22 「嘘と真実の境界」
(廊下が静まり返る)
生徒や従者たちの足音が角を曲がると、空気にはワインとスパイスのほのかな香りだけが残った。
レオンが首元の外套をスッと外す。
隣に立つイリリアに振り返る。
彼女の銀髪が松明の光を柔らかく反射する。
冷たく、鋭い目が兄から離れない。
「で、どう思う?」
レオンが静かに微笑んで、沈黙を破る。
「いろいろね。」
イリリアが少し首をかしげて答える。
「彼らの目…昨日まで魔法のない世界にいた人間の炎が燃えてる。」
「でも、中にはもうここに残るって決めたやつもいる。」
「それは良いことでも、悪いことでもある。」
レオンが柱にもたれ、腕を組む。
「残るやつは、強い味方になるかもしれない。」
「でも、迷ってるやつは…問題を起こす可能性がある。」
イリリアの視線が、さっきナギが座ってた方向にスッと動く。
「あの少年…危険よ。」
「その決意、偽物じゃない。」
「もう失うものがない人間の決意だ。」
レオンがわずかに目を細める。
レオンが軽く笑う
「そういうやつは、奇跡を起こすか、馬鹿なことをやるか、どっちかだ。」
「でも、運が良ければ…鍵になるかもしれない。」
イリリアが眉をひそめる。
「鍵?」
「まあな…」
レオンが鼻でフンと笑う。
でも、声には真剣な影がチラッと混じる。
「お前も知ってるだろ、なんであいつらを召喚したか。魔王が…」
「静かに!」
イリリアがピシャリと遮る。
目が冷たくキラッと光る。
「ここじゃ壁にだって耳がある。ただ『王国を守る英雄』を探してるって、誰かに聞かれたらどうする?」
レオンが肩をすくめる。
でも、黙った。
「明日から——」
イリリアが柔らかく、でも自信たっぷりに言う。
「ここに来た代償を理解し始めるわ。」
「でも今は…ただの物語だと思わせておくの。」
石の燭台で松明がパチパチと音を立てる。
二人の影が、長い帯のように空っぽの廊下に伸びる。
まるで、美しい言葉の裏にはいつも深い何かが隠れてるって、思い出させるように。
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