転生
今年も夏が来た。
地獄の夏だ。
気温は38℃ 灼熱地獄となってしまった現世の日本。
ヒートアイランド現象によってこの暑さに上乗せし、都市規模のサウナになってしまった。
昭和とかのもっと昔の人はこんな状態の日本を想像できただろうか?
いや無理だろう。
産業革命が起こる前はこんなに二酸化炭素はなかったし、世界がまずい状態になることは誰も想像できかったわけだし。
そう思いながら文明の利器である電車に乗る俺。
中はいつもどおり会社に向かうサラリーマンでいっぱいだ。そんな出勤ラッシュに揺られながら自分の大学の最寄り駅に電車は向かう。
申し遅れた俺は坂本 将明 京都の国立大学3年、政治経済学部の政治科に所属している。
いま東京の出勤ラッシュじゃないんだからまだマシだろうと思ったやつがいただろう。
それは間違っている。
京都の電車もひどいのだ。
京都の電車は出勤するサラリーマンにプラスαで観光客がついてくるのだ。
東京はみんなサラリーマンばかりだがこちらは黒人白人黄色人種、老若男女問わずやってくる。
そいつ等の中には昨日名に食べたって感じのひどい悪臭の原因となる者がいる。
これは国籍関係なくだがサラリーマンはいまから働くからそんな悪臭をつけるやつはいないだろう。
しかし、こちらに乗ってるのは観光地で遊んでる人たちだ。
だから日本人であってもなくても匂いがきつい人もいる。
あ、 思い出したが日本人でサラリーマン観光客関係なく臭い人がいる。
そう香水の匂いをつけた人だ。
ひどい香水の匂いだ。
これは特に女の人に多いが近年はたまに男の人もつけている。
でもやっぱり圧倒的に女の人が多いとおもう。
香水が臭いか臭くないかは個人の見解だが俺は適量ならいいと思う。
ほぼ0距離になって感じられる甘い匂いはいいと思う。
でもさでもさ、2メートルくらい離れてるはずなのにめっちゃ臭う人っているじゃないか。
あれは正直言ってかなり厳しい匂いがする。
エグい。
この電車にもいる。 それも俺の眼の前のマダムだ。スーツケースを持っていてスーツとかではなく普段着だから多分観光客だろう。
40代くらいだろうか。やはり自分では自分の匂いに気付けないものなのだろうか。
めっちゃ臭い。俺は次の駅で降りるが他の人は地獄だな。お疲れ様と言いたい。
朝っぱらからこんな匂い嗅がされちゃ溜まったもんじゃないよ。
もしもこれで普通に会社に行ってて俺がその会社の同僚なら一瞬で転職だな。
最近じゃこういうのもハラスメント認定されるから気をつけたほうが良いぞ。
日本人は体臭が殆どないから香水なんてつけなくてもいいと思うけどね。
まぁこれは男からの感想だから女性陣に聞いたらまた別なんだろうけど。
おっ やっと次の駅だ。
とっとと降りよう。
ホームにどっと人が降りる。
多分殆ど俺と一緒の大学生だ。
学生の総数はもっともっと多いはずなんだがこれだけしか降りないのは大学生特有だ。
まぁ4年生は就活で忙しいし、こんなに少ないのは仕方がないのだが...
まぁ花の大学生だ。楽に単位を取れればいいだろうと考えてるのがほとんどだろう。
ん?なに? 友達がいないのかって? うっせぇ! 俺にも友達くらいいるわ!。
「おーい 将明〜〜」
おっ 俺の友達が来た。
紹介しよう彼は井上大輔。
俺の友人の一人だ。
こいつは俺よりは頭が悪いがいいやつだし、
「どうした? なんかあったのか?」
「いやぁ〜 電車でさぁ 香水BBAに会ってもうつらすぎて死にそうだった」
その回答に大輔は大笑いする。
「いや いくら香水臭くてもBBAはひどいだろw」
ひとしきり笑ったら次の話を振る
「そういえばお前次の柔道の大会はいつだっけ?」
大輔は柔道の有段者で実は世界大会に出るほどの実力で俺の自慢の友人だ。
「あぁ 次の大会は2週間後に東京で世界大会予選なんだ。3日くらい居なくなるからまた竹じいの講義のノート見せてくれ」
「わかった ちゃんとノート取っとくよ。」
大学の授業といえば先輩から過去問もらって予習するものだと思うだろう。
俺の大学もだいたいの教授は過去問で終わるものなんだが竹じいは違う。
竹じいは毎年違う試験を出してくるので有名だ。しかもこの単位は必修。この単位を取らないと上に行けない。というわけでこの竹じいの授業にはみんな来るしみんな真面目に授業を受ける。
そんな他愛もない話をしていたら大学の門が見えてきた。
国立大学特有のちょっと古い感じの校舎。葉桜は生い茂り、蝶がヒラヒラと飛んでいる。
そんなことを思っていると後ろから刃物が自分の身体を貫く感じがした。
それと同時にとてつもない痛みが脳に伝わる。
熱いものが身体全体に通る。
口の中から血を吹き出す。血の鉄のような味を感じる。
叫んでいる大輔の声がする。
ここら一体で騒ぎが起きているような音がする。
どんどん意識が遠のく。 意識を手放すまいとするがこれは無理だ。勝手にシャットダウンしてしまう。
まずいまずいまずい
死にたくない 死にたくない 死にたくない
だがこれはもう助からないだろう。
自分の体のことは自分が一番わかるとよく言われるが本当にそうだ。
俺は絶対に死ぬ。
ここから助かるのはどれだけ早く対処しても、どれだけ優れた医者でも、もしくはその両方でも、自分は助からない。
刺された場所からして大腸小腸などの器官だろう。
殺るなら心臓とかの一撃必殺の場所を狙ってほしかったなぁ。
ここまで死ぬのが苦しいのか、ここまで痛いのかと思う。
だが、今や痛いという感覚もなくなった。脳が気持ちよくなる成分を出しているのだろう。
こんな形では死にたくなかった。
もっと家族に看取られて死にたかった。
まだ彼女も何も居なかった。もし死ぬならスカイツリーから落ちるとかそういう感じで死にたかった。
こんな最後までこんなクソみたいな感想で死ぬのか。 嫌だなぁ もし次行くなら天国で、ラノベとか見てきたけど簡単に無双で来なさそうだし、どうせクソみたいな第二の人生を送るなら大人しく天国に送ってくれ 頼む神、最後の願いだ。 天国で。
こんなことを思いながら俺の人生は幕を閉じた。
間違いがあれば優しく教えてください