44歩目「フランシスの物語」
フランシスという名を聞けば、彼のいた世界のその地方では知らぬものがいないほどの大英雄だ。
彼は人生で三回の壁を味わったという。
フランシスは、まだ騎士がいる世界の片田舎その一軒の家の三男坊として生まれた。彼の一番上の兄は親思いの働き者で朝から晩まで両親の畑仕事を熱心に手伝い、一番に畑仕事を覚えそのまま畑を受け継ぎ村の幼馴染と結婚し貧しいながらも幸せな生活を送ったという。友人の友人から聞いた話故フランシスにはこれが真実かどうか分からない。しかし当たり前で幸せな人生だと思える。
二番目の兄商売に興味を持った、村にやってきた行商人からイロハを学び近場の街に行って中規模の商店で住み込みで働き才覚を発揮した。その後店の娘の婿となり店を一回り大きくしたという。フランシスは店の常連から話を聞いただけだからそれが真実かどうか分からない。でも二番目の兄らしい輝かしい人生だと思う。
三男坊のフランシスは村で一番の腕っぷしだった。兄たちよりも体が大きく力も強かった。彼は村での退屈な生活に嫌気がさし15で街に出てその街の領主の兵隊となった。
ここで彼は初めて思い知ることになる。自分よりも力の強い者は世界にたくさんいて、自分よりも体の大きい者のたくさんいる。そして何より訓練された兵士は村の喧嘩友達などとは比べ物にならないほど強いということだ。
これが一つ目の壁である。
多くの者たちが自分の力量を思い知り田舎へ帰る中、フランシスはそんなことでは挫けたりしなかった。他の新兵たちと訓練に訓練を重ね部隊の中で誰よりも棒術の扱いに長けた兵士となった。
その腕前は領主の兵達の競技会で他の追従を許さぬほどの圧勝を決めたほどである。
そのころフランシスの国と隣の国で、両国の間を通る川を巡った小競り合いが、ついに本格的な戦争へと発展した。
当然フランシスの領主にも召集がかかり、フランシスは領主に連れられ戦争へと赴いた。
街一番の兵士となったのだ、きっと活躍できるだろう。そう信じてやまないフランシスは仲間たちと共に必死に槍を振るった、けれども隣国の騎馬は鎧を身にまとい、フランシスたちの槍は届かない。
善戦空しくフランシスたちの国は負けた、領主も戦いの最中命を落としフランシスも九死に一生を得た。
これが二つ目の壁である。
その後職を求めて別の地方へ渡ったフランシスは一人の伯爵に雇われる事となる。
名をフランシス・レグナンス伯爵、のちに大英雄フランシスと呼ばれた人物である。
これが三つ目の壁であった。
しばらくフランシスの回想です。