86 「英雄でも魔王でもない、ただの僕が異世界で生き残る話」
地下ダンジョンの闇が濃さを増していた。
グループが新たな通路に踏み込む。
空気は重く、湿っぽい。
ラグノルドが松明を掲げた。
湿った壁がオレンジ色に光る。
「気をつけろ。次のエリアは罠だらけだぞ。」
その言葉は軽い警告ではなかった。
ユウジが最初に気づいた。
薄暗闇の中、細いワイヤーが張られている。
ほとんど見えない。
「止まれ！」
ユウジが叫び、ギリギリで飛び退いた。
ケイトは軽やかにワイヤーを飛び越える。
先の道を素早く確認した。
サクラは静かに壁を観察。
隠されたレバーや罠を探す。
確実に、仲間たちに指示を出した。
一方、ハルは後方を固めた。
鋭い耳で奇妙な音を捉える。
前方から響く、不気味な気配に神経を尖らせた。
数分間、緊張感漂う移動が続いた。
突然、音が響く。
重い足音。
爪が石を引っかく不気味な音。
通路の先に、巨大な影が現れた。
みるみるうちに、巨獣の姿に膨れ上がる。
「ミニボスだ！」
ミズキが息をのんだ。
彼女の手で炎の玉がチリチリと燃える。
暗い石の鎧をまとったモンスターを照らし出す。
その爪は、長く鋭い。
ラグノルドが一歩前に出た。
「全員でかかれ！」
「今、ここで先に進むか、闇に飲まれるかが決まる！」
戦闘が始まった。
ナギが正面に突っ込む。
敵の注意を引きつけた。
ユウジは影から鋭い攻撃。
強烈な一撃を巧みにかわす。
ケイトは素早さを活かす。
敵の側面を回り込んだ。
サクラはモンスターの魔法を防ぐ。
チーム全体を覆う盾を展開。
ハルは弱い者を守る。
ミズキとリョウタへの突進をことごとく阻止。
ミズキは炎の玉と呪文を放つ。
ダメージを重ねていく。
リョウタは短剣を手に攻撃。
意表をつく角度でモンスターの気を散らす。
戦いは苛烈だった。
モンスターは仲間を吹き飛ばす。
石の柱を粉々に砕いた。
それでも、チームワークで持ちこたえた。
決戦の瞬間、ラグノルドが叫んだ。
「全員一斉に！ 背中の弱点を狙え！」
ヒーローたちは息を合わせて攻撃。
炎の玉、剣の斬撃、鋭い突き。
モンスターはついに倒れた。
石の床に暗い跡だけが残る。
全員が荒々しく息をしていた。
だが、どの目にも新たな自信。
「これ、ほんの始まりだろ…」
ナギが額の汗を拭う。
ミズキがその手をぎゅっと握った。
「やったよ。一緒にね。」
通路の闇に、松明の光が揺れる。
遠くに新たな通路が見えた。
微かだが、不気味な光が漏れている。
次の階層に何が潜むのか？
彼らはそれに立ち向かえるのか？
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