如月さんが泣いている。
如月さんが、渋谷で泣いていた。
ただ、渋谷の中で、人を襲って、好き放題のヤンキーを止められなくて、泣いていた。
僕はそのとき、500人のヤンキーとの戦いで傷ついていて、もう動けなくなっていて、
ヤンキーが子供を襲うのを止めることができなかった。
そこで、如月さんが泣いたんだ。
「・・・なんで、私って無力なんでしょうか? 生きていて、弱い子供を襲うヤツを止めることもできずに。なんで、私は無力なんでしょうか?」
ヤンキーは弱い子供を襲った。ただ、弱いから。
弱くて、誰にも殺せるような存在だから。それをからかいのように、ヤンキーが襲って、僕はそれを身体が動かなくて、止められなかった。
如月さんも止められなかった。
ヤンキーが僕を嘲笑った。
「弱ぇえヤツは死ぬようにできてんだよぉ。皇太子さまと俺ら以外は、死ぬんだよお。この世界でよぉ。はっははは」
ただ、如月さんは、その光景が悲しかった。
「なんで私は無力なんでしょうか? なんで、弱い子供すら守れない女なんでしょうか? ××さんは、人を守るために、ボロボロになってるのに・・・私は弱くて、泣くだけしかできなくて・・・ただ、××さんを傷つけることしかできなくて・・・うぇええええええん」
泣く如月さんはかわいかった。とても、小さくて儚くて、かわいかった。
ただ、そのかわいさが痛いと思って。それでも、如月さんを泣かしたのは、僕のせいだと思って。
僕は、ただ、強くなりたかったんだ。どこまでも強くなりかったんだ。




