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ライジングキャット★ベースボール  作者: 鈴木涼介
第4章 ペナントレース開幕編
78/207

第78話「開幕戦、プレイボール!」

 3月29日金曜日。日本中の野球ファンが待ち侘びたペナントレースが開幕する。セリーグの開幕戦の日程は以下の通り。


「神宮ファルコンズ」(昨年二位)対「東海レッドソックス=T-レックス」(昨年五位)


「広島エンゼルス」(昨年三位)対「横浜メッツ」(昨年四位)


 そして、

「東京キングダム」(昨年一位)対「大阪レジスタンス」(昨年六位)だ。


 レジスタンスは敵地にて、昨年のセリーグ覇者である東京キングダムと開幕戦を戦う。

 試合開始時間は午後六時。ドームまでは徒歩数分なので、選手たちは午後二時を目処にドームに移動することになる。


 ネネは午前中にドーム周りをランニングをして汗を流し、昼食を取ると、部屋でユニフォームに着替え、ドームに移動を始めた。

 ネネの近くには広報部の浅井由紀が付き、スマホのカメラを向けていた。これも広報の仕事で『史上初の女子プロ野球選手、羽柴寧々の開幕一日』というタイトルで動画を発信するのだ。


「ネネ、ゴメンね……開幕戦で緊張してるのに、カメラなんか向けちゃって……」

 由紀が本当に申し訳なさそうに謝る。

「え? 全然大丈夫だよ。だってこれも由紀さんの仕事じゃん。私、気にしないからどんどん撮って」

 ネネは笑顔を見せる。


 そんなネネの笑顔を見て、由紀はホッとした。

(良かった……いつもの元気なネネに戻ってる……)


「わ─! 由紀さん、見て見て! 桜がキレイ─!」

 ネネはドーム周りに咲く桜を見て、はしゃいでいる。由紀は笑いながらネネにカメラを向けた。


 午後四時になると、ゲートが開放され、キングダムのイメージカラーである黒とオレンジのユニフォームに身を包んだキングダムファンがドームに入場する。

 アウェイのレジスタンスファンもチラホラ見えるが、やはりキングダムファンが圧倒的で、四万人収容できるというキングダムドームは満員御礼だ。

 観客がドームに入場する頃には、ビジターのレジスタンスが練習を終えて、キングダムが練習を開始していた。ファンたちはお目当ての選手にスマホを向ける。

 そして、レジスタンスナインはロッカールームに集まり、ミーティングを行なおうとしていた。


 大事な開幕戦投手には通算198勝のベテラン柴田が指名された。

 第二戦は自称エースの朝倉、三戦目は朝倉のライバル松永が先発を務める。

 柴田は開幕に合わせ、ベテランらしくコンディションを調整してきた。更に投手陣は派閥がなくなったので、皆の雰囲気も良い。


 続いてスターティングメンバーが発表された。

 1番、毛利、センター

 2番、蜂須賀、セカンド

 3番、明智、ショート

 4番、織田、サード

 5番、黒田、ファースト

 6番、斎藤、ライト

 7番、浅野、レフト

 8番、北条、キャッチャー

 9番、柴田、ピッチャー


 織田勇次郎は高卒ルーキーとしてはレジスタンス初の四番に座る。

 またネネは勝ちパターンの八回に中継ぎで登板予定だ。


 時間は流れるように過ぎていき、ドーム内では開幕セレモニーが始まっている。

 ミーティングが終わると、今川監督の号令で全員が円陣を組んだ。裏方のスタッフも輪に入る。

 その光景を由紀がスマホで撮影する。ネネの動画以外にもレジスタンスナインの開幕一日を追った動画も発信するからだ。


 円陣中心には今川監督が立ち、口を開いた。背中の背番号「90」が見える。

「オマエら……今日このドームに集まった観客は何を期待してるか、分かるか?」

 皆は「?」という表情を見せる。


「キングダムの圧倒的な勝利だ」

 今川監督はニヤリと笑い、選手たちは不快な顔をした。

「世間一般でも、キングダムの人気はケタ外れ、みんな俺たちが負けることを願っている。キングダムが開幕戦に勝利して、気持ち良──く、帰ってもらうためにな。だから開幕戦に最下位の俺たちを指名しやがった。馬鹿にされてんだよ、俺たちは。お前らそれでいいのか?」


