おっさん、直す。
20181121 更新しました。
「あ!?」
おっさんは思わず声を上げた。
あることを思い出したのだ。
『勇者様、どうかしたんですか?』
『いや……司教様は大丈夫だったかと思ってな』
『あ〝……』
どうやらカティも思い出したらしい。
マズっ!? という顔をしている。
「アンクル、どうかしたの?」
「あ~……実はソニアたちと会う前に、神殿の司教様と一緒に地下に入ったんだが……」
おっさんは皆に事情を説明した。
すると、
「それなら大丈夫のはずよ。
実は地下に捕らえている子供たちがいたんだけど、司教様が地上に連れ帰ってくれたから」
「アンクルたちに会う前にわたしたちも会ってるのよ」
ソニアとララーナが、おっさんたちに状況を話した。
とりあえず、司教も無事ということがわかっておっさんとカティは安心する。
「一度、神殿のほうに行ってみるか。
ついでにこいつを衛兵に引き渡しにいこう」
倒れる伏せる男に、おっさんは近寄っていくと。
「うっ……」
『勇者様、目を覚ましたみたいです。
……あ、でも……なんだか力が弱まってます』
それはあの邪悪な大樹を切り倒したからなのだろうか?
「おい……起きられるか?」
「っ……こんなおっさんに邪神様の復活を妨げられるなんて……」
「ずっと言ってるが、邪神ってのはなんなんだ?」
「この世界を滅ぼす神だ。
あのまま大樹が成長すれば、降臨も可能だったのに……」
どうやらおっさんは、邪神の降臨を防いだらしい。
『勇者様、すごいです!
よくわかりませんが、世界を救っちゃったみたいですよ』
興奮するカティ。
だが、おっさんは思った。
(……いや、ただ樹を切り倒しただけだし)
と。
「ま、世界が救われたなら何よりか」
『ですです!
初めて勇者様が樵勇者で良かったと思いました!』
おっさんが樵勇者であった理由。
それはもしかしたら、魔王を倒すことではなくて、この邪悪な大樹を切り倒す為だったのかもしれない。
まぁ、まだ魔王の存在もあるわけだし、おっさんの勇者としての物語はまだまだ続くわけだけれど。
「さて……じゃあ神殿のほうに向かうか」
そして崩れた神殿の様子と、邪神の使者を衛兵に引き渡す為、おっさんは魔法で移動した。
ちなみにザケル、ウェルト、グラニーの三馬鹿も一緒にだ。
※
しゅばっ! と神殿前に到着。
「便利ね~、この魔法」
「そうね……っていうか、アンクルってこんなすごい魔法が使えたのね」
「……あんた、なんで樵なんてやってるんだい?」
女性陣からの質問に、おっさんは思わず顔を顰めた。
樵勇者になったから……と言っても、多分、首を傾げられるだけだろう。
『勇者様……すっごいことになってますね……』
パタパタと羽を羽ばたかせるカティが、おっさんの耳元で呟く。
言われておっさんも妖精が見ている方向に目を向けた。
「おお……見事に陥没してるな……」
神殿が消えて、まるっと大穴が開いている。
その為、辺りは大騒ぎになっていた。
「な、なにが起こったんだ!?」
「アーリアラ教団の神殿が……」
「滅びの前触れなんじゃ……」
寧ろ逆……なのだけど、事実を知る者は極少数だ。
『おい、カティ。
これ神殿だけ直せないのか?』
『勇者様の力を使えば直せると思いますよ?
前にもいいましたが、勇者様に不可能はないです!』
そういえば言われたかも。とおっさんは思う。
確かに聖剣の力……というか、職業――樵勇者の力はすごい。
(……やってみるか)
おっさんは陥没した地面を見ながら、願った。
神殿だけ元に戻れと。
瞬間――溢れんばかりの光に陥没場所が包まれて――。
「あ、直っちゃった」
「「「「「「「うえええええええええええええええええええええええええええええっ!?」」」」」」」
神殿は一瞬で直ったが、おっさんの声は民の絶叫に掻き消されてしまうのだった。




