彼の生きる理由
山から下りて、町で伐採した木を売った。
いつもよりも少し多い収入。
今晩は美味しいものを食べようと、奮発して食材を買った。
自宅に着く頃には、すっかり陽が暮れていた。
小さな木造の一軒家。
これがおっさんの自宅だ。
(……あ、この剣どうするかな?)
危険物を家の中に置きたくないおっさんは、庭に剣を突き刺した。
そして、
「ただいま~」
「おかえりなさ~い!!」
家に入ると、元気な声が聞こえた。
そしてバタバタと急ぎ足が聞こえ、おっさんのボディに小さな少女が飛び込んできた。
「おっと」
「おとさん! おかえり~!!」
天使のような至高の幼女が、溢れんばかりの笑顔をおっさんに向けた。
「ただいま、リリス」
「うん! リリス、いいこでまってた!」
「そうか。よしよし、流石は俺の娘だ」
信じられないことだが、この筆舌しがたい美少女はおっさんの娘だった。
繰り返す。
この冴えないおっさんの娘なのだ!
「それじゃあ、ご飯にしようか。今日はデザートもあるぞ~」
「でざーとぉ~!!」
喜ぶリリスを見るおっさんは、幸せそうな父親の顔をしていた。
※
「いっただきま~!」
「しっかり噛んで食べるんだよ」
今この家に住んでいるのは、おっさんとリリスの二人だけだった。
そうなると、必然的におっさんが料理を作ることになるので、少ない食材から娘を喜ばせる為に料理を覚えていた。
おっさんは基本的にマイペースな性格だが、娘の為ならどんなことだって頑張れる『父親』だった。
本当はもう少し稼ぎがあればいいのだが、それは今後の課題だ。
「うま~い!」
リリスは幸せそうに料理を食べている。
テーブルに並ぶのは、軽く焼いたパンと鶏肉のレモンソース漬け、山菜のサラダだ。
そしてデザートに葡萄がある。
「おとさん、ぶどうたべていい?」
「もちろんだぞ娘よ、全部食べていいからな!」
元々、娘の為に買った果物だ。
おっさんにとって娘が喜んでくれることは、何よりも嬉しい。
しかしリリスは不満そうに頬を膨らませた。
「やぁ!」
「ん? 葡萄は嫌いか?」
「ちがう~! おとさんといっしょにたべる!」
「一緒にか?」
「うん! いっしょのがね、おいしいのぉ!」
「……!?」
おっさんは泣きそうになった。
自分の娘ながら、本当に優しい子に育っている。
そのことが、心の底から嬉しかったのだ。
「じゃあ、一緒に食べようか」
「たべる!!」
こうして、幸せな夕食の時間が終わった。
※
夕食を食べた後は、二人でお風呂に入った。
「う~ん……」
お風呂の中で、リリスは物凄く眠そうにしていた。
「ちゃんと歯磨きしてから寝ような」
「……」
リリスは素直に頷く。
お風呂から出て、言われたままにリリスは歯を磨き。
「よし、じゃあおやすみな」
「…………おとさんは?」
「う~ん、お父さんは少しお仕事があるから」
お風呂を沸かす薪がなくなっていたので、割っておこうと思ったのだ。
「……じゃあ……リリスもおきてる……」
「う~ん……」
しかし、リリスは眠そうだ。
それに子供に夜更かしをさせたくない。
「なら、お父さんももう寝ようかな」
「ほんとぉ……」
「ああ」
娘に甘いおっさんだった。
しかし、子を持つ父親なら自分の娘を甘やかしてしまう気持ちもわかるだろう。
こんなに可愛いのだから。
そして二人はベッドに入る。
「て、にぎって」
言われるままに、リリスの手を握る。
こうしておっさんは、リリスが寝付くまで一緒にいた。
というか、気付けばおっさんも一緒に眠ってしまったのだった。
娘登場!