岩井テレサに話し、俺達の車を覆面パトカー仕様にした…そして、新しいボディを手に入れたニュー加奈が戻ってきた。
「おお!彩斗!
岩井テレサに連絡をするべきだろうな。
あの件も伝えなければ。」
「四郎、あの件って加奈の身体の事だっけ?」
「このあほう!
もう忘れておるのか!
お前自体が思考暴走するほど入れ込んでいたではないか!
覆面パトカーの事だぁ!」
ああ、成る程、はいはい。
電話を掛けると、昼間あった純が電話に出て俺は符牒を言った後で挨拶をした。
岩井テレサが電話に出た。
「彩斗君、今晩は。
昼間はおかげて助かったわ。
ありがとう。」
「いえ、こちらこそありがとうございます。
テレサさん、思い切って藤岡の情報流しましたね。」
「ほほ、判る限りの事は全部伝えたわ。
後で情報を隠していた事が発覚したらつまらない物ね。
それに、今回の事で政府の人間が下司の勘繰りをして変な事をしようものなら、私達でも政府が吹き飛ぶような情報を持っているからね。
彼らも自分の身分を賭けて迄危険な真似はしないと思うわ。」
なりほど、岩井テレサの組織は用意周到に政府の奴らの致命的なスキャンダル情報も掴んでいると言う事か…。
保険としては有効だな。
「ところでテレサさん、あの~この前の暴動の時に実感したんですけど…。」
「なあに?彩斗君。」
口ごもった俺に四郎達、特に四郎と真鈴が早く話せよこの野郎!との身振りをして睨んだ。
「あの~俺達も警察の身分証を持っている身分だから、緊急の場合にその、覆面パトカーのような回転灯とサイレンをその…その…。」
「…ああ~!なるほどね~!
今回の葛西の時もノリッピーやリリーが自前の装甲バン、警察のよりタフな出来だけど、それに乗った方が良かったと言ってるのよ。
それに今回は警察の装甲バンに警察官が運転していたからね~なるほど、自前で覆面パトカーか…まぁ、私達も警察が手に負えない事もいろいろやっているからその位は簡単だと思うわ。」
四郎と真鈴がガッツポーズをした。
「じゃあ、よろしくお願いします。」
「わかったわ、言ってみる。
他には何かある?」
加奈が俺のすぐ横に来た。
「彩斗!加奈の身体!」
「あ、そうだっけ…テレサさん。
昼間見た純さんの体の事ですけど…加奈が凄く興味を持っていて、出来ればその…。」
「ああ!ほほ!
その事だけどね、私の方から加奈ちゃんにお話しようと思っていたのよ。
試作と言うか研究と言うか…言葉が悪いけどね、加奈ちゃんにフィットさせて耐久力や運動能力を極限まで高めるボディの開発に力を貸してくれないかってね。
加奈ちゃんは小さな依り代についてもらう事になるけど、お願いしても良いかしら?」
「うひゃ~!やるですやるです!加奈はやるですよ~!」
「うふふ、加奈ちゃんは乗り気のようだけど、彩斗君、どうかしら?」
「ええ、勿論です!
ぜひお願いします。」
その後少しやり取りをした後で俺は電話を切った。
「よし、これで加奈は現役復帰かもと言う所だな。
あいにくとあちこち加奈の仇を探す旅が面倒になるかも知れないが、加奈、それで良いか?」
「景行、加奈は大丈夫ですよ~!