「よくないぜ!」

 かつて問題児だった黒田が怒号を上げた。

「アイツらの思い通りにさせてたまるかよ!」

「その通りだ」

 今川監督が皆を見渡した。皆も黒田に同調するような顔をしていた。


「よし、いいか!」

 今川監督が円陣の真ん中で吠える。

「これから始まる試合は144分の1の試合じゃねえ! 開幕戦という今シーズンを占うオンリーワンの戦いだ! いくぞ! 勝つのは俺たちだ!」

「おお!」

 全員が大声を出して気持ちは一丸になる。ネネも興奮で鳥肌が立った。


「さあ、いくぞ!」

 今川監督が手を叩き、選手たちは通路を抜けてベンチに入った。ドームは満員御礼、異様な熱気に包まれている。


 午後五時半には両チームのメンバーがグラウンドに出て、ペナントレース開幕の宣言が行われた。そして、国歌斉唱、始球式……と慌ただしく進行していく。


 試合開始五分前になると、照明が一部消されて、バックスクリーンに「絶対王者」という文字が浮かびあがり、キングダムの中心選手が躍動する映像が流れた。

 それからアナウンスに合わせて、スターティングメンバーがグラウンドに飛び出していき、ファンの大声援を受けて守備に付いた。


「東京キングダム、大事な開幕戦のピッチャーを務めるのは、エース沢村竜児! 背番号18!」

 そして、大歓声に迎えられ、キングダムのエース沢村がマウンドに上がった。

 大卒ドラフト一位の28歳。昨年は17勝5敗という好成績で、先発ピッチャーの勲章でもある「沢村賞」を初受賞したキングダムの絶対的エースだ。


 こうして、午後六時、開幕戦が始まった。


 初回はビジターのレジスタンスからの攻撃で、トップバッターは俊足巧打の毛利。

 毛利はエース沢村を前に粘る。フルカウントから四球を選び一塁へ歩いた。

 続く二番の蜂須賀も粘り強く四球を選ぶ。レジスタンスは瞬く間にノーアウト一、二塁と先制のチャンスを作り出した。


 沢村は立ち上がりが不安定という弱点がある。キングダムいきなりのピンチに、ドームからは騒めきの声が上がり、逆にレジスタンスベンチは盛り上がった。


「頼むぞ、明智──!」

 レフトスタンド応援団の声援を受けて「ナニワのプリンス」こと、明智が右バッターボックスに入った。

 今川監督が明智にサインを送る。バントはない「打て」のサインだ。


 沢村はセットポジションから得意の高速スライダーを外角に投じた。しかし、そのスライダーを読んでいた明智がバットを振り抜いた。

 カキン!

 快音を残し、ボールはピッチャーの横を抜けてセンター前に抜けようとするが、セカンドが横っ飛びで何とか打球を押さえた。

 体勢が崩れたまま二塁にボールをトスするが、ボールが逸れたため、二塁に入ったショートの足がベースから離れ、ファーストランナーの蜂須賀はセーフ。

 明智の内野安打で、レジスタンスは初回ノーアウト満塁という大チャンスを作った。


「明智! 明智!」

 レフト外野席のレジスタンス応援エリアは大盛り上がり。ベンチも今川監督はじめ手を叩いてる。そして、打席にはこの男を迎えた。


「レジスタンス、四番サード、織田勇次郎」


「キタ──! 織田勇次郎だ──! やったれ──!」

「いてもうたれ! ゴールデンルーキー──!」

 レフトスタンドからは大歓声、勇次郎はゆっくりと打席に向かう。


 ブルペンで待機しているネネもモニターで勇次郎を見つめた。

(先制のチャンスだ。頑張れ、勇次郎……)




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