おっさん、聖剣を抜く。
新連載です。
出来る限り毎日更新するつもりです!
ある日、森の中。
一人のおっさんが、伐採していた。
――ボキッ!!
「ぐあっ――!?」
おっさんが悲鳴を上げた。
仕事道具の斧が折れてしまったのだ。
「これじゃ仕事にならねえな……」
おっさんは樵だった。
樵であるおっさんが斧を持たねば、本当にただのおっさんだ。
「あ……そうだ!」
しかし、おっさんは思い出した。
斧の代わりに出来るものがあったことを。
「確か、こっちだったか?」
樵として生計を立てるようになり十数年。
森の中の地理もかなり把握していた。
自分の記憶を頼りに、おっさんは森の奥に進んでいく。
まだ日中だというのに、森の天蓋が陽を遮っているため薄暗い。
木と木が絡み合いトンネルのようになった場所を抜けると、
「おっ! あったあった」
地面に剣が突き刺さっていた。
数ヶ月前に見たものだったので、既になくなっている可能性も考えていたが、まだこの場所に残っていた。
おっさんは剣の柄を掴み、思い切り引いた。
すると――予想していた以上に簡単に剣が抜け、おっさんは拍子抜けした。
「おお、意外と綺麗じゃないか。
刃こぼれもしてないな」
剣の刀身はピカピカで新品同様だ。
武器屋や道具屋では、中古の武器も多く出回っている為、店で買うよりも綺麗かもしれない。
「よし! これを斧の代わりにしよう!」
おっさんは樵が続けられることに一安心していた。
そしておっさんは早速その剣を振る。
――サッ。
――ドシーン!!
「おお!?」
おっさんは驚いた。
一振りで木が倒れてしまったからだ。
そして、おっさんは思った。
いい剣を手に入れたと。
物凄く大満足し、それから数本の木を伐採した。
しかし、おっさん以外の人間が見ていれば誰しもが思っただろう。
あの剣はあまりにも異常だと。
だが、異常なのは当然だった。
なにせおっさんが抜いた剣は、この世界に一本しかない、勇者にしか抜けない【聖剣】だったのだから。
そのことを彼――この物語の主人公であるアンクル・フレイルが知るのは、ほんの少しだけ先の話である。
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