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ナインライフス~不幸な少女と最弱魔王~  作者: 狐狗猫
第一章「王都の光と闇」
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5歩目「能力名「魔王」」

 フーリンと呼ばれる彼女の故郷は、剣と鎧を着た群雄跋扈する土地であった。その中で彼女は頭角を現していた……訳ではない。何方かと言えば彼女が大半席を置いていたのは弱小のグループ、しかしそのどれもが後に一大勢力となった。そして彼女が席を離れると、グループはたちどころに崩れ去る。やがて彼女は有名になり、魔女と呼ばれるようになった。魔女に見初められれば出世する、しかし魔女から見放されれば没落する。

 実際の所、彼女には何のとりえもなかった。無理に優れているところを上げるとすれば、彼女は聞き上手であり、そして才覚を見抜く目が合った。彼女はフラフラと将来有望そうなものに近づき、話を聞いてその気にさせる。そしてしばらくは「相談料」を頂き、落ち目を感じたらさようなら。


 そんな彼女の生活にも唐突終わりがやって来る。落ち目が来ないのだ。


 彼女の主は瞬く間にライバルを下し、強敵を打ち倒し、勢力を盤石にし、そして遂にその一帯すべてを支配する王となったのだ。ハッピーエンドである。

 ただし彼女にとっては職を失うことと、同義であった、対して学もなく出来ることは話を聞くこと勝ち馬を見抜くことお金を数えることだけ。


 そのころである、彼女がこの世界へと召喚されたのは。


「じゃあこの水晶玉を覗きながら心の中で好きな物をイメージして?何でもいいけどポジティブな奴ね?」

 胡散臭そうにマルスが水晶玉を覗き込む、水晶玉に映し出された顔はゆっくりと星を宿した空へと変わる。

「貴方の力は輝く星、強さと色に違いはあれど唯一無二の貴方の星」

 普段であればしばらく見つめると星が光り、それが流れ星の様に尾を引きフーリンにその力を教えてくれるのだが、今回は様子が違った。水晶を覆う様に黒い暗雲が立ち込め、雷すら轟き始める。実際に水晶を覗き込んでいる二人には悲鳴すら聞こえた、そして水晶が大きく光る。


「……不味いよ、不味いってマハリさん」


 彼女が見たことがないのも無理はない、この能力を与えられたのは、数千を超える英雄の中で僅か9名。


「彼は魔王だよ」



同時刻・王都中央街・勇者組合本部


 急遽開かれた会議は、本部長を一言で始まる。

「このたびはお忙しい中お集まりいただきありがとうございます」


 勇者組合、王国内にあり、英雄を記録、管理する機関である。本来は英雄たちの相互援助を目的として作られた機関であったが、国からの運営の横やりが入り現在では王国に必要な英雄を仕分けする機関とかしている。当然戦闘力あるいは技術力などを見て『国にとって価値無し』とされた者たちは相互援助の名のもとに、捨て駒や実験動物など悲惨な運命が待っている。

 マハリのような未登録英雄が半ば黙認されているのはこの現状を憂う人間が多少存在しているからに他ならない。


 会議の参加者は五名、英雄連盟の名目上のトップである本部長、市民代表である商工会長、国からのお目付け役で実質的なトップである英雄担当大臣、彼ら三名は元々この国の人間であり英雄ではない。

 後二人はヨレヨレのコートに同じくらい擦れた帽子のダラシナイ中年男性と、何に使うのか良く分からない機械を全身に身に着けたお下げのゴーグルの少女である。会議の場に似つかわしくない二人だが、この二人こそ連盟(王国)の切り札、最上位の英雄9人のうちの二人なのである。


「挨拶はいい……それで、このメンツを集めた緊急会議とはいったい?」

 貴族位の年の若い大臣にせかされ、本部長は汗を拭きつつ切り出した。


「『聖と魔の天秤』に反応がありました。9人目の魔王が召喚されたようです」


同じく同時刻・王国の東、帝国領旧ホスピア公国領・教会騎士団本部


「勇敢であり真摯たる神の身使いたる教会騎士たちよ」



 教会騎士団、王国の東側に位置する帝国内の組織。元々は教会内の自衛組織であったが、数多の英雄を『騎士』という名で取り込み、急激に力を増した。帝国のためあるいは正義のために動くことを理念としている。



 幾つか空白があるが、多くの騎士と呼ぶにふさわしい豪傑が揃う中、彼らの視線を受けながら教会騎士団の切り札の一人、聖女は言の葉を紡ぐ。


「魔心鏡に新たなる点が浮かび上がりました」


 この事柄に説明を求める者はいない。だがその事実に参加者の中から「魔王」「ついに」「決戦は近いか」などの声が漏れる。


「間もなくその所在もつかめるでしょう、見つかり次第、全力を持ってこの悪を倒すのです。安心なさい貴方たちには神と、私と、聖剣がついております!」


同じく同時刻、帝国のさらに東、魔の領域・音の魔王、水鏡の間


「9人目の魔王を確認したわ……大陸の反対側とはついてないわね」


 音の魔王は、やや残念そうな声色で他の魔王へと報告をする。他の勢力と違い、彼らの持つ道具は、同能力者の現在地さえ手に取るように把握していた。


「助けに行く?行くわけないわよね、魔王だし」


水鏡の向こうの反応は今一な物ばかり、当然だ、ある種自分本位でなければ世界の敵など務まらない。


「まあ精々上手く逃げなさいな……上手く逃げてこれたら及第点、そうでなくてもいい囮になる」

魔王たちは笑う。薄情ではあるが、彼らのトップ曰く、力なきものに存在理由などないのだから。


 数多の勢力が彼の存在を把握しながらも、誰もが気づかず、あるいは気づいても気に留めなかったことが一つあった。


 9番目の魔王の反応は、他の魔王の反応よりも1.5倍ほど大きかったことを。

少々情報量が多すぎた気がします、反省。

大雑把に、上を北にして、魔の領域・帝国・王国 と並んでおります、他にもいくつか国はありますが、それは関係ができた時にでも。

これで合計何文字だろう?

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