんでもない化け物だ。」


ナギはだるそうに彼を見て、肩をすくめた。

しかし、心の中では別の考えが渦巻いていた。


「アニメの伝説なんていつも誇張されてる。

ヒーローに自己犠牲、魔法の結界…

それに必ず隠された何かがある。」


「はっ!」

短髪の召喚者の一人が大きく鼻で笑った。

「つまり俺たちも、あんたたちの伝説のヒーローみたいに最後には死ぬためにここに連れて来られたってわけか?」


レオンは鋭く彼を見つめ、その男は思わず言葉を飲み込んだ。


「違うのは、」

プリンスは力強く言った。

「君たちには選択肢があることだ。」


群衆の中で誰かがささやいた。

「魔族……魔王……まるで漫画みたいだな……」


一方で、別の者たちはまるで死刑宣告を受けたかのような表情をしていた。


ハルが静かに言った。

「もし結界がまだ彼らを抑えているなら、魔族はまだこの地には入れない。

獣人たちはその始まりに過ぎないんだ。」


ユウジは眉をひそめた。

「つまり……それがもう崩れ始めてるってことか?」


レオンは答えず、ただ重い視線を地図に落とした。

その目は、深い覚悟とともにこう告げていた。


「残された時間は、もうほとんどない――」


場内に張り詰めた空気が走り、誰もが次の言葉を待ちわびた。

みなさん、


もしこの物語が気に入ったら、ぜひブックマークに保存してください!


そして、感想やコメント、評価もお待ちしています。


みなさんの応援が、物語をより良くする力になります!


これからも一緒に、この冒険を楽しんでいきましょう。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