73歩目「突入」
煙が晴れる少し前、伏せている三人をラドリオが半ば無理やりソリに乗せる。
「呆けている所悪いけどな、時間勝負なんだ。突っ込むぞ! つかまってろ!」
三人が何か言い返そうとするよりも早く、ジェラートが雪煙を上げて走り出す。
ドラゴンホースと並んでいた時は本気ではなかったと言わんばかりのスピードで、ジェラートはあっという間に防壁との距離を詰めた。
「後は任せた! 俺は木乃美たちを回収するために中に突っ込む!」
「一つ聞きたいんだけどな!」
風を切る音と走行音で殆どお互いの声が聞こえないため、殆ど怒鳴り合う様にラドリオとアルトは会話する。
「どうやって止めるんだ?」
「……はぁ?」
爆発の煙を見るに防壁までの距離は殆どない。
ソリの耐久力の限界以上に加速しているソリ、ブレーキなどは勿論装備されていない。
「良く聞こえないから俺は行くぜ……減速は自分で何度かしてくれ!」
「聞こえているじゃないかぁ!!」
叫び声に重なる様にソリが大きく揺れた。
切り離されたソリは防壁に向かって一直線に向かっていく。
『Side アルト』
「くそったれがぁ!」
衝突するまではほぼ一瞬だった。
俺は力任せに迫って来る壁を殴りつける。
俺の能力は自分よりもデカいくて強い者を倒す力だ。
その力と言う物が物体の重さであったとしても、高速で近づいているのがこちらだとしても関係ない。
先ほどのラドリオが放った一撃の爆音には及ばないが、大きな音を立てて防壁の一部が吹き飛ぶ。
どうにか勢いを殺した俺は、フォルテとピアを抱える様にして転がって如何にか勢いを完全に殺しきった。
「……いったぁ! こんなの作戦になかったわよ!」
「私もう二度とソリに乗りたくないです」
落ちる時に打ち付けたらしい腰を擦るフォルテと青い顔をしてボソボソ呟くピア。
一見するとどこか流血していたり痣になっている所はないみたいだ。
「愚痴は後にしろ、幸い俺たちは防壁の中だ。野外で多勢に囲まれる展開だけは避けられたと喜ぼうぜ」
「……だとしても後でラドリオは殴るわ」
俺たちが囮を担ううえで一番懸念していたのは、野外で大勢に囲まれることだ。
それでも大軍しばらく足止めすることは可能だろうが、それは必死の戦いになる。
囲まれてしまえば退路が確保できず、俺たちは死ぬことしかできなくなるからだ。
実際どうやって防壁まで近づいていくか思いつかなかった身としてはラドリオの行動はありがたい。
それでも怖い思いと痛い思いをしたのだから、報復の拳数発は覚悟してもらうことにしよう。
「じゃあ久し振りに大暴れと行くか!」
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