なにもかも投げ出した。
世田谷のボロアパートで、すべてが嫌になった。
僕はなにもできない。
なにひとつできない人間なんだ。
なのに生きている。生かされている。
・・・すべてが嫌になった。
SSSクラス冒険者であること。日本の独裁者であること。
常に12000円・小説を読むだけアルバイト機構を作ろうとしていること。
如月さんのこと。
上月さんのこと。
七月先生のこと。
・・・なにもかもが嫌になって、僕は世田谷の自宅を出て、ただ、やみくもに街をふらついて、逃げた。
逃げた・・・。
逃げた・・・。
ただ、どこにも逃げ場はなかった。
僕はそれから、自販機でタバコを買い、タバコをふかした。
そのとき、如月さんが僕を見つけてやって来た。
「なにもかも、嫌になっちゃいましたか?」
僕はただ、タバコを吹かして、それから、クビを縦に振った。
「・・・そうですか? もう死にたいですか?」
「死にたいけど、死ねない。死に方がわからないんだ」
「だったら、もう少しだけ頑張ってみましょう。誰かが声を掛けてくれるかも知れないから。常に12000円・小説を読むだけ機構に気づいてくれるかも知れないから」
如月さんはそう言って、僕を抱きしめた。
ぎゅっ
如月さんの身体は、なぜか、タバコの匂いがして、とても気持ちよかった。