あの仇を探す事は止めませんけど、あの体を手に入れたら加奈の手で仇を始末できるようになるし、加奈は頑張るですぅ!」
加奈があのボディを手に入れて人間以上の耐久力や筋力、敏捷さを手に入れればよりワイバーンの戦力も高まるだろう。
俺達は最近の暗い雰囲気を、凛のペガサスの事や、加奈の新しいボディの事、そして俺達の車を覆面パトカー仕様に出来る事などで少し明るくなった。
その後、藤岡と男の子の捜索を手伝いながら俺達ワイバーンは何度か質の悪いアナザーの討伐を行い、その間に加奈は圭子さん達が手作りの小さいぬいぐるみに依り代として付き、新しいボディの製造と調整の為、岩井テレサの小田原要塞に預けられた。
岩井テレサが言ってくれた覆面パトカー仕様にする事も正式に決まり、間一髪で修理に間に合った俺のランドクルーザー、真鈴のボルボ、明石のレガシィ、喜朗おじのハイエース、そして、加奈のRX-7に警察無線を組み込み、着脱式警光灯を配られた。
そして俺と四郎と明石、ジンコと真鈴が警察に行き講習を受けて晴れて俺達の車は覆面パトカー仕様になった。
法規の変更が何年か前に有って88ナンバーにする必要が無いのは助かった。
これで簡単に警察車両と見破られる事は無い。
その間、真鈴が『ひだまり』のシフトに入る日には乾が通い続けた。
真鈴が何とか乾達管理者の藤岡や男の子の捜索具合を聞き出そうとしたが乾はのらりくらりと話を交わしたが、どうやら捜索は行き詰まっているらしいと真鈴が言った。
その間に、待ちに待ったランドローバーの新型ディフェンダーの納車日が来た。
俺達は交互にディフェンダーを敷地で乗り回して乗り心地を試した。
「やっぱり新型は凄いね彩斗。
これなら、覆面パトカーをこっちにした方が良かったんじゃない?」
オフロードを試し乗りして、かなり高次元の足回りなど凄い走破力を示すディフェンダーの助手席の真鈴が言った。
「まぁね…でも新車だし、どこかで荒い運転避けるかも知れないからやっぱりランドクルーザーを覆面パトカーにした方が良いかな?」
そして、新しい『みーちゃん』が開店し、ママは店の2階に引っ越し、ユキは死霊屋敷に残った。
新しい俺達の家の建築も始まっているし、クラと凛の新居も同時に建て始めていた。
俺達は前より頻繁に『みーちゃん』に通うようになり、俺達以外にも結構良い客が付き始め、『みーちゃん』も軌道に乗り始めた。
その間ユキが死霊屋敷から『みーちゃん』に通うようにと黄色いアバルト500を購入した。
屋根が全開になる俺が昔から気になっていた車だった。
やはりなんといっても『普通』の車だから討伐などには使わないが、普段の足としては申し分ない出来で、真鈴やジンコ、凛にもお気に入りの車になって良くユキから借りてはドライブに行っているようだ。
そうこうしている内に新しいボディを手に入れた加奈が死霊屋敷に帰って来た。
リリーのスカイラインGT-Rが死霊屋敷に来て、運転席からニュー加奈が降りて来た。
その動作はやはり人間と全然変わらない。
「皆!久しぶりですぅ!」
笑顔で手を振る加奈は…何というか…少し違和感を感じた…。
「ああ!加奈!
加奈だ!…あれ…?」
「なんか…加奈?」
俺と共に加奈を出迎えた真鈴とジンコがやはり違和感を感じたのか頭を捻っている。
そう、加奈はところどころ変わっていた。
声や話し方は加奈そのものだが…背が少しだけ高くなり…胸が少し…大きくなっていて…顔も…生前の加奈の顔をリフレッシュした感じで…少し…いやいやいや、かなり美人さんになっている。
「加奈お帰り~!あれ…加奈…あのさ…少し…いやいや、かなり美人さんになってない?」
少し遅れて出てきた圭子さんが加奈をじろじろと見て戸惑う声を上げた。
助手席から降りて来たリリーが苦笑して加奈に言った。
「ほら、やっぱりすぐばれたじゃないのよ加奈~。」
「えへへ、やっぱりばれたですか~。」
「皆、加奈はね写真とかから計測した顔や体を作った時に色々注文を付けてね、やっぱり前よりずっと美人になっちゃったのよ。
加奈、やっぱりやり過ぎだったんじゃないの?」
そう言ってリリーが顔を振った。
「加奈…なんか…ずるいわ…。」
「そうよ…なんか凄く狡い感じ…。」
真鈴とジンコが複雑な表情を浮かべている。
やっぱり女の子同士ってさ、無意識に綺麗さを競っているんだな…。
「えへへ~こんな機会滅多に無いから少し加奈好みの顔や体にしましたよ~!
勿論身体もかなりパワーアップしました~!
自由に動かすのに少し時間が掛かりましたけどね~!」
加奈がテヘペロっという感じで舌を出した。
なんと言う…何という可愛さなんだ…。
俺はユキに罪悪感を感じながらも加奈の顔と体を上から下までなめるように見つめてしまった。
ごめんねユキ、でも…加奈が可愛すぎる。
続く