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ライジングキャット★ベースボール  作者: 鈴木涼介
第4章 ペナントレース開幕編
79/207

第79話「家族ゲーム」

 試合開始プレイボールから約二時間経った午後八時前。応援のため名古屋から東京に来たネネの家族たちはキングダムドームへ向かって走っていた。


「……全く、乗り換えを間違えるなんて──! 何が東京は任せておけよ! マジあり得ない!」

 ネネの妹のキキが走りながら、怒って父を睨んでいる。

「す、すまん……」

 父は平身低頭だ。新幹線に事故があり到着が遅れたこと。また父が乗り換えを間違えたため、羽柴家はドームへの到着が遅れていたのだ。


「ハアハア……は、八時までにドームに入らないとダメなんでしょ?」

 ネネの姉の菜々が、息も絶え絶えに問いかける。

「そ、そうなんだよ、八時までにドームに入らないと入場締切になるんだ。お! 見えたぞ! あれがドームの入り口だ!」

 父の合図で、全員ダッシュで入場ゲートへ走った。


「な、何とか間に合ったな……」

 午後八時、締め切りギリギリだったが、何とかドームに飛び込んだ。

「……そ、それで、試合はどうなってるの?」

 息を切らせて菜々が尋ねる。入場に間に合うかが心配で、スマホを見る余裕もなかった。

「と、とりあえず席に行こう」

 チケットの座席番号を見ながら、父が皆を誘導した。


 球団から送られたチケットは内野の三塁側だった。

「結構、前の席なんだね」

 菜々はそう言うと席に座った。ピンストライプのレジスタンスのユニフォームを着た人がチラホラいるので、このあたりはレジスタンスのファンが座る席かもしれない、と思った。

 ひとつ席を空けて中年の女性と眼鏡をかけた色白の青年が座っているが、ふたりともレジスタンスのユニフォームを着ていた。

(親子かな?)

 菜々はふとそう思った。


「さあさあ、試合はどうなってるかな?」

 父が眼鏡のピントを合わせながらスコアボードを見た。

「あ──、すごい! 10点も取ってるよ──!」

 目がいいキキがスコアボードを見て、そう叫んだ。


「ほう、レジスタンスすごいじゃないか。どれどれ……は、はああああ!?」

 スコアボードを見た父はぶったまげた。

 そこには、「東京キングダム 10」「大阪レジスタンス 0」の数字があったからだ。


「じゅ…10対0!? しかも、回は8回だと!? な……何があったんだ!?」

 父はあ然として、スマホで試合経過を検索しようとしたが、それより早くキキが検索した。

「レジスタンス、初回ノーアウト満塁のチャンスに四番織田勇次郎が空振り三振。その後も二打席連続三振で、大ブレーキってあるよ──」

「な、何!?」

 父も急いで検索した。


『レジスタンスは初回のチャンスを生かせず無得点。エース沢村はその後、レジスタンス打線を初回の一安打に抑え、ランナーに二塁を踏ませない完璧なピッチング』

『打ってはキングダム主砲中西が満塁ホームランでレジスタンス柴田をKO。その後も中継ぎ陣が打たれ10失点』

「な、何だこりゃ!?」


「そ─なんだよ、お嬢ちゃん!」

 キキの後ろに座っていたレジスタンスのユニフォームを着てるおじさんたちが声を掛けてきた。

「初回のノーアウト満塁でなあ……織田勇次郎が一本打ってれば流れも変わったのに、三振で沢村を立ち直らせやがった」

「その後も三振、三振……期待してたが、ダメだなアイツは」


 おじさんたちの話を聞きながら、菜々はふと隣を見た。先程の母子は青い顔をして震えていた。ユニフォームの背中を見ると、ふたりとも「ODA 31」とプリントされている。


(ネネは家族に球団がチケットを手配した、と言っていた。ということは、この辺りはレジスタンス関係者の席……? ま、まさか!?)

 菜々は青ざめた。

「き、キキ……」

 慌てて、キキの口を押さえようとしたが遅かった。


「へ──、そ─なんだ──。ネットにも織田勇次郎がブレーキってあるし、織田勇次郎が全部悪いんだね──」

 悪気のないキキのひとことが炸裂し、中年のおじさんたちは「そうそう」と笑った。その時だった──。


「わっ!」

 菜々の近くにいた中年の女性が突然泣き出した。

「か、母さん!」

 その姿を見て、青年が母をなだめてる。


(や、やっぱり…!?)

 菜々はあることを確信した。中年の女性は泣きながら謝り出した。

「す、すいません、皆さん……ウチの……ウチの息子のせいで、皆さんに嫌な思いを……ううう……本当に本当に申し訳ございません……ううう……」

 女性はワンワンと泣いている。

「か、母さん、止めろよ……」

 隣の青年は困惑している。


「あ、あの……失礼ですが、もしかして、おふたりは……」

 菜々が眼鏡の青年に声を掛けた。

「は、はい……自分は織田勇次郎の兄、こちらは母です……」


 キキ以外の羽柴家は、全員青ざめた。


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