第1話 異世界のロミオとジュリエット
ーこの世には3つの高度な知能的種族が存在する。
ひとつは普通の人間。化学によって進歩した生き物。
2つ目は魔導士。魔法という不思議な力が使えるものの、極めて人間に近く人間に紛れて生活している者も多い。
3つ目は吸血鬼。姿形は人間に近いもののその生態は全く違う。食料を生き物の血液(特に魔導士)とし、その背中には翼が生えていて鋭く尖った歯と極めて長い寿命、容姿に優れた者が多い事が特徴である。
人間は基本的には他2つの種族とは関わりあわずに暮らしている。その存在を知らない者も数多くいるかもしれない。
問題は残り2つの種族。この2つはお互いにとても厳しい対立関係にある。勿論理由は星の数ほどあるが、ひとつ上げるならば吸血鬼は魔導士の血を主な食料としているが、その代わり魔法の影響も人間以上に受けてしまう弱点を取り合っている関係であることだろうか。
そのような理由から吸血鬼は天上の吸血鬼の住む世界に、魔導士は人間に紛れて人間の世界に住んでいる。しかし吸血鬼も食料奴隷として魔導士をさらっていくことはよくある。そのため見つけ次第お互いに攻撃するというのが決まりになっていた。
そんな対立の中、種族の壁を越えて恋心を抱く2人の少女がいた。
それこそが、魔導士の中でも名門家の一人娘のお嬢様リリアと、同じく吸血鬼の名門出身だがリリアに仕えるメイドであるヘレナである。身を隠して山奥の人気のない館に住む2人だが、見つかればただではいかないことも2人は承知している。それでも共にあることを決めた一途な少女達の優しい異世界恋愛物語。