76歩目「ポルターガイスト」
開けましておめでとうございます。
今年も「ナインライフス」をよろしくお願いいたします。
至る所に死がいか、あるいは死がいだった何かが髪の毛と共に絡みついている光景は、どことなくマルスに恐怖を感じさせた。
「これで敵に気付かれていないのか?」
「手下に何かがあったことは……感づいている……だけど何が起こっているのか……分からない……怖いよね」
かすれるような声で笑いながら灰は歩みを進める。
これだけ髪の毛を伸ばしているのに足を絡ませる様子もない。
くるぶしほどまで髪の毛で覆われているので、マルスも何度も足を引っ掛けそうになるほどなのだが隣の灰が平然と進む歩調に如何にか合わせる。
髪の毛に巻かれているのは何も死がいや不死者だったモノだけではない。
廊下に飾ってあったであろうツボや蝋燭立て、絵画やドアなどもびっしりと髪の毛で覆われていた。
特に一部の絵画はどんな絵が飾ってあったのか分からないくらいだ。
「おい、余計なことをせずに髪の毛をもう少し引っ込めろ」
「余計なこと?」
「見張り以外を絡ませているあれのことだ」
その様子が髪の毛を無駄遣いしているように見えたのかマルスが小声で文句をつける。
対して灰はぎぎぎと擬音が聞こえそうな動きで首を傾げた。
「あれは無駄じゃない……まずあのあたりの奴も見張り……騒霊」
「ポルタ……なんだって?」
聞きなれない台詞に今度はマルスが怪訝な表情をする。
「騒霊は……要するに物を飛ばす幽霊……本体も捕まえてあるけど……物を飛ばされたら厄介だし……危ないし……音で他の連中が寄ってくるから」
「何となくわかったが……じゃあ絵画やドアにまで絡みつかせているのはどうしてだ?」
「絵画の方は……不死者の気配がした……多分そういうタイプ……ドアの方は……中から気配がしたから外に出られない様に……生半可な刃物じゃ切れないよ」
「……お前を敵に回したら生身の人間でも厄介そうだな」
髪の毛に巻かれたドアに閉じ込められたり、自らの体が髪の毛に絡めとられたりする想像をしてマルスは顔をしかめる。
その様子を見て灰はまたかすれた声で楽しそうに笑った。
「そろそろつくよ」
「やっとか」
「行き止まりの大きな扉……大きな気配を感じる……多分この館の主……そうじゃなくてもいいけど」
「そうじゃないと困るだろ……」
呆れた声のマルスのツッコミに対してもまた灰は笑い声を返した。
「強い護衛でもいい……そいつをやっつけたら……もう逆らえなくなるでしょ?」
今年は遅刻しませんでした。
今年も目を通していただきありがとうございます。




