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第1話

ある満月の夜

一人の少女が目の前に現れた

「我はカグヤ」

「お前に呪いをかけた」

「今から59日の間に次の秘宝を集めよ」

「仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の裘、龍の首の珠、燕の産んだ子安貝」

「もし集められなければ貴様に命はない」

少女の目、声、表情、それらは非情で冷酷であったが

ただそれでも見惚れてしまうほどに少女は美しかった

~~~~~

ここはとあるアンティークショップ

カグヤが言っていた秘宝が一体どこにあるのか

見当もつかず、骨董品店を巡っている

正直、どんな形をしているのかも分からない以上、こんなことをしていても無駄かもしれないが

「何かお探しで?」

頭の禿げた店主が声をかけてくる

「えっと…仏の御石の鉢って分かりますか?」

何を言っているんだという顔で店主が見つめる

「自分も正直どういった物かは分かってないんですけど…それを探していて」

「ふーん、ああ~あれね ありますよ」

思い出したようにそう言っているが、どこか適当な感じだ

「ちょっと待っててください」

店主が店の奥へと向かう

正直、今の反応で本当にあるとは思えないのだが…

「これですかね~?」

店主が何やら古そうな鉢を両手で抱えてやってきた

その鉢は確かにそれらしい雰囲気を漂っている

しかしこれが本当に仏の御石の鉢なのか分からない

「ちなみに値段はいくらですか?」

「そうだな~ まあ、ザッと50万ってとこかな」

店主はけろりとそう言うが明らかにこちらの様子を伺っている

「50万…か」

「もしこれがどうしても欲しいってなら値下げしてやらんでも無いけども?」

少し悩む様子を見た店主は売れると見込んだのか、そう口にした

「ちなみに今はいくら持ってるんだい?」

「今は…10万ほど…」

店主の顔つきが変わった

明らかに期待外れという顔だ

「……まあいいや、じゃあ10万で売ってやる」

ずいぶんあっさりと40万も下げてくれた

確かにそれなら買えるのだが…

10万も使ってしまうと今後の生活費に困る

「何?買わないの?」

「もう少し…考えさせてもらってもいいですか?」

「あっそ、構わないけど次は値下げしないよ?」

それは困る…お金を稼ぐあてがない今、50万を払うことは出来ない

「…………」

しばらく黙り込んで考えていると

「どうするの 買うの?買わないの?」

店主が苛立ちながら催促してきた

「えっと…それじゃあ…」

買いますと言おうとしたその瞬間

「待ちな少年」

後ろから声がかかる

黒いフードを被った男

「店主、この鉢はいつの年代に作られた物だい?」

フードの男がそう尋ねる

「そ、それは知らん…がかなり昔だろう」

動揺しながら曖昧な返答をする

「ふ~む」

男はその鉢を眺めるなり、胸ポケットからお札を出した

「な、なんだあんたがこれ買うのか?」

「い~や、ちょいと確認したくてな」

男がテーブルの上にお札を並べる

並べられたお札は年代、国、金額が異なっている

男はお札に手をかざした

その瞬間、男の手が何かに変化したように見えた

カサカサカサ…

お札がひとりでに動きだす

「な、なんだこれは!?」

無造作に並べられていたお札は横一列に並びだした

そして鉢も勝手に動き始め、お札の列に加わる

「どういうことだ?マジックかなにかか?」

店主が尋ねる

「まあ、そんなところかな」

「ところで店主、この鉢ずいぶんと新しい代物みたいだな?」

「な!?」

「数ヶ月前ってところか?1年も経ってないみたいだが」

「どうしてそんなことがお前に分かる!!」

「分かるさ、そういう手品なんだよ」

(この人…もしや)

男の秘密に気づく

「あの…もしかしてあなた…」

「この店にはもう用はない、出るぞ少年」

男が服を掴んで引っ張っていく

「ちょ…ちょっと!」

「あなたは一体…」

「俺の名前はオスター・バーグ」

「少年は?」

「えっと…華鏡(はなかがみ) 天命(てんめい)といいます」

「天命…いい名前だな」

