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18 「嘘か真実か」

突然、五十嵐勇斗が立ち上がる。

目がまるで炎のように燃えていた。


「違うよ、先生! 俺たちの居場所はここかもしれない!」


「俺の人生、クソくらえだった。」

別の生徒が拳を強く握りしめる。


「でも今、俺は戦僧だ! 力が…湧いてくる!」


全員の視線がナギに集中する。


ナギは静かに立っていた。

目が冷たく鋭く光る。


「あの世界は、痛みしかくれなかった。」

「でもここには――チャンスがある。」


「絶対に逃さねえ。」

声は低く、揺るぎない決意に満ちていた。


一瞬、玉座の間が凍りついた。


クラスは分裂した。

教師たちは帰還を願い、生徒たちは新世界を求める。


二つの未来が、激しくぶつかり合った。


空気がピンと張り詰める。


言葉が刃のようにはじけ合う。

何が正しい? 何が間違ってる?

誰も答えられない。


議論が燃え上がった。

言葉が火花のように散る。


突然、鋭い声が響いた。

「もういい!」


ミズキ アヤが立ち上がる。

完璧な姿勢で、長い髪がユラリと揺れる。

その目は炎のように燃えていた。


「私たち、日本の学生よ! 過去や家族、国を捨てる覚悟ができてるの?」


アヤが一歩前に出る。

背筋がピンと伸びている。


「力に夢中になって、人間性を失わないで!」

「英雄…それは帰れる人たちのことよ!」


その声が玉座の間に力強く響き渡る。


誰かが小さく囁いた。

「まるでアニメのヒロイン…」


かすかな笑い声が上がる。

でもアヤは微動だにしない。


声が少し震える。

「私は信じてる。絶対にみんなで帰る道を見つけ出す!」


その言葉が、心をギュッと締めつけた。


熱くて、苦しい情熱だけが残った。



ナギが冷たく微笑んだ。


「もう一つの人生なら、お前は英雄だったかもな、ミズキ。」


一瞬の静寂が流れる。


「でも今、お前は捨てられた世界にしがみついてるだけだ。」


その声は低く、重々しい。


「まるで白髪のあの人気アニメの主人公みたいだな。帰りたいか?」


「オフィスで奴隷みたいに、金も未来もない、灰色の世界に。…あ、そうだ、お前は金持ちだったな。」


目が鋭くキラリと光る。


「そんなとこ、俺は絶対に戻らねえ。」


「ここは違う。」


「貧乏人だってチャンスがある。強くなれる。自由になれる。」


「帰る? それはバカの道だ。」


言葉が冷たく、鋭く刺さる。


パチンッ!


ミズキの手がナギの頬を叩いた。


空気がピタッと止まる。


涙が彼女の目にキラッと光る。

でも、声は固く決然としている。


「痛みを独り占めしないで!」


「私だって…いつも完璧でなきゃいけなかった! 弱さを見せられなかった!」


拳をギュッと握りしめる。


「毎晩、自分に聞いてた。本当の強さ、私にあるの!?」


ナギは黙って彼女を見つめる。

唇の端から血が滲む。


拭わない。


「お前、まだ信じてるんだな…」


「俺はもう信じねえ。」


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