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112 「絶望的な戦い」

戦いの後に訪れた静寂は、耳をつんざくほどだった。

風が唸り、焼け焦げた魔物の残骸がパチパチと音を立てるだけ。

ブラリクは息を荒げ、剣に体重を預けた。

リアナリスはマントで刃を拭う。

すべてが終わった、そう思えた。


その瞬間――


「キィィィッ!」


石が引き裂かれるような、不気味で凍てつく音が響いた。

音の主は、鉱山の入り口を塞ぐ瓦礫の山の下だ。

岩が震える。

巨石の隙間から、岩を砕きながら、腕が突き出してきた。


だが、それは腕ではなかった。

黒曜石のような黒い骨。

毒々しい紫の煙を吐き出す、異様な骨の手だ。

異常に長い指。

その先には、鋼すら切り裂く鋭い爪が生えている。

岩に食い込み、軽々と砕く。

もう一本の腕が現れ、地面が揺れた。

轟音とともに、そいつが這い出てきた。



怪物は巨大だった。

細長く、病的に痩せた体は黒い岩でできている。

全身に脈打つ魔術のルーンが刻まれ、不健全な深紅の光を放っていた。

胸には穴が開いており、呪われた心臓のように、純粋で濃縮された闇の球体が脈動している。

顔はなく、滑らかな黒曜石の仮面のようだ。

そこに、細く縦に並んだ二つの目だけが不気味に光る。

その目は、底知れぬ古代の憎悪に満ちていた。

触手のような影がその周囲に渦巻き、実体がないのに、じっとりと絡みつくような気配を放つ。


怪物は瓦礫の下から完全に這い出し、不自然な巨体を伸ばした。

その「視線」がゆっくりと一行をなぞる。

誰もが魂を凍らせる冷気を覚えた。


すると、その口――目の下にあるただの裂け目が、ゆっくりと開いた。


そいつが叫んだ。


それは音ではなかった。

純粋な恐怖が振動に姿を変えたものだ。

血が凍り、意識が固まる。

耳を打つのではなく、直接、頭蓋の内側に突き刺さる。

吐き気。

めまい。

そして、本能的な、原始的な恐怖が全身を駆け抜ける。

叫び声に、周囲の岩がひび割れていく。


エリサ姉妹が悲鳴を上げ、膝をついた。

耳を押さえる手の指の隙間から、鮮血が滲む。

ミライはよろめき、顔面が恐怖によって歪んだ。

不屈の戦士ブラリクでさえ、無意識に一歩後ずさり、反射的に盾を構える。


その時、初めてカイレルが動揺した。

これまで、戦いの最中ですら軽い退屈しか見せなかった彼の顔が、一瞬にして変わった。

紅い瞳が見開かれる――そこに映っているのは恐怖ではない。

純粋で、凍てつくような驚愕だった。

彼はこの怪物を知っていた。

古の伝説の中で。

禁断の書物のページの中で。

かつて貪るように読み込んだ、あの呪われた知識の断片の中で。


「コル…」

カイレルの囁きは、ほとんど聞こえないほどだった。

しかし、それは宣告のように重く空気に響いた。

「…トゥル…」


コル・トゥル。

忘却の古ゴーレム。

伝説の怪物。

世界の深淵から生まれ、魂を喰らい、王国を滅ぼす者。

幾世紀も前に滅ぼされたはずだった。


怪物は一瞬の隙も与えなかった。

動いた――いや、歩いたのではない。

一瞬で視界から消え、ブラリクの目の前に再出現した。

影のような触手が突き進む。

鎧を攻撃するのではなく、それをすり抜けた。

ブラリクは無言の呻きとともに地面に崩れ落ちた。

目が白く裏返る。

肉体的な痛みではない。

意識を焼き尽くす、精神への直接の打撃。

瞬時に戦闘不能となった。


リアナリスは本能で動いた。

双剣が唸りを上げ、弧を描いて空を切り裂く。

だが、刃が黒い岩肌に触れると、キンッと鋭い音を立てて跳ね返され、傷一つつけられない。

次の瞬間、反撃の触手が彼女の足に絡みついた。

グチャリと、不気味で生々しい音。

エルフの娘はくぐもった叫びを上げ、その場に倒れ込み、岩の上を転がった。

折れた足を抱え、苦悶に顔を歪める。


アイレラが魔力の炎の塊を放った。

灼熱の炎がゴーレムの巨体を飲み込む。

だが、火の勢いが収まった時、そいつは微動だにしていなかった。

体に刻まれたルーンが一瞬、深紅に強く輝き、魔力を吸い取ったのだ。

ゆっくりと、無貌な「顔」が、その「視線」をアイレラに向ける。


カイレルはすでに剣を抜いていた。

頭脳が極限まで回転する。

《低~中級魔術への完全耐性! 伝説級以下の物理ダメージ無効! 精神攻撃…なぜ俺はこれを見抜けなかった!?》

彼は飛び出した。アイレラから注意を逸らすためだ。

暗黒のエネルギーを纏った剣が、ゴーレムの腕にキィン!と鋭い音を立てて叩きつけられる。

黒い石肌に、他とは違う深い傷が残った――彼の剣だけが、かろうじて傷をつけることができた。

だが、それはあまりに微々たるものに過ぎない。


コル・トゥルの反応は即座だった。

影のように蠢く触手がカイレルの喉元を捉え、その巨体を軽々と宙に持ち上げる。

そして、背後にある岩壁へと豪快に叩きつけた。

すさまじい衝撃。

カイレルはよろめきながら立ち上がり、肋骨が軋む痛みを感じた。

何年も味わっていない、骨に響く激痛だ。


怪物は再び、魂を凍らせる咆哮を上げ、絶対的な優越を誇示した。

「暁の影」の仲間たちは、わずか数秒で全員が倒れ、あるいは重傷を負い、無力化されていた。


そいつが完全に支配していた。

この戦場を、そして、彼らの命運を。

親愛なる読者の皆さん!




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