「あの…さっきオスターさんがやってたあれって…」

「やっぱり少年も俺と同じか」

「カグヤの呪い…」

カグヤと出会ったあの夜…

呪いによって受けた弊害は寿命が約2ヶ月となった他にもう1つあった

それは身体が怪物化すること……

「俺はコレクターなんでな、こういう物をよく集めている」

そういって、オスターがコインを何枚か取り出し、それを強く握った

シュウ…

オスターの手が一瞬、怪物の手に変わる

さっき見たときと同じだ

そして手を開くとコインの並びが変化している

「俺は怪物化することで物を並び替えることが出来る」

「これはコインが製造された年代順だ」

「さっきも同じように年代順に並び替えたんだ」

「だからあの鉢の作られた年代が分かった」

このように怪物化には不思議な力が備わっている

オスターさんの力は僕とは違うから人によって変わるのだろう

しかし、何故こういった力をカグヤは与えたのか

その真意は分からない

「少年はどこまで知ってるんだ?」

「僕はまだ何も…」

「まあ、そうだよな」

「オスターさんは?」

「俺もまだ何も分かってない」

「カグヤが一体何者なのか…この呪いのことや集めろって言われてる秘宝のことも」

「なあ少年、いい機会だ」

「俺と一緒に探さないか?」

「え?いいんですか…?僕…正直役に立てるか…」

「そんなこと考える必要なんかねえさ」

「仲間は多いに越したことは無いだろ?」

「じゃあ…こちらこそよろしくお願いします」

「決まりだな」

「これからどうするんですか?」

「さあな?俺も分からねえ」

「え?」

「実はここに来たのはある占い師の予言なんだ」

「占い師…?」

「そう、それでお前と出会った」

「ひとまずその占い師のとこへ向かう」

そういって、共に向かうことになった

古い家しか建っていないような道をかれこれ1時間程歩き続ける

なんて変わった所に店を構えているんだろうと心底思った

そして、ようやくたどり着いたかと思えば……

「当たる!」「安い!」「すごい!」と書かれた看板に目が痛くなりそうなほど派手なライトアップ

「ここ…ですか」

衝撃的すぎる見た目の店に圧倒される

「少年がこれを見て何を思ったかは分かる」

「が安心してくれ、店のセンスが無いだけだ」

オスターに続いて店へと入る

するとそこには露出度の高いチャイナ服を着た女性がいた

店内には薄いピンクの照明が灯っており、妙に大人のお店のような雰囲気が漂っている

「ああ…店のセンスだけじゃなかったな」

「何の話?」

おっとりした声で女性が尋ねる

「いや、なんでもない」

「そう?ところで占いの結果はどうだった?」

「当たりだったよ、あんたを信じて良かった」

「俺と同じ、カグヤの呪いを受けた少年に出会った」

「ど…どうも華鏡 天命です」

「あら!可愛いわね」

「私は(こがらし) (みやび)よろしくね」

「雅、次の占いを頼んでもいいか?」

「もちろん、実はオスター君が来る前にもう占っておいてたの」

「次の目的地は里塚トンネル、時間は夜の2時」

「おいおい…里塚トンネルってあのヤバいとこか?」

「ヤバい…?」

「出るんだよ、あのトンネル」

「ガキの頃、肝試しに行ったんだけどよ、マジに白い服着た女がいたんだよ!」

「それは…同じように肝試ししてた人なんじゃ…」

「いやいや!違う!絶対に幽霊だった!」

「あんなとこ行くなんてごめんだぜ!」

「そんなこと言ったって仕方ないでしょ?」

「私もついてってあげるから、ね?」

「うぅ…分かったよ」

「でもね…一つ気をつけてほしいの」

「な!なんだよ…」

「今回の占いなんだけど、黒い影が見えたの」

「それはつまり…幽霊ってことか!?」

「いいえ、人間よ」

「けど悪意を持った人間」

「占いにおける黒い影ってのはね、ストーカーや恨みを持つ人を暗示するの」

「けど、今回の場合は恐らくどちらでもない」

「きっとその場所で悪事を働くやつがいる」

「もしかしたら、命に関わるかも」

「…………」

「俺は幽霊じゃねえなら構わないけどな」

「どうする?少年」

「……僕も行きます じっとしてたっていずれ死にますから」

「それもそうだな」

「決まりね、私が車を出すわ」

