表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/135

113 「最強の出現」

死の匂いが空気に漂っていた。

濃厚で、甘ったるい。


コル・トゥルは動きを止めた。

その鋭い爪は、カイレルの喉を切り裂く寸前で、わずか一センチのところで凍りついた。


ゴーレムの無表情な仮面が、ゆっくりと獲物から視線を外した。

体に刻まれた真紅のルーンが、不穏に、脈打つように光を放つ。

何かを感じ取ったのだ。

古代の、原始的な本能を呼び覚ます何か。

それが、目の前の簡単な獲物を忘れさせた。


カイレルは痛みに歯を食いしばりながら、それを感じた。

ゴーレムから放たれていた圧力が、別のものに変わった。

もっと古く、静かで、すべてを飲み込むような気配。

体を縛る冷気は、もう怪物から来るものではなかった。

それは、どこか別の場所からやってきていた。


首を動かすのもやっとで、カイレルはコル・トゥルが見つめる方向に目をやった。


(岩の突起の頂で、煙と混沌を見下ろすように、一人の人影が立っていた)


その姿は背が高く、不自然なほど痩せ細り、ボロボロの黒いローブをまとっている。風にはためく布は、巨大な猛禽の翼のようだった。


だが、最も異様なのは仮面だった。


鈍い黒い光を放つ金属製の仮面。その縁はぎざぎざで、歪んでいる――まるで鉱石から無理やり引き裂き、狂気のハンマーで打ち鍛えたかのようだ。人間の顔などではなく、怒り狂った獣を思わせる輪郭。空虚な眼窩には、飢えた影が渦巻いている。


最も恐ろしいのは口元だ。無数の深い亀裂が放射状に走り、獲物を食い裂いた直後の獣の口のよう。ゴーレムの真紅のルーンと、アイレラの紫の炎に照らされ、その「微笑み」は冷たく、嘲り、そして極めて残酷だった。


(ただ一つだけ…左の眼窩)


そこには闇がなかった。


真紅の炎が燃えていた。生き生きと、脈打つように、まるで燃え盛る炭のようだ。その炎は憎しみと軽蔑に満ち、感情を持たないはずのゴーレムでさえ、思わずたじろいだかのように見えた。


人影は動かない。ただ立ち、じっと見つめる。その存在感は静かだが、突然訪れた夜のように絶対的だった。すべての注目を一身に集め、脅威さえも押しやる。


カイレルは凍りついた。一瞬前まで逃げ道を計算していた頭が、空白に。これは何だ? 友か? 敵か? それとも…


だが、生存本能が磨いた直感が、叫ぶ。


狩人は、今、獲物に変わった。


本物の捕食者が、狩りを始めたのだ。


そして――その捕食者は、二人を、じっと見つめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