~~~~~

「ここが里塚トンネル……」

いかにも…といった不気味なトンネル

「雅、ありがとうな こっから先は危険だから俺達で行くよ」

「分かったわ、2人とも気をつけてね」

車を降りてトンネルへ向かう

暗闇の中をライトを持って進んでいく

「少年、何か変わったものはあったか?」

「いえ、今のところは……」

2人で奥まで進むが何もない

何事も無くトンネルを抜ける

「とくに何も無かったな……」

「人もいませんでしたね」

「ああ……」

戻ろうとしたそのとき

「……やられた、マジに気づかなかった」

「え?」

突然、オスターがトンネルの方へ吹き飛ぶ

まるで何かに引っ張られているかのよう

「オスターさん!!」

トンネルの天井にライトを向ける

そこには白い糸で縛り付けられているオスターと怪物の姿があった

長髪の男性の顔に蜂のような黄色と黒の胴体、蜘蛛の手足にサソリの尻尾

「お前ら…持ってる秘宝を出せ」

「秘宝…?」

「惚けるなよ、肝試しに来た訳じゃねえってのは分かってんだ」

「秘宝と秘宝は互いに引き合う…お前らは秘宝の導きによってここに来たんだろ?」

「…………」

「黙ってないで何か言えよ、タマ落としたか?スカトロ野郎」

「……惚けてなんかないぜ、俺たちは本当に秘宝なんて持ってない」

「……なんだと?」

「確かめてみろよ、秘宝と秘宝は引き合うんだろ?」

「…………」

怪物の男が何やら枝のような物を取り出す

「嘘だろ……こいつらマジに男2人で肝試ししに来たってのか!?ふざけんな!!気色悪い!!」

「変な勘違いしてんじゃねえよ」

「俺たちの狙いはお前の持ってるその枝だ」

「それ、蓬莱の玉の枝だろ?」

「……なぜ秘宝を持っていないのにここにあると分かった?」

「俺たちには当てがあってな」

「それを頼りにして来てみれば見事にビンゴって訳よ」

「……クソ!!」

「だったらテメェらここでぶっ殺してやる!!」

「自分の置かれてる立場も理解出来ねえバカ共が!!」

「理解出来てないのは果たしてどっちかな?」

オスターが徐々に怪物化していく

バァンッ!

オスターを縛り付けていた白い糸を力ずくで引き裂く

「これで2対1になったな」

「形勢逆転でもしたつもりか?自惚れのグズ共が!!」

怪物の姿が消える

プシュッ!!

オスターと天命の身体に糸が張り付く

プシュッ!!

プシュッ!!

プシュッ!!

四方八方から糸が放出される

糸を切っても切っても払いきれない

「多少、力はあるみたいだったが所詮はウスノロ」

「テメェらごときじゃ捕えられねえだろ!!」

「クソ……俺の能力じゃこいつには敵わない」

「少年…この状況、打開できるか?」

「……出来ます」

「本当か!?」

「けど、オスターさんにも危害が加わるかもしれません……」

「構わねえさ、頼むやってくれ」

「……分かりました」

天命の身体が怪物化していく

緑色に輝く結晶の身体

「…………」

天命の身体から緑色の液体が放出する

シューッ!!

辺り一面に液体が飛び散る

「な!?何してんだよテメェ!?き…汚ねえな!!」

怪物の男の身体に液体が付着する

「少年……これは……?」

「これが僕の能力です」

パチンッ!

天命の指パッチンの合図に合わせて、辺り一面に飛び散った液体が結晶へと変化していく

「な…なにィッ!?」

怪物の男の動きを結晶で完全に封じる

「く…クソ!!ふざけやがって!!」

「やるな…少年」

オスターの身体にも液体が付着しており、所々が結晶となっている

「すみませんオスターさん…コントロールが出来なくて…」

「いや、助かったよ 少年の能力のおかげでな」

「それより……」

「よお…好き勝手やってくれたな」

「一つ聞くが…お前はどうやって秘宝を手に入れたんだ?」

「……こいつは俺が手に入れた訳じゃない」

「何…?」

「俺はこの秘宝を預けられてるだけだ」

「預けられてる……誰にだ?」

「名前は知らない……が若い男だった」

「やけに綺麗な顔をしていてな……俺にそっちの気はねえが美しさで思わず見惚れるほどの容姿だった」

「そいつは組織で秘宝を集めてる…俺みたいに金で従うようなやつを雇ってな」

「…………」

オスターが何やら難しい顔をして考え込んでいる

「オスターさん?」

「……少年、すぐにここを離れるぞ」

「え?」

「オスターさん…!秘宝は!?」

「そいつはいい!とにかく急げ!」

「どうして!?」

「おい!!待てお前ら!!俺を解放しろ!!」

バァンッ!!

銃声がトンネルに響いた

「今のは!?」

オスターと天命が後ろを振り向く

「な…!?」

怪物の男が頭を撃ち抜かれて死んでいる

秘宝は既に回収されていた

「……こいつは最初から捨て駒だったんだ」

「忠誠心も無ければ、実力も大して無いようなやつに秘宝を簡単に預けられるってことはこいつがしくじったときの後始末も容易ってこと」

「もしこいつの秘宝を持っていっていたなら……」

「今頃こうなってたのは俺達の方だ……」

「…………」

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